校長は直撃取材にも反省ゼロ 越市長「いじめ被害者は父親からDV受けていた」と記者らに…
右手を前に突き出し、いかにも迷惑そうな表情でフラッシュをさえぎる写真の男。
昨年10月に自殺した中学2年生の広樹くん(当時13)が通っていた、滋賀県大津市立中学校の藤本一夫校長(59)である。
同級生3人による壮絶ないじめの内容が公表されたことで日本中の耳目を集めている同校だが、校長はしばらくの間、公の場には姿を現していなかった。
「7月になって自殺が大きく報道されると、校長先生を学校で見かけることもほとんどなくなりました。最近は『報道には嘘が含まれている』と校内放送で訴えていたので、いじめを認めたくないんだと思いました」
(中学3年生の男子生徒)
そんな校長がようやく報道陣の前に姿を現したのは、冒頭のシーンの3日前の7月14日。
教育長と市役所で開いた会見でのことだった。
そこでは、広樹くんの自殺前に「いじめの認識はなかった」と明言し、暴行についても「けんかと判断した」と主張。
ひたすら保身に終始したのである。
最終的には「聞き取りが不十分で、大きな見落としであると感じている」として責任の一端を認めたが、いじめの判断基準について説明する際には薄ら笑いを浮かべるなど、とても問題に真摯に向き合っているとは思えない態度を見せたのだった。
真意を尋ねるべく、本誌は出勤する校長を自宅前で待ち、軽トラックに乗ってガレージから出てきた本人に直撃取材を敢行した。
---フライデーです。広樹くんの自殺についてお伺いしたいのですが。
ところが、校長は記者の名刺を見ると不快な表情を浮かべ、激しくクラクションを鳴らす。
記者はなおも窓越しに質問をぶつけたが、校長はいきなり軽トラを発進させた。
結局、一言も言葉を発することなく、その場を立ち去ってしまった。
なぜこうも頑なに取材を拒むのか。そこには学校の根深い隠蔽体質が潜んでいる。
掲載した文書(右)を見てもらいたい。
昨年、自殺から22日後の11月2日に市教委が作成した「市内中学校生徒の死亡事故に伴う調査について」という報告書には、9月以降、広樹くんが同級生らから「トイレや運動場で繰り返し殴られたり、嫌がらせを受けたりした」事実が明記されている。
しかもそのすぐ下には、文科省が示す「『いじめの定義』に当てはまる」と書き込まれているのだ。
すでに11月の時点で、学校と市教委はいじめの可能性を十分に把握していたことになる。
ところが学校側は、同月21日に始めた加害生徒らへの聞き取り調査を「保護者から拒否されたため」という理由で翌週には打ち切り、自殺の原因究明を放棄したのだ。
同様に、市議会の教育厚生常任委員会が12月13日に作成した「市内中学校生徒の死亡事故に伴う事案に係る経過報告等について」では、広樹くんが同級生らと「じゃれあったり」、「ふざけあったり」する場面が教師により確認され、教師が指導した旨が記されている。
しかし、アンケート結果からも分かるように、その実態は「じゃれあい」などといったかわいらしいものではなく、広樹くんへの一方的な〝傷害〟行為なのである。
それを把握しておきながら、あえて文書に「じゃれあい」と記載してお茶を濁していたのが〝現実〟なのだ。
この報告書に当然目を通しているはずの越直美大津市長は、今年1月の就任時点でなぜすぐに対策を講じなかったのだろうか。
7月6日の定例会見で謝罪し、涙を流しながら〝当時〟の市教委の調査や公表の方法を否定したが、就任早々に対策を講じていればここまで大きな問題にはならなかったはずである。
市側は7月17日に「いじめと自殺の因果関係は不明」という姿勢を撤回。同日に行われた、遺族が市や加害者などを訴えた訴訟の第2回口頭弁論の終了後、市長が改めて学校・市教委の調査が不十分だったことを認め、謝罪をした。
「市長は遺族との和解の方針を示しましたが、その日に行われた囲み取材であろうことか『実は、広樹くんは父親からDVを受けていた』と記者らに話したんです。自殺の原因はいじめだけではない、ということを言いたかったのでしょうが、あまりにも責任転嫁な感は拭えませんでした」(全国紙社会部デスク)
市長が事故から9ヵ月の間何もしない中、加害者の生徒のうち2人が京都市内の中学校へ転校している。
広樹くんの死後、「死んで清々したと言って笑っていた」というアンケート結果が残っているだけあり、新天地では何の後悔もなく暮らしているのかもしれない。
近所の住民はこう話す。
「主犯格の子の母親は、保護者会でビラを配っていましたよ。『うちの子はいじめていない。こういった中傷が続くなら訴える』と呼びかけていました。だから、反省なんてしていないでしょう」
そんな主犯格の母親に取材を試みるも、記者の姿に気が付くと警察署に避難。
もう一人の加害者の母親も
「話すべきところで話していますから」と話すに止まった。しかも最後は笑顔を作り、人気モデル・ローラを思わせる〝オッケーポーズ〟を披露したのだ。
市長、加害生徒の親たちの自己保身には呆れるばかりである。
この状況で、広樹くんが浮かばれることはない。
「フライデー」2012年8月3日号より
▽現代ビジネス
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33103
右手を前に突き出し、いかにも迷惑そうな表情でフラッシュをさえぎる写真の男。
昨年10月に自殺した中学2年生の広樹くん(当時13)が通っていた、滋賀県大津市立中学校の藤本一夫校長(59)である。
同級生3人による壮絶ないじめの内容が公表されたことで日本中の耳目を集めている同校だが、校長はしばらくの間、公の場には姿を現していなかった。
「7月になって自殺が大きく報道されると、校長先生を学校で見かけることもほとんどなくなりました。最近は『報道には嘘が含まれている』と校内放送で訴えていたので、いじめを認めたくないんだと思いました」
(中学3年生の男子生徒)
そんな校長がようやく報道陣の前に姿を現したのは、冒頭のシーンの3日前の7月14日。
教育長と市役所で開いた会見でのことだった。
そこでは、広樹くんの自殺前に「いじめの認識はなかった」と明言し、暴行についても「けんかと判断した」と主張。
ひたすら保身に終始したのである。
最終的には「聞き取りが不十分で、大きな見落としであると感じている」として責任の一端を認めたが、いじめの判断基準について説明する際には薄ら笑いを浮かべるなど、とても問題に真摯に向き合っているとは思えない態度を見せたのだった。
真意を尋ねるべく、本誌は出勤する校長を自宅前で待ち、軽トラックに乗ってガレージから出てきた本人に直撃取材を敢行した。
---フライデーです。広樹くんの自殺についてお伺いしたいのですが。
ところが、校長は記者の名刺を見ると不快な表情を浮かべ、激しくクラクションを鳴らす。
記者はなおも窓越しに質問をぶつけたが、校長はいきなり軽トラを発進させた。
結局、一言も言葉を発することなく、その場を立ち去ってしまった。
なぜこうも頑なに取材を拒むのか。そこには学校の根深い隠蔽体質が潜んでいる。
掲載した文書(右)を見てもらいたい。
昨年、自殺から22日後の11月2日に市教委が作成した「市内中学校生徒の死亡事故に伴う調査について」という報告書には、9月以降、広樹くんが同級生らから「トイレや運動場で繰り返し殴られたり、嫌がらせを受けたりした」事実が明記されている。
しかもそのすぐ下には、文科省が示す「『いじめの定義』に当てはまる」と書き込まれているのだ。
すでに11月の時点で、学校と市教委はいじめの可能性を十分に把握していたことになる。
ところが学校側は、同月21日に始めた加害生徒らへの聞き取り調査を「保護者から拒否されたため」という理由で翌週には打ち切り、自殺の原因究明を放棄したのだ。
同様に、市議会の教育厚生常任委員会が12月13日に作成した「市内中学校生徒の死亡事故に伴う事案に係る経過報告等について」では、広樹くんが同級生らと「じゃれあったり」、「ふざけあったり」する場面が教師により確認され、教師が指導した旨が記されている。
しかし、アンケート結果からも分かるように、その実態は「じゃれあい」などといったかわいらしいものではなく、広樹くんへの一方的な〝傷害〟行為なのである。
それを把握しておきながら、あえて文書に「じゃれあい」と記載してお茶を濁していたのが〝現実〟なのだ。
この報告書に当然目を通しているはずの越直美大津市長は、今年1月の就任時点でなぜすぐに対策を講じなかったのだろうか。
7月6日の定例会見で謝罪し、涙を流しながら〝当時〟の市教委の調査や公表の方法を否定したが、就任早々に対策を講じていればここまで大きな問題にはならなかったはずである。
市側は7月17日に「いじめと自殺の因果関係は不明」という姿勢を撤回。同日に行われた、遺族が市や加害者などを訴えた訴訟の第2回口頭弁論の終了後、市長が改めて学校・市教委の調査が不十分だったことを認め、謝罪をした。
「市長は遺族との和解の方針を示しましたが、その日に行われた囲み取材であろうことか『実は、広樹くんは父親からDVを受けていた』と記者らに話したんです。自殺の原因はいじめだけではない、ということを言いたかったのでしょうが、あまりにも責任転嫁な感は拭えませんでした」(全国紙社会部デスク)
市長が事故から9ヵ月の間何もしない中、加害者の生徒のうち2人が京都市内の中学校へ転校している。
広樹くんの死後、「死んで清々したと言って笑っていた」というアンケート結果が残っているだけあり、新天地では何の後悔もなく暮らしているのかもしれない。
近所の住民はこう話す。
「主犯格の子の母親は、保護者会でビラを配っていましたよ。『うちの子はいじめていない。こういった中傷が続くなら訴える』と呼びかけていました。だから、反省なんてしていないでしょう」
そんな主犯格の母親に取材を試みるも、記者の姿に気が付くと警察署に避難。
もう一人の加害者の母親も
「話すべきところで話していますから」と話すに止まった。しかも最後は笑顔を作り、人気モデル・ローラを思わせる〝オッケーポーズ〟を披露したのだ。
市長、加害生徒の親たちの自己保身には呆れるばかりである。
この状況で、広樹くんが浮かばれることはない。
「フライデー」2012年8月3日号より
▽現代ビジネス
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33103