
かつて乱読した新田次郎氏の作品を読み返しているのですが,この作品も読みごたえがあります。ブックカバーには以下の記載があります。
「昭和初期、ヒマラヤ征服の夢を秘め、限られた裕福な人々だけのものであった登山界に、社会人登山家としての道を開拓しながら日本アルプスの山々を、ひとり疾風のように踏破していった“単独行の加藤文太郎"。その強烈な意志と個性により、仕事においても独力で道を切り開き、高等小学校卒業の学歴で造船技師にまで昇格した加藤文太郎の、交錯する愛と孤独の青春を描く長編。」
上巻は大正末期から昭和初期にかけての山行が描かれていますが,文太郎が燕から槍ヶ岳,奥穂,上高地の縦走を二日であっけなく歩ききってしまうところに驚きます。
昭和初期が舞台の小説ですから,すでに100年を経過して,山道具は驚くほど進化しましたが,山そのものは当時と変わっていません。
そこが登山の魅力ですね。
そして著者が気象庁職員であることから,気象の専門家としての観点からとらえた表現にも注目です。