辛夷
手術台の上で医師は 左手の針を抜き 右手に刺す様に促した 刺されていた1ツの針痕と もう1ツ1本針が 2ツは紫色に腫れていた 看護婦は 指示の通り残された 針を抜きながら私に話しだした 彼女の持つ注射器は わたしの右腕の奥深くへ刺し込まれていった。
グリーンの天井に 白く塗り込まれた 手術用のライトが照らされていた
「菅井さん いつもナニをしてるの?・・」
「いつもか・・そやな~ コナイダ(最近)から四国・九州へ旅行したなァ・・」
「ヨイナァ~四国の何処・・」
「四万十川の方から 九州へ・・ヤマザクラも辛夷も開いていた・・トテッテモ・・」
話しながら 南山を見たという陶淵明を思い出していた 突然口から
「こんど 行ましょうヵ?・・」
不用意に飛び出した言葉だった
「ソレ デート?・・」
まさっか・・
私は手術台の現実に返っていた。
医師とは初対面であり 作業は淀むことなく続けられていた。
この2・3ケ月 私の頭を支配していた 憂欝は小浜へ逃げ そしてこの度の四国・九州への逃避であった 逃げられる事柄ではないと よくよく知りながら・・・アホ このアホと自らを罵りながら
病院の○○室から 歩いて出てくるヒトはいないであろう と思はれる部屋へ入れられていた 与えられたのは その入り口の脇にベッドがあり 病室全体は 強い臭気を放っていた 臭気は汚物や体臭や様々なモノが ブレンドされたものであった 部屋の先住者たちは 耳が遠いのだろう やたら大きな声で喚いて 看護婦を呼び付けていた。
先月は肝臓であり ここは膀胱と重なり ウンザリしていた ただわたしに利くモノは足がシッカリしていることであり 目の前の憂欝を忘れ去ることは 旅に出ることであった ・・・逃げる場を失いイマここに至ったわけである。
手術病室から出ると 迎えの看護婦が来ていた キャスターの上で
「菅井さん こちらの部屋に換えておきました」
と 部屋に換えられていた。 ドストフスキーの「死の家の記憶」のような部屋から抜け出すことが出来た。
麻酔は夜には消えていた 部屋の看護婦が
「夕食は・・」
「要りません」
絶食の三角柱の文字はそのまま置かれていた。
3泊4日予定通り 支払いを終えて 無事 朝退院となった。
朝の9時半病院を後にした 一歩外に出ると 外人や観光客ばかり 誰も病人は歩いていない 自らに強く命じた
「もうここからは 病人でない サラバ!」
キャスターを引きながら 京都駅のバス・ターミナルへ行った。
たまたま来たバスは 急行であり ウマク 座席を占めることが出来た 急行はいくらかの停留所を省き白梅町に至る 下車した フレスコで買い物をし 4日前に閉じた自宅を開けた。
この度で膀胱では38回目か・・・
九州国立博物館
手術台の上で医師は 左手の針を抜き 右手に刺す様に促した 刺されていた1ツの針痕と もう1ツ1本針が 2ツは紫色に腫れていた 看護婦は 指示の通り残された 針を抜きながら私に話しだした 彼女の持つ注射器は わたしの右腕の奥深くへ刺し込まれていった。
グリーンの天井に 白く塗り込まれた 手術用のライトが照らされていた
「菅井さん いつもナニをしてるの?・・」
「いつもか・・そやな~ コナイダ(最近)から四国・九州へ旅行したなァ・・」
「ヨイナァ~四国の何処・・」
「四万十川の方から 九州へ・・ヤマザクラも辛夷も開いていた・・トテッテモ・・」
話しながら 南山を見たという陶淵明を思い出していた 突然口から
「こんど 行ましょうヵ?・・」
不用意に飛び出した言葉だった
「ソレ デート?・・」
まさっか・・
私は手術台の現実に返っていた。
医師とは初対面であり 作業は淀むことなく続けられていた。
この2・3ケ月 私の頭を支配していた 憂欝は小浜へ逃げ そしてこの度の四国・九州への逃避であった 逃げられる事柄ではないと よくよく知りながら・・・アホ このアホと自らを罵りながら
病院の○○室から 歩いて出てくるヒトはいないであろう と思はれる部屋へ入れられていた 与えられたのは その入り口の脇にベッドがあり 病室全体は 強い臭気を放っていた 臭気は汚物や体臭や様々なモノが ブレンドされたものであった 部屋の先住者たちは 耳が遠いのだろう やたら大きな声で喚いて 看護婦を呼び付けていた。
先月は肝臓であり ここは膀胱と重なり ウンザリしていた ただわたしに利くモノは足がシッカリしていることであり 目の前の憂欝を忘れ去ることは 旅に出ることであった ・・・逃げる場を失いイマここに至ったわけである。
手術病室から出ると 迎えの看護婦が来ていた キャスターの上で
「菅井さん こちらの部屋に換えておきました」
と 部屋に換えられていた。 ドストフスキーの「死の家の記憶」のような部屋から抜け出すことが出来た。
麻酔は夜には消えていた 部屋の看護婦が
「夕食は・・」
「要りません」
絶食の三角柱の文字はそのまま置かれていた。
3泊4日予定通り 支払いを終えて 無事 朝退院となった。
朝の9時半病院を後にした 一歩外に出ると 外人や観光客ばかり 誰も病人は歩いていない 自らに強く命じた
「もうここからは 病人でない サラバ!」
キャスターを引きながら 京都駅のバス・ターミナルへ行った。
たまたま来たバスは 急行であり ウマク 座席を占めることが出来た 急行はいくらかの停留所を省き白梅町に至る 下車した フレスコで買い物をし 4日前に閉じた自宅を開けた。
この度で膀胱では38回目か・・・
九州国立博物館
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