落ち穂拾い 10
早暁小用に目覚めた 時計を見れば4時少し過ぎたばかり起きるのには早すぎる 無聊を埋めるのに バッハのバイオリン・パルティータを床で聴いた。
音がいつ途切れるかと気になりだした 果てなく長々と尾を引く 奏者の呼吸のように・・
彼が死んだ 小学校5年生のトキ彼に会った 長い友である 彼をおくりに葬儀所へ行った。
貧しい時代であった 彼の家でイモスルメを喰ったのが思い出された わたしの周囲の人々はみな逝った 人が殊に 老いて生きるとは 独りになることなのだ そういうことか それは知っているが・・・
わたしに個展を薦めて呉れるひとがいる ここに至ってわたしが・・どうでもよいことになっているのだが 何度も薦めてくれる その心情を考える 「これ以上君に薦めないよ!」という声が聞こえそうだ。
ひとのいのちは長いのか・・短いのか・・「落ち穂拾い」をしてみたが 迷ったり間違えたり オソロシイことだ。
絵は困ったことに足跡(あしあと)が残るのだ むつかしいのはそこだ。
恥ずかしいような 足跡が・・・