徒然なるまま読書感想ブログ

日々読んだ本の感想ブログです。小説、ビジネス書、ライトノベルなど通勤中、休日に読んだ本の感想を自由に書いていきます。

恩田陸 『蜜蜂と遠雷』  感想

2018-03-17 12:25:44 | 一般文芸
 でも僕は、いつかきっと先生の約束通り音楽を連れ出してみせます。





 10年前に初めて高級ヘッドフォンを買った。


 確か、競馬で大勝をしたときにふっとイヤホン専門店が目につき、どんなものが置いているのか気になった時だったと思う。


 何を選んでよいのかわからなかった私はとりあえずネットで調べながら、高級ヘッドフォンの入り口と言われていた1万円台のものを買った。


 帰って、早速、当時使っていたiPodにつけて聞いてみた。


 今まではボーカルの声に合わせて後ろで適当にメロディが流れている。そういう認識でしかなかった曲たちが、ドラム、ギター、ベース、キーボードなどの楽器の音がしっかりと聞こえ、重なり音楽を奏でている。


 その時、私は初めて認識した。ボーカルばかりに気を取られていたが、演奏も含めて彼らの音楽なのだと。


 そして、彼らは決して手を適当に演奏しているわけではなかったのだと。本気で自分たちの音楽を奏でていたのだと。


 私は、音楽に何時間も夢中になって聞いていた。聞くたびに得られる新たな発見に興奮し、ドラムの音、ギターの音を聞くたびにそのうまさに鳥肌が立つという感覚を知った。


 私の中で音楽が輝いた瞬間だった。





 音楽を聴いて鳥肌が立ったことを思い出しながら、今回は恩田陸先生の『蜜蜂と遠雷』の感想を書きたいと思います。


 


蜜蜂と遠雷 (幻冬舎単行本)
恩田陸
幻冬舎



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 『蜜蜂と遠雷』


 タイトルからはクラシック音楽やコンクールを戦い抜くコンテスタントの話というのは全く想像できないタイトルだなと改めて思います。


 直木賞も受賞した作品で、高評価の作品でしたので読みたいなとは思っていたのですが、なかなか読む機会や時間がなく、最近になってようやく「読んでなかったな」ということに気が付いて購入した次第であります。


 私自身、恩田陸先生の作品を読むのは10年以上前に読んだ『夜のピクニック』以来です。


 そんな久しぶりに読む作家さんの本ですが、まさか私がリアル夜のピクニック(=ただの夜更かし)をすることになるとは思いませんでした。




 寝不足になりながら夢中になって読んだ作品は久しぶりだなと思いながら、感想を書いていきたいと思います。







1.頭の中に音楽が鳴る





 有名な?(勢いのある?)ピアノコンクールでコンテスタントが優勝を目指す様を描いた本作品ですので、有名なクラシック音楽がたくさん作中に出てきます。


 ただ、私、中学校の時の音楽の成績が5段階中2というくらいに音楽センスもなければ、イ長調、ロ長調?、何それ?どこの町の町長さん?という感じです。まして、クラシック音楽なんか聴いた日には「ドラクエのラリホーはきっとこういう呪文なんだろうな」と思う間もなく寝れます。


 

 そんな私が、作中の曲名を聞いてもどういう曲なのか全然わかりません。




 でも、不思議なことに、コンテスタントのピアノを弾いているときの感情、会場の雰囲気、観客や審査委員の感情を通して、ピアノの曲が頭に流れてくるのです。



 どういう曲か具体的に表現はできないですし、おそらくコンテスタントが弾いている曲とも全く違くメロディだと思うのですが、それでも頭の中に場面に合わせてピアノが流れてくる不思議な感覚に囚われていました。


 登場人物たちと反することを思っているかもしれませんが、音楽って頭の中にもあるのだなと思いました。






2.コンクールの臨場感が伝わってくる





 登場人物それぞれの感情や想いが交錯してストーリーを作り上げているという感じなのですが、その表現方法やタイミングが絶妙で、コンクールの臨場感が伝わってきて、私もそのコンクール会場にいるように錯覚してしまいました。


 それぞれの登場人物のコンクールに賭ける想いを丁寧に描いているので、コンクールで登場人物が舞台に立つときの緊張感、予選通過の結果発表の瞬間の登場人物の気持ちなどが私の中に入り込んできて私もドキドキしてきました。



 また、観客同様、私自身も早く目当てのコンテスタントの演奏を聞きたいと思うようになり、先へ先へどんどん読み進めたくなるなりました。



 この私の欲が夜のピクニックになってしまった原因なのですが…。


 そして、感情移入をし過ぎて、登場人物の気持ちに入り込み過ぎてしまい、私自身が目頭が熱くなるシーンもあったりもしました。



 それくらい没頭できる作品だと思います。







 天才と天才が自分の音楽を披露しあうことで、コンクール中に成長していく姿も面白いなと思いましたし、音楽の解釈して表現するというのも大変なことだなとも思いました。それこそ技術以外のところのほんの少しの差しかないところが気難しい音楽という印象を与えるのか、素人にも感動を与えるのかという違いになっているのかなと思うところもあります。



 でも、そういう細かい感想よりは、もし、私の感想で興味があるなら読んでみたいなと思っていただけるのであれば、是非、この「コンクール会場にいる」という臨場感を味わってほしいなと思う今日この頃です。



 私はこの本に出会えてよかったなと思いました。



 ちなみに、書店で買うよりもkindle版が400円ほどお得です。(2018/3/17時点)
 
コメント
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