じんべえ時悠帖Ⅱ

神よ憐れみたまえ!

 先般、小池真理子の「神よ憐れみたまえ」を読み終わった。

 主人公の百合子は、十歳の時に両親を失った。自宅で何者

かに殺されるという凄惨な事件。一人娘の百合子はたまたま

家におらず難を逃れた。

 両親の知人や祖父母の庇護の元で成長しピアノ教師として

自立する。青春時代の苦しい時を支えてくれた高校・大学の

同級生と結婚するが、夫の同情愛を利用していただけの結婚

生活はやがて破綻。子は成さなかった。

 そして、この物語は「終章」に入る。百合子が還暦を過ぎた

ころ、二晩続けて同じ夢をみる。

 

 一本の細い道をを歩む百合子。道の周りには、かつて生きて

いた者たちの気配、生命の残渣のようなものが漂う。気づけば

百合子自身が彼らと共に、道の先の先、天空の果てまでたどり

着き、・・・宇宙の暗黒の果てにある、何かとてつもなく大きな

ものと溶け合っていくような気がする・・・。

 自分はこの世のささやかな一本の道の途中に、ごくごく短い

期間、存在し、わずかな距離をもくもくとあるき続けていたに

違いない。ちっぽけな虫のように。

 

 これが、小池真理子の人生観、死後観であろう。因みに

「神よ憐れみたまえ」は、.バッハのマタイ受難曲BWV244の

中の「憐れみたまえ、神よ(Erbarme dich,Gott!)」から・

 録音に観衆の一人の女のすすり泣く声が入ったレコードを、

生前の父が百合子に聴かせた場面がある。

 この次は小池真理子が、同じ直木賞作家である夫を看取った

日々を記した「月夜の森の梟」を読む予定であるが、借り出し

が混み合っていて夏の終わりごろになりそうである。

 


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コメント一覧

jinbei1947
ワイコマ様
私は日大理事長(総長?)になった林真理子と混同していました。
「月夜の森の梟」は新聞の土曜版に連載していたものを単行本に
まとめたものなので、概ね中身はわかっています。
同じ作家で末期がんの夫のわがままに付き合いながら看病の日々。
さすがに作家、連載エッセイにも本にもしてしまいます。、
ykoma1949
この小池真理子さん、どこぞの都知事に名前とイメージが
似ていて、この人の作品には触れたことがありません。
たぶん 大池真理子という名前ならば読むかもしれません
わがままもほどほどに・・といつも言われます。(≧∇≦)
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