「君、それ自分で見たのか」
ヒマラヤから日本に至る「照葉樹林帯文化論」の植物学者、
中尾庄助の口癖だったという。自分の目で見て、自分の頭で
考えよということだ。(昨日の「折々のことば」鷲田清一)
私は若い頃、工場の設備担当をしていた。ある時、新品の
空気圧縮機からエア洩れしていると現場から連絡があった。
信頼がおけるベテランさんからなので、初期故障かなと思い、
早速メーカーに修理依頼の電話を入れた。
ほどなく事務所に顔を出したのはスーツ姿の営業マン。
現場へ案内する道すがら(工場は広い)、作業着も工具も
持たない営業マンに「修理を依頼したんですけどね」など
嫌味を言い続けた。
営業マンは「一応現場を見させて下さい」の一点張り。
圧縮機を仔細に見回った営業マンが差したのは、圧縮機と
配管の接続部。エア洩れは工事側が取り付けた配管部品
からだった。
平謝りに謝る私に年配の営業マンは「自分はこの圧縮機
の工場での出荷検査に立ち会っていますので、ここからの
エア洩れではないとの確信はありました。でも自分の目で
確かめるのが仕事です」と優しく微笑みながら言った。
打ちのめされた。
久々の好天の昨日、ちょっと暑いが少し長い散歩を、
と思っていたら、「晴れたらやる」との約束だった庭仕事
が待っていた。
長い金物を切断してゴミ出しサイズにするもの。炎天下、
金鋸を曳き続けること2時間、やっと8本の切断を終わる。
代わりに晩酌後、江戸川の土手に上がり夕焼けを眺める。
しかし、地平に厚い雲が横たわりイマイチの夕焼け。
そして夜の帳が降りる