昨日の瀬戸内寂聴の訃報を聞いて、今日のブログの頭を
決めていたが「天声人語」に先を越された。つい最近まで
朝日新聞に連載されていた「寂聴 残された日々」からの
引用である。
「あの世があるのかないのか、訊かれても答えられないが、
近頃ようやく『死』は『無』になるのではなく、『他界』に
移るような気がしてきた」
私よりも二回りも上の人生の大先輩、しかも得度した人が
言うことだから、「うーん、そういうことかも知れんな」と
納得する。
他界とは、いわゆる「彼岸」を意味するのだろうが、信心
のない罪深き私にとっての他界は「地獄」かも知れない。
さて、板東三十三観音巡りを終わり、次はどこを歩こうか
など思いながら、八溝山登山の筋肉痛を鎮める日々。
旅の前の江戸川散歩の様子である。河川敷冠水の可能性が
ある初夏から秋までの半年休んでいた新しい橋の工事が再開
されていた。大きなクローラー・クレーンの組み立て中で、
河川敷に現場事務所も再建されている。
後ろから靴を引き摺るような音が聞こえて振り返ると、
ヘルメットに作業服姿の若い女性が安全長靴を重そうに
履いて近づいてくる。
この橋を施工している「横河ブリッジ」社の制服なので、
「大きなクレーンですね、いよいよ上の橋桁のスライド用
ですか」と訊くと、「はい、600トンのクレーンですが、
流れ際の地盤が弱いので遠くから橋台に資材を上げるため
です、スライドは2月に入ってからです」と明るくテキパキ
と答えてくれる。
失礼ながら「ドボジョ(土木系女子)さん?」と訊くと、
益々明るく「はい、橋が大好きなんです、でもよくそんな
言葉を知っていますね、」。私の年恰好から言ったのだろう。
そしてしばらく橋談義となった後、土手を降りて行く。
女性としてもかなり小柄なドボジョさんが大きな橋を作る。
いいじゃないか。
大きなキャタピラで地面を這うからクローラーである。
カウンター・ウェイトを積んだ大型トレーラーが待機。
一枚10トンあるから積載重量30トン以上である。
少し上流まで歩いて戻ると、クレーン先の組み立てが
終り、レッカー車のブームが畳まれる。
土手下では最後の橋台が完成間近。手前の盛土の上にも
何か出来るのか。
翌朝の日の出散歩で遠望すると、組立が終ったクレーンが
起き上がっている。