JR福知山線脱線事故の遺族会「4.25ネットワーク」の
世話人、淺野弥三一(ヤサカズ)の背中を見つめ続けた、元・
神戸新聞記者の松本創が書いた「軌道」は三部構成である。
第Ⅰ部は、妻と妹を失い娘も瀕死の重傷を負った淺野が、
喪失の日々を乗り越え、「不条理な事故」を追求し始める
ところである。
第Ⅱ部は、国鉄が解体され全国7社のJRの一つとして
発足したJR西日本の組織風土を詳細に描いている。特に、
社長・会長を十年間務めて「天皇」あるいは「井出商会」と
呼ばれた井出正敬の下、硬直した官僚組織の実体を暴く。
中でも、元の仲間である第三セクター運営の信楽高原鐡道
に乗り入れたJR西の臨時列車が正面衝突した事故では、
「もらい事故」として一切の責任を相手に押し付けた。
遺族の民事訴訟で「注意義務違反」の高裁判決を受けて、
初めて遺族に謝罪したのは、事故から11年目の2002年で
あった。その3年後に福知山線脱線事故が起きるのである。
そして、第Ⅲ部がこの本の主題である、前代未聞の遺族と
加害者JR西日本が同じテーブルで事故原因を究明する
「課題検討会」の様子とその後である。
次回は、この第Ⅲ部の内容を中心に紹介しよう。
最近の散歩から、風薫る五月の江戸川
駅前のビジネスホテル工事
鳥二題