じんべえ時悠帖Ⅱ

新国立競技場大屋根の秘話

 そもそもは誘致に動いた黒い金問題、そしてシンボル・

マークや国立競技場工費決定の不透明さがあった。

 そして、開会直前まで(開会後も?)続く数々の不祥事。

まさに「呪われた」東京五輪の開会式の当日となった。

 その今朝、「東京リボーン」というテレビ番組の再放送

にブログの手が止まった。開会式が行われる新国立競技場の

「建設秘話」である。

 

 前回(1964年)の東京五輪の代々木競技場は、丹下健三

設計による「吊り屋根」という画期的な構造による素晴ら

しいフォルムの名建築である。

 この時、これに魅せられて建築家を目指した者が多い。

今回の新国立競技場の設計者、隈研吾もその一人だった。

 余談だが、私はこれに関係なく、元々建築家になりたい

と思っていたが、この建築家ブームで大学入試の建築科の

倍率が上がり断念した経緯がある。

 

 さて、隈研吾の新国立競技場。鉄と木のハイブリットの

構造やデザインも素晴らしい観客席の大屋根の話である。

 客席の端と真ん中に柱を立てれば構造も簡単になり、懸案

の工期も短縮できる。しかし、観客の視界には邪魔である。

 そこで、60メートルの張り出し屋根を端の柱だけで支える、

「片持ち梁」と言われる構造を採用した。全周で180組もの

数になる片持ち梁の先端が最後にピタリと合うかどうか。

 

 この精度管理を任されたのは三十代半ばの建築技術者。

前の国立競技場の観客席で、あのカズの活躍を眺めたこと

があるサッカー少年だった。

 最初に組付けた片持ち梁第2ユニットの先端が、案の定、

設計通りの位置に納まらない。どんなに精度よく作ったと

しても、地上から50メートル、端の柱からは30メートルも

離れた三次元の空間での話である。

 彼には奥の手が幾つかあった。このうちの二つを使って

何とか所定の位置に納まった。だが、片持ち梁の取り付け

が進むにつれ、長さ(円周)方向の累積誤差が、プラス30

ミリに達した。

 一組ごとに音響施設など取り付け部材が違うため重心の

位置が違うことが原因のようだが、このまま進めば最後の

一組が収まらなくなる可能性もある。

 「手を打つなら今しかない」、一組ごとの間に入る板の

厚さを減らした。それでも累積は減らない。強度には影響

ないので更に薄くした。やっと誤差が減り始めた。

 取り付けが一周していよいよ最後の片持ち梁が吊り上げ

られて、関係者が固唾を呑んで見守る中、ゆっくりと吊り

下げられ無事納まった。最難関の大屋根組み立てが終った。

 新国立競技場の建設は、工費減額というドタバタで日数

を取られたために、わずか三年という短い工期となった。

 この短い工期の実現には様々な工夫があったが、苦難は

得てして新たな技術を生み出す。

 

 江戸川の日の出散歩、連続三日目(21日)の様子。

久々の筑波山、このあとすぐ雲隠れ

筑波山のお陰で陽は既に半分昇ってしまった

 

 

 

 

 

 


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コメント一覧

jinbei1947
えめらるど様
現役で建築学科に入っていれば、小田和正と同級生になれました。
jinbei1947
ワイコマ様
この屋根の据付けだけに専念する「屋根チーム」を作って進めたといいます。
一度はじっくりと観てみたいスタジアムですね。
えめ
国立競技場について詳しいご説明をいただき、有難うございました。建築家への憧れと云うか未練を秘めた、貴下の青春彷徨を偲びます。学生時代に失恋した私の恋人も清家清の弟子で、やがて一世を風靡した人でした。
ykoma1949
日本には、日本一・・じゃなくて世界一の木造建築の法隆寺
があります。1300年の話のようです。あの時代から培われて
進化を続けている建築の技術・・我々はその技術の伝承や
研究のおかげで・・ここ数十年、大きな地震でも木造住宅も
大きな損傷が無くなってきました。たぶん我々の知らない
ところで、すごい技術革新がなされてきているのでしょう
今回、全て無観客になりましたが・・一昨年この陸上競技場
での競技や開会式、閉会式のチケットを、たぶん丸二日位
かけてネットで申し込んだあの時間・・結局無駄になりま
したが、当時はこの施設でのオリンピック観戦の夢に溢れ
何度も調べては 挑戦の夢でした・・もし当選していたら
今回の措置は・・私は訴えたかもしれません。(≧∇≦)
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