有権者が無関心ということではおそらくない。「熱」は
感じる。なのにどこか「静か」な総選挙である。なんなの
だろう?
人々が真剣に自分の足元から政治のことを考え、候補者
の声を聞き分けようと耳を澄ませているからこその静けさ
ではないかと、期待を込めて思う。
(10/27、朝日新聞「多事奏論」高橋純子)
聞く力のある者、と言ったはずの岸田首相の「転向」を、
哲学者、古在吉重(1901~1990)の、転向は思想の「偽死」
ではなく「仮死」であるという、ファーブルの昆虫記の研究
からの考察を引用し、一強の九年間、死んだふりをしていた
岸田首相の「もじもじ」とした寝覚めの悪さを指摘する。
そして、寝起きの悪い政治家たちは選挙で叩き起こすしか
ないと高橋氏は結論する。相変わらず爽快な辛口である。
さて、三十三観音巡り、栃木県益子町の二十番札所西明寺。
真岡鐡道益子駅と西明寺の中間にある宿「益子館」を出ると、
ポツポツと雨が降り出す。高館山中腹にある西明寺に向かう
県道262号は緩やかな上り。
やがて、普門院診療所経由で芳賀青年の家と西明寺に
向かう県道と、徒歩道が分岐する。昨日の雨引観音同様に、
往きは徒歩道、帰りは車道の県道とする。
突き当たった駐車場からは石段、その後は胸突き八丁の
急坂が続き、麓から15分で西明寺の入口に着く。その先に
見える百数十段の石段は覚悟の上である。
両側の樹々は「西明寺の椎林叢」と言われる椎や樫の木
などで、暖温帯照葉樹林の北限という。
高館山の中腹だが山号は独鈷(トッコ)山。信州別所温泉が
ある上田市郊外の塩田平のシンボルも独鈷山であった。
行基が開祖と言う古刹、延暦時代は十二坊を持ち隆盛を
極めたと言う。本堂は元禄時代の再建だが、山門(楼門)と
三重塔は室町時代の建立と言う。
雨は一旦上がっているが、人っ子一人いない山の中、
長居するところではない。予定通り普門院診療所経由の
県道で麓に降りる。
西明寺参拝を早朝に済ませたので、小雨にそぼる益子駅
へ向かう通りをのんびりと歩く。古い古い陶器店の屋根、
厄除けは中山道に多かった鍾馗様ではなく恵比須翁。
街のあちこちで見る「土祭」、大きな昔の写真が掛かる。
10時10分、益子駅に着く。真岡鐡道、水戸線経由で笠間、
佐白観音に向かう続きは「三日後」になる。
明日は始発電車で今秋の観音巡り第二弾、日光「中禅寺」
など栃木の三山を回る一泊二日の旅に出る。