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<読売新聞 社説>憲法記念日 自衛隊違憲論の払拭を図れ

2018-05-03 09:35:30 | 憲法・法制・条例等

憲法記念日 自衛隊違憲論の払拭を図れ

2018年05月03日 06時00分   読売新聞
 
◆合意形成へ審査会の活性化を◆
 
 憲法はきょう、施行から71周年を迎える。新しい時代にふさわしい憲法のあるべき姿について、国民一人ひとりが考える

機会としたい。


 日本を取り巻く国際情勢は劇的に変化している。日本社会は急速な少子高齢化や技術革新に伴う諸課題にも直面する。

 終戦直後に制定されたままの憲法では、対応しきれない事態や新たな課題も生じている。

 憲法は国の統治の基本を定めたルールであり、不断に見直していくことは当然だ。


 ◆自民党案をたたき台に

 安倍首相(自民党総裁)は、昨年の憲法記念日に、自衛隊の根拠規定を設けるための9条改正を政治課題に掲げた。


 自民党は党内論議を加速させ、今年3月、9条改正や緊急事態条項の創設などの4項目について、改憲の考え方をまとめた。

改正項目を絞り、具体的な条文案として提起したのは評価できる。


 だが、安倍内閣の失速で、改憲の機運は盛り上がりを欠く。

 野党は安倍内閣との対決姿勢を強め、衆参両院の憲法審査会の開催に応じていない。政局に絡め、議論を拒むのは疑問だ。

 少数意見に耳を傾けながら、改正原案を真摯(しんし)に論議し、結論を出すのが審査会の役割である。

 

 野党は審査会で、自民党の改憲案について見解を明らかにするのが筋だ。一致点を探り、問題点があれば改善する。

そうした建設的な議論が求められる。


 国家として当然持つべき自衛権を憲法にどう位置付けるかは、長年の懸案である。

 平和を守り、日本周辺の秩序を安定させる自衛隊の役割は近年、重要度を増している。

 読売新聞の世論調査では、自衛隊が「合憲」だと考える人は76%に上り、「違憲」ととらえる人は19%にとどまった。

 多くの憲法学者は自衛隊は「違憲」との立場を取る。中学校の教科書の大半が、違憲論に触れている現状は改める必要がある。

 自衛隊に正統性を付与し、違憲論を払拭(ふっしょく)する意義は大きい。


 自民党は「9条の2」を新設し、必要な自衛の措置をとる「実力組織」として、自衛隊の保持を明記する案を打ち出した。


 自衛隊は9条2項で禁じられた「戦力」に当たるのか否か、という不毛な議論が続く懸念がある。他党との合意形成を優先した

現実的な判断なのだろう。


 自民党の石破茂・元幹事長は、2項を削除し、自衛隊を軍隊として位置付ける案を唱えている。自民党はさらに議論を深め、

意見を集約することが大切だ。


 ◆議員任期延長は妥当だ

 緊急事態への対応では、大規模災害時に、国会議員の任期を延長する特例を設ける案を示した。


 国民の生命や財産を保護するため、政府が緊急政令を制定できるとの規定も盛り込んでいる。民主主義を適切に機能させるために、

必要な措置である。


 議員の任期延長について、公明党や立憲民主党からも検討する余地があるとの意見が出ている。自民党案を土台に、審査会で

具体的な条文案を詰めたらどうか。


 改憲のテーマは、自民党案の4項目に限らない。衆院と参院の役割の見直しも重要だ。


 衆参ねじれ国会では、野党が多数を占める参院が重要法案や同意人事案の生殺与奪権を握った。国会の混乱と、国政の停滞を

招いたことを忘れてはなるまい。


 法案の衆院再可決の要件を3分の2以上から過半数に引き下げるなど、「強すぎる参院」の是正に取り組まなければならない。

 自民党は、参院選の「合区」を解消するため、3年ごとの参院選で各都道府県から最低1人を選ぶ改憲案を示している。

 参院議員を地域の代表と位置付けるなら、参院の権限の縮小は、避けられない。


 ◆国民的議論を深めたい

 憲法改正には、衆参各院の3分の2以上の賛成による発議後、国民投票で過半数の賛成を得るという高いハードルが待ち受ける。

 野党も含めた幅広い合意形成を図ることが、世論の支持を広げるうえで重い意味を持つ。

 政党や国会議員は憲法についての主張を明確にするとともに、支持者らに分かりやすく説明する努力を尽くすべきだ。

 諸外国は憲法の規定を、国内外の実情に合わせて常に見直し、機能させるよう努めている。

 国民が憲法改正を実現する意義を理解し、現実にそぐわない部分を手直しするのが望ましい。着実に議論を重ねたい。