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海外に魔の手を伸ばす中国の「統一戦線工作」 日本もその手口を知って、警戒を怠るな!

2018-10-07 00:16:58 | 中共日本浸透工作・中共浸透工作・一帯一路・中国経済侵略

海外に魔の手を伸ばす中国の「統一戦線工作」

日本もその手口を知って、警戒を怠るな!

2018.10.5(金)    JBPRESS   樋口 譲次

海外に魔の手を伸ばす中国の「統一戦線工作」

 「統一戦線を組もう」とは、仲間内の日常会話でも使われる表現である。

 しかし、国際政治の場において、外交戦、情報・世論戦、謀略戦、懐柔策などを複雑に絡めて

展開される「統一戦線工作」は、奇々怪々として、国家に深刻な問題を投げかける。

 というのも、中国が、習近平政権になって、海外における「統一戦線工作」を一段と強化している

からである。


 先日、中国の「『統一戦線工作』が浮き彫りに」という米国からの記事(「古森義久のあめりかノート」、

産経新聞、平成30年9月23日付)が掲載された。

 詳細は、この後に譲るとして、米国では、統一戦線方式と呼ばれる中国の対米工作に関する

調査報告書が発表されたことをきっかけに、習近平政権が「統一戦線工作」によって米国の

対中態度を変えようとしていることが明らかになった。

 そして、米国全体の対中姿勢が激変し、官と民、保守とリベラルを問わず、「中国との対決」が

米国のコンセンサスになってきたというものである。


 この件については、筆者拙論台湾に迫る危機、日本よどうする!

の中で中国による台湾の国際空間からの締め出しや台湾国内でのスパイ活動などに触れたが、

これらも「統一戦線工作」の一環である。


 「統一戦線工作」とは、本来、革命政党である共産党が主敵を倒すために、第3の勢力に意図や正体を

隠しながら接近・浸透し、丸め込んで巧みに操り、その目的を達成しようとする工作である。

 ソ連共産党をはじめ、中国共産党、朝鮮労働党などが常套手段としたもので、これらの国では、

今日でもその手法が重用され、国内の政敵のみならず、海外の敵対勢力に対して自国の立場や主張に

有利な環境条件を作為しようと試みている。

 なかでも中国は、特定の団体や個人を丸めこんだり、協力関係を築いたり、場合によっては逆に

非難や圧力・恫喝、攻撃を行い、重要な情報を収集し、対象国での影響力を高め、国際社会における

中国共産党への支持を取り付けるなど、世界中で「統一戦線工作」を活発に展開している。


 日本も、手を拱いている場合ではない。


 日本は、中国の覇権的拡大に対して最大の妨げとなる在日米軍基地を抱え、また尖閣諸島問題や

歴史認識などで厳しく対立している。

 さらに、中国が欲しがる最先端科学技術を保有するなど、中国にとって極めて重要な「統一戦線工作」の

対象となっていることから、重大な関心を抱かざるを得ないのである。


習近平政権下での「中国共産党統一戦線工作条例(試行)」の制定

 中国共産党の「統一戦線工作」を掌る「中国共産党中央統一戦線工作部(中央統戦部)」設立の

歴史は古く、中華人民共和国の建国から遡ること7年前の1942年である。


 「統一戦線工作」上、最もよく知られているのが、抗日民族統一戦線としての中国国民党と

中国共産党による「国共合作」である。

 中央統戦部が重視されていることは、中国共産党中央委員会直属の組織であることからも明らかである。

 その国家レベルの方針を決める中央統一戦線工作会議が、習近平中央委員会総書記の下、

2015年5月に北京で開かれ、「中国共産党統一戦線工作条例(試行)」(以下、統戦条例)を制定した。

 実は、それまでに統一戦線をテーマにした正規の党内法規はなかったようで、統戦条例は統戦工作に

関する初の法規として「統一戦線活動の制度化、規則化、手続き化の重要なメルクマール」(人民日報)

と報じられている。

 そして、習近平総書記は、中央統戦会議で「新しい形勢下の統一戦線工作」について強調し、

これを全党挙げて重視することを明言したのである。

 

「統戦条例(試行)」制定をめぐる習近平の狙い

 習総書記が掲げる国家目標は、「2つの百年」、すなわち中国共産党創設100周年にあたる2021年を

中間目標とし、中華人民共和国建国100周年を迎える2049年を最終目標として

「中華民族の偉大な復興という中国の夢」を実現することだ。

 統戦条例では、その国家目標への奉仕を強調しており、中国は「統一戦線工作」を

「中華民族の偉大な復興」を果たすための重要な手段として位置づけているのである。

 そして、中央統戦会議で習総書記は、国際社会から中国社会への影響力が強まっていることに加え、

中国国内に政治的変化を求めるグループが存在するなど、中国を取り巻く内外情勢が「変化」しているとの

情勢認識を示した。

 これに基づき、国家目標を達成するには、変化に対応した「統一戦線工作」をますます

強化発展させなければならないと述べている。

 こうした方針を実行に移すにあたり、統戦条例では、対国内に関する部分はさておくとして、

対海外に関する部分について、「香港・マカオ・台湾、海外への統一戦線工作」の章を設けている。

 そのことから、統一戦線工作の対象が香港、マカオ、台湾のみならず、それ以外の海外へも

向けられていることは明らかだ。


 また、統戦条例の起草には、海外に居住している華僑や華人などの在外同胞に係わる業務を

所管している国務院僑務弁公室も参加し、習総書記の中央統戦会議における講和では「留学した人材」を

通じた世論コントロールについて述べている。

 このことから、在外公館の現地外交官(工作員)のほかに、これらが海外での統一戦線工作に

加担していることは容易に察しがつこう。

 

中国が世界の500か所以上に開設している「孔子学院」は、親中派(中国シンパ)を育成する

「統一戦線工作」の一環としてのソフトパワー戦略と見られている。

 その約40%が米国に集中し、学問の自由を阻害しているとして、ここ数年批判の声が高まっていた。

 これを受けて、すでにシカゴ大学、ペンシルベニア州立大学など多くの大学が孔子学院の閉鎖に動き、

スパイ活動やプロパガンダ活動などの容疑で米連邦捜査局(FBI)が捜査を開始した模様だ。


 そこで、改めて、中国の「『統一戦線工作』が浮き彫りに」という産経新聞の記事を振り返ってみよう。


 この記事の基になったのは、ワシントンの半官半民のシンクタンク「ウィルソン・センター」が、

1年以上をかけ、コロンビア、ジョージタウン、ハーバードなど全米25の主要大学を対象として調査した

学術研究の報告書(原題:『米国の高等教育における中国の政治的影響と妨害活動に関する予備的研究』)

である。

 同記事(報告書)で明らかになった中国の「統一戦線工作」の具体例を引用すると、下記の通りである。


(1)中国政府の意を受けた在米中国外交官や留学生は事実上の工作員として米国の各大学に圧力をかけ、

教科の内容などを変えさせてきた。

(2)各大学での中国の人権弾圧、台湾、チベット自治区、新疆ウイグル自治区などに関する講義や

研究の内容に対してとくに圧力をかけてきた。

(3)その工作は抗議、威嚇、報復、懐柔など多様で、米側大学への中国との交流打ち切りや個々の

学者への中国入国拒否などを武器として使う。


 そして、「米国の主要大学は長年、中国政府工作員によって中国に関する教育や研究の自由を侵害され、

学問の独立への深刻な脅威を受けてきた」と総括されている。

 工作の結果、米国の大学や学者が中国の反発を恐れて「自己検閲」をすることの危険性を特に強調している。

 

 以上は、あくまで、全米の主要大学を対象とした中国の対米工作の特定部分についての調査結果にすぎない。


 その工作が、その他の政・官・財界、軍隊、産業界、マスコミ、シンクタンクなど、米国の意思決定や

国益を左右する中枢部に及んでいると考えるのは当然であり、その広がりを考えると、影響の重大さに

震撼させられるのである。


中国の「統一戦線工作」の実態を理解し厳重な警戒を

 日本政府は、中国の「統一戦線工作」の実態について、「警察白書」をもって公式に発表している。

 平成29年「警察白書」は、第5章第2節1項「対日有害活動の動向と対策」の中で、

「中国の動向」について、次のように記述している。

中国は、諸外国において多様な情報収集活動等を行っていることが明らかになっており、

我が国においても、先端技術保有企業、防衛関連企業、研究機関等に研究者、技術者、留学生等を

派遣するなどして、巧妙かつ多様な手段で各種情報収集活動を行っているほか、政財官学等、

各界関係者に対して積極的に働き掛けを行うなどの対日諸工作を行っているものとみられる。

警察では、我が国の国益が損なわれることがないよう、こうした工作に関する情報収集・分析に

努めるとともに、違法行為に対して厳正な取締りを行うこととしている。


 在日中国人の数は約73万人。その中には、工作員として「選抜、育成、使用」される可能性の高い

「留学生」約12.5万人、「教授・研究・教育」約2000人、「高度専門職」約5200人、

「技術・人文知識・国際業務」約7.5万人などが含まれる。

(政府統計の総合窓口「e-stat」、2017年12月現在)


 また、中国から日本への旅行者は約637万人(2016年、日本政府観光局(JNTO)統計)であり、

通年で、約710万人の中国人が日本に滞在していることになる。

 正確な数字は明らかではないが、これほど多くの中国人の中には、相当数の工作員が含まれていると

見なければならない。

 

 中国には「国防動員法」があり、動員がかかれば、「男性公民は満18歳から満60歳まで、女性公民は

満18歳から満55歳までの間、国防に従事する」義務がある。

 在日中国人や中国人旅行者もその例外ではなく、日本国内において、彼らが在日工作員あるいは

潜入した武装工作員(ゲリラ・コマンド)と連携し、情報活動や破壊活動などに従事する事態を

十分に想定しておかなければならない。


 加えて、北朝鮮およびロシアも、様々な形で対日有害活動を行っている。

 一方、国内を見ると、日本共産党は、「しんぶん赤旗」(2007年11月29日付)において、

読者の質問に答える形で「日本共産党は、一貫して統一戦線の結成と強化をめざしています」と

表明している。


 旧日本社会党であった社会民主党も、それ自体が中国や北朝鮮などとつながりを持った

統一戦線としての性格を有しており、日本共産党との「社共共闘」も革新統一戦線である。


 このように、日本は、中国をはじめとして、国内外の勢力が複雑に絡み合った「統一戦線工作」の

渦中に置かれている。


 そしてわが国の至る所で、日常茶飯事のごとく、国民の身近に工作が迫っている実態を理解し、

厳重な警戒を怠ってはならないのである。


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中国の「統一戦線工作」が浮き彫りに

2018.9.23 10:23   産経デジタル  ワシントン駐在客員特派員 古森義久

 「これまで考えられなかったことが実際に考えられる状態となりました」

 

 最近の米国の中国への政策や態度の変化を評して日系米国人学者のトシ・ヨシハラ氏が語った。

米海軍大学教授として長年、米中関係を研究してきた専門家である。そのとおりだと実感した。

 

 最近のワシントンでは官と民、保守とリベラルを問わず、中国との対決がコンセンサスとなってきた。

トランプ政権の強固な立場は昨年末に出た「国家安全保障戦略」で明示された。

要するに中国は米国だけでなく米国主導の国際秩序の侵食を目指すから断固、抑えねばならないという

骨子である。年来の対中関与政策の逆転だった。

 

 ワシントンではいま中国に関して「統一戦線」という用語が頻繁に語られる。

中国共産党の「統一戦線工作部」という意味である。本来、共産党が主敵を倒すために第三の勢力に

正体をも隠して浸透し連合組織を作ろうとする工作部門だった。

 

 「習近平政権は米国の対中態度を変えようと統一戦線方式を取り始めました。多様な組織を使い、

米国の官民に多方向から働きかけるのです」

 

 米国政府の国務省や国家情報会議で長年、中国問題を担当してきたロバート・サター・

ジョージワシントン大学教授が説明した。

 


 そんな統一戦線方式とも呼べる中国側の対米工作の特定部分がワシントンの半官半民のシンクタンク

「ウィルソン・センター」から9月上旬に学術研究の報告書として発表された。

米国全体の対中姿勢が激変したからこそ堂々と出たような内容だった。

 


 「米国の主要大学は長年、中国政府工作員によって中国に関する教育や研究の自由を侵害され、

学問の独立への深刻な脅威を受けてきた」

 


 こんなショッキングな総括だった。1年以上をかけたという調査はコロンビア、ジョージタウン、

ハーバードなど全米25の主要大学を対象としていた。アジアや中国関連の学術部門の教職員約

180人からの聞き取りが主体だった。結論は以下の要旨だった。

 


 ・中国政府の意を受けた在米中国外交官や留学生は事実上の工作員として米国の各大学に圧力をかけ、

  教科の内容などを変えさせてきた。

 

 ・各大学での中国の人権弾圧、台湾、チベット自治区、新疆(しんきょう)ウイグル自治区などに

  関する講義や研究の内容に対してとくに圧力をかけてきた。

 

 ・その工作は抗議、威嚇、報復、懐柔など多様で、米側大学への中国との交流打ち切りや個々の

  学者への中国入国拒否などを武器として使う。

 


 この報告の作成の中心となった若手の女性米国人学者、アナスタシャ・ロイドダムジャノビク氏は

こうした工作の結果、米国の大学や学者が中国の反発を恐れて「自己検閲」をすることの危険をとくに

強調していた。

 


 こうした実態は実は前から知られてきた。だがそれが公式の調査報告として集大成されて発表される

ことが、これまでなら考えられなかったのだ。


 いまの米国の対中態度の歴史的な変化の反映だといえよう。さて、わが日本でのこのあたりの実情は

どうだろうか。