アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズ紙は、北朝鮮が国内にある工場で長距離弾道ミサイル用の燃料を独自に製造している
可能性があり、ミサイル開発を断念させるため各国に対して燃料の禁輸などを科した制裁が無意味になるとする専門家の見方を
伝えました。
ニューヨーク・タイムズ紙の電子版は27日、専門家の話として、北朝鮮が東部のハムン(咸興)にある工場で長距離弾道ミサイル用
の燃料UDMH=非対称ジメチルヒドラジンを独自に製造している可能性があると伝えました。
工場の上空から撮影したとされる写真にはため池のようなものが写っていて、燃料を製造する際に出た廃水をためるために造られた
可能性があるとしています。
さらに、ニューヨーク・タイムズは、北朝鮮がこれまでUDMHを中国やロシアから調達してきたと見られることから、国連が各国に
禁輸措置などを科してきたものの、独自に製造しているのが事実ならこうした制裁は無意味になるという専門家の見方を紹介して
います。
ニューヨーク・タイムズ紙は「北朝鮮が技術を向上させていることを示す重要な情報だが、アメリカが行動を起こすにはもはや
遅すぎるかもしれない」として、北朝鮮のミサイル開発を阻止するのが一段と難しくなっているという見方を伝えています。
米国家情報長官「独自製造能力ある」
アメリカの情報機関を統活する国家情報長官室のバレット報道官は、NHKの取材に対して、北朝鮮が弾道ミサイルの液体燃料と
して使用しているUDMH=非対称ジメチルヒドラジンについて、「北朝鮮の科学技術能力を考えると、おそらく自国でUDMHを製造
する能力はある」と述べ、北朝鮮が独自に製造している可能性があるという見方を示しました。
米高官「制裁強化は重要」
トランプ政権の高官は、NHKの取材に対して、北朝鮮が自国でUDMHを製造しているかどうかについては確認を避ける一方、
「アメリカはさまざまな手段を使って北朝鮮が液体燃料などを自主生産できなくするよう取り組んでいる」と述べました。
そのうえで「仮に北朝鮮が自国で生産するとしても、多額の費用がかかる。制裁で北朝鮮を経済的に厳しい立場に追い込むことは
長期的に効果がある」と述べ、自主生産を断念させるためにも、北朝鮮に対する制裁の強化が重要だという考えを示しました。