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米国に「薬品漬け」にされる日本…危険な添加物混入の食品を続々輸入解禁

2017-05-18 03:24:51 | 食べ物・食の安全

米国に「薬品漬け」にされる日本…危険な添加物混入の食品を続々輸入解禁

2017.05.16   Business Journai

 ドナルド・トランプ米大統領の誕生によってTPP(太平洋経済連携協定)は崩壊しましたが、日本の食の安全への

脅威はますます強まっています。バラク・オバマ前大統領は日本がTPPに参加する条件として、「サイドレター(TPP交

渉参加国との間で作成する文書)」の履行を日本に求めてきました。安倍晋三首相がこれに同意したことから、ぎりぎ

りになって日本はTPPへの参加が認められたのです。

 アメリカファースト(アメリカ第一主義)を前面に打ち出すトランプ大統領は、TPPは米国の利益を損なうとして離脱し、

実質的にTPPは解体しました。当然、サイドレターの履行を日本が行う必要はなくなったわけです。

 ところがトランプ米政府は、TPPに関係なくサイドレターの履行を日本に求めているのです。先日の日米首脳会談で

も、トランプ大統領はサイドレターの履行を安倍首相に求めたと伝えられています。サイドレターというのは、TPP実効

のため、取り除く必要のある国内制度が、項目ごとに細かく書かれた文書です。たとえば、日本の「衛生植物検疫」に

関しては、次のように明記されています。

「収穫前及び収穫後の両方に使用される防かび剤について、農薬及び食品添加物の承認のための統一された要請

及び審議の過程を活用することにより、合理化された承認過程を実施する」

 つまり「日本は早く新たな防カビ剤を食品添加物に指定しろ」というわけです。

レモンの農薬から始まった日米貿易戦争

 米国から輸入される、レモンやオレンジ、グレープフルーツなどには、ポストハーベスト(収穫後に使用される農薬類)

といって、防かび剤が使用されています。日本ではポストハーベストは認められていませんので、ポストハーベストされ

た果実類は、食品衛生法違反になり日本国内で販売することはできません。

 そのため、「日米レモン戦争」が勃発したことがあります。1975年4月、農林省(当時)の試験場で行われた検査で、

米国から輸入されたレモン、グレープフルーツなどの柑橘類から防カビ剤のOPP(オルトフェニルフェノール)が多量に

検出されました。このため、倉庫に保管されていた大量の米国産レモンなどは不合格品として、海洋投棄されたのでし

た。

 この事実を知った米国政府は「日本は太平洋をレモン入りカクテルにするつもりか」と憤慨、日本からの自動車輸出

を制限するなど「日米貿易戦争」にまでなりました。そして2年後、日本は発がん物質であるOPPの解禁を決定しまし

た。自動車輸出の代償として、国民の健康を犠牲にしたわけです。


安倍政権がサイドレターの履行に応じるのは明白

 今日の状況は当時と変わりません――。

 米国産の輸出用柑橘類には多くの防カビ剤が使用されています。日本で販売するためには、それらの防カビ剤を日

本で食品添加物に指定させなければなりません。食品添加物の指定作業が日本は遅すぎると米国は言っているので

す。

 また「日本は『未指定の国際汎用添加物について、原則としておおむね1年以内に食品添加物として認めることを完

了する』とした2012年の閣議決定を誠実に実施すべき」と、オバマ前米大統領はTPP加盟の条件として日本に突き付

けてきました。こうした要求も、トランプ政権がTPPを離脱したことで、日本が履行する必要はなくなったはずです。

 しかしトランプ大統領は、日本の自動車輸出の関税が低すぎると非難する一方、サイドレターの履行を日本に迫って

います。安倍政権がこれに応じるのは明白で、さらに多くの防カビ剤が食品添加物に指定され国民の健康を脅かすこ

とになるのは確実です。

 

アルミニウムを含有する食品添加物

 問題なのは防カビ剤だけではありません。

 日本では食品への使用が認められていないアルミノケイ酸ナトリウム(固結防止剤)、ケイ酸カルシウムアルミニウム

(固結防止剤)、カルミン(着色料)、酸性リン酸アルミニウムナトリウム(膨張剤)の4品目を食品添加物と早急に認め

るように、米国は要求してきています。

 この4品目の共通点は、アルミニウムを含有するということです。

 アルミニウムについては、2006年のFAO(国連食糧農業機関)およびWHO(世界保健機関)合同食品添加物専門

家会議で、従来の摂取量基準7mg/kg以下の用量で、生殖系および神経発達に影響を与えることが判明したので

す。その後も水腎症など泌尿器病変などの悪影響も判明し、2011年に摂取基準が2mg/kgまで引き下げられまし

た。

 コーデックス委員会(国際食品規格委員会)やEUでも、アルミニウムを含有する添加物由来の摂取量を低減させる

ために、食品添加物の基準見直しを進めています。また、アルミニウム摂取とアルツハイマー病の関連も完全に否定

されたわけではありません。あえてアルミニウムを摂取する愚は行うべきではありません。

 それにもかかわらず、安倍政権はアルミニウムを含有する4品目を新たに食品添加物に指定しようとしているので

す。安倍首相が日本国民の健康を本当に考慮しているのか否か。指摘するまでもないでしょう。



郡司和夫(ぐんじ・かずお)

フリージャーナリスト。1949年、東京都生れ。法政大学卒。食品汚染、環境問題の一線に立ち、雑誌の特集記事を中心に執筆活動を行っている。主な著書に『「赤ちゃん」が危ない』(情報センター出版局)、『食品のカラクリ』(宝島社)、『これを食べてはいけない』(三笠書房)、『生活用品の危険度調べました』(三才ブックス)、『シックハウス症候群』(東洋経済新報社)、『体をこわす添加物から身を守る本』(三笠書房・知的生き方文庫)など多数。