国家主席の任期撤廃、改憲案を可決 中国政治体制の分岐点
2018.3.11 17:4 産経新聞
【北京=西見由章】中国の全国人民代表大会(全人代=国会)は11日、国家主席の任期を2期10年までに制限した規定を
撤廃する憲法改正案を可決した。賛成2958票に対して反対は2票、棄権3票で賛成票が99%を上回った。
習近平国家主席が兼務する中国共産党総書記と中央軍事委員会主席に明文化された任期制限はなく、最高指導者としての習氏の
3期目続投が制度上可能となった。
党内や国内世論の一部では、習氏の長期政権化が集団指導体制の崩壊や個人独裁、指導者終身制につながるとの懸念も
高まっている。だが、習指導部が反腐敗闘争で政敵の打倒を進めた結果、強引ともいえる権力集中を表立って阻止できる党内勢力は
存在しないのが現状だ。中国の政治体制は大きな分岐点を迎える。
1982年に制定された現行憲法の改正は14年ぶり5回目で、今回は習氏と党の権威強化が主眼だ。今世紀中頃までに、
「社会主義現代化強国」を実現することをうたう「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」が、毛沢東思想や
トウ小平理論などと並ぶ「中国各民族人民」の指導思想として位置づけられた。中国で現役指導者の理念が憲法に明記されるのは
毛沢東以来。
全人代で憲法改正案が採択され、拍手する習近平国家主席=11日、北京の人民大会堂(共同)

また、総則第1条の「社会主義制度は中華人民共和国の根本的な制度だ」との文言に続いて「中国共産党の指導は中国の特色ある
社会主義の最も本質的な特徴だ」と追加し、共産党統治の正統性が強調された。
このほか反腐敗闘争の制度化に向け、党員以外の公務員らも摘発対象とする国家機関「監察委員会」の設立を憲法に明記。
行政機関の干渉を受けない独立した監察権の行使が認められ、国務院(政府)や最高人民法院(最高裁)、最高人民検察院(最高検)
などと同格の機関として位置づけられた。
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