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便利さと引き換え、「要注意人物」登録迫る 監視国家・中国のSNS

2019-06-11 22:20:40 | 中国・中国共産党・経済・民度・香港

 便利さと引き換え、「要注意人物」登録迫る 監視国家・中国のSNS

2019年06月10日   BBC  スティーヴン・マクドネル中国特派員

 


中国の騰訊(テンセント)が提供する「微信(ウィーチャット)」はSNSであり、電子決済サービス

であり、デートアプリであり、スポーツチームの管理ツールであり、ニュース配信サービスでもある。

言うなればツイッターとフェイスブック、グーグルマップ、ティンダー、アップルペイがひとつに

なったウェブサービスだ。その一方で、中国政府がソーシャルメディアを管理するための強力な武器

にもなっている。

 


私はたったいま、微信のアカウントを凍結されてしまった。これを解除するにはジョージ・オーウェル的

管理社会らしい段階を踏まなくてはならない。

 


読者の中には、なぜ私がこの段階を逐一説明するのか疑問に思う人もいるだろう。

 


ひとつには、北京での生活には微信が必要不可欠だからだ。もうひとつの理由は、私がこの記事を

書いているのは、アカウントを復活させるために顔写真や声といった個人情報を要注意人物リストに

登録するという経験をしたからだ。

 


私は、1989年6月に天安門広場に集まった学生による抗議デモを排除するため人民解放軍が国民に

銃を向けてからちょうど30周年に当たる日に、香港で行われた大規模な追悼集会を取材していた。


 

この歴史的な事件は、中国本土では公の話題からことごとく消されてしまっている。

しかし中国語圏の中でも特別な立場にある香港では毎年、この血なまぐさい弾圧に対する追悼が

行われている。

 

今年は特に参加者が多く、推計では18万人以上とされている。

 

私は当然のように、ろうそくを持って歌う人々を撮影し、いくつかの写真を微信の「モーメント」に

投稿した。

 

投稿は写真だけで、文字は含めなかった。

間もなく、中国の友達から微信上で質問が来た。このイベントは何だ? なぜみんな集まっている? 

どこで開かれている?


こうした質問を投げかけてくるのが中国の若い社会人ということからも、いかに天安門事件が中国で

抹消されているかが分かるだろう。


私はいくつかの質問に暗号のような言い回しで答えた。すると突然、微信から閉め出されてしまった。


スクリーンには、「アカウントが除外されたためログインできませんでした。再度ログイン操作をし、

画面の指示に従ってください」というメッセージが映し出された。


そこからログインしようとすると、新しいメッセージが現れた。

「この微信アカウントは悪質な噂を広めた疑惑があるため、一時的にブロックされています(後略)」

どうやら、実際に起きているイベントの写真をコメントなしに投稿することは、中国では

「悪質な噂を広めた」ことになるようだ。


ブロックは次の日には解除されており、私は再度、ログインの機会を与えられた。

すると今度は、「悪質な噂を広めた」ことを「認め、ブロックを解除する」というボタンが現れた。

アカウントを取り戻すにはこれを押すしかない。

私は噂をばらまいたと認め、ボタンを押した。

しかしその次に現れたのは「セキュリティー上の目的のため、顔写真が必要です」という、予想だに

しなかったメッセージだった。

操作説明には、画面上の人の顔と重なるようにスマートフォンを掲げて「カメラをまっすぐ見て」、

それから「北京語で書かれている数字を読み上げてください」と書いてあった。

 
 

微信アプリは私の顔をスキャンし、同時に音声も録音した。

それから大きな緑色のチェックマークが現れ、「承認されました」という文字が映し出された。

ぞっとしないが、こうしたデータがどのように使われるか想像することしかできない。

私がたった今、中国政府の何らかの機関が作っている要注意人物のリストに載ってしまったことは確かだ。


中国では誰もが微信を使っている。微信アカウントを持っていない人に出会ったことがない。

テンセントが開発したこのアプリは素晴らしい機能を持ち、使いやすく、便利で、面白い。

世界的に見ても進んだ技術が使われていて、中国人の生活の隅々にまで浸透している。

つまり、国民でも外国人でも、この国にいるほぼ全員の生活の様子を、中国共産党に手渡すことが

できるのだ。


ここ数日で天安門事件の30周年について言及し、アカウントを凍結された人物の顔写真と音声は

、要注意人物を監視したい誰かにとってはとても有益なデータだろう。


私がこの一連プロセスをツイッターに投稿した時、なぜプライバシーをそのようなビッグ・ブラザー

(独裁主義国家)に明け渡してしまっているのかという質問が寄せられた。

この質問をした人たちはきっと、中国に住んでいないのだろう。

ここではもう微信のない生活など考えられないのだ。


仕事で誰かと会ったとき、中国ではもはや名刺ではなく微信アカウントを交換する。サッカーチームに

所属していたら練習の詳細は微信で共有する。子どもの学校行事も、ティンダー的なデートも

、映画のチケットも、ニュース配信も、レストランの場所を調べるのも、ラーメンから服から家具まで

、何かを買うときの支払いも、全て微信を使うのだ。

微信がなければ、友達や家族と話すこともできない。


こうした状況で検閲当局があなたを微信からはじき出してしまえるのは、非常に大きな権力だといえる。

西側の情報機関は微信のセキュリティーはメッセージアプリとしては最も弱い部類に入るとしているが、

それでもあなたを意のままに操る力を持っている。

中国で普通の生活が送りたいならば、共産党、特に習近平国家主席について議論を呼ぶような発言を

しない方がいい。

これが2019年の中国だ。


 


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