最も深い目標地点(赤い丸)は、宇宙関連施設、衛星攻撃用兵器施設、その他の価値の高い目標の場所を示す。


 INF条約の射程制限に則って開発された地上発射の陸上攻撃兵器は、最大射程499キロである。


 この範囲は、第1列島線から東シナ海と南シナ海にある係争中および中国が所有する島々を攻撃するのに十分であろう。


 しかし、第1列島線内のすべての標的および中国本土の標的に対する陸上システムによる攻撃のためには、現有の兵器の射程を延長するか、新たな発射プラットフォームから発射する新たな兵器が必要となる。


 人民解放軍は、中距離の巡航ミサイルや弾道ミサイルなどの陸上発射の長距離精密火力において、米国やその同盟国に対して長年優位に立ってきた。


 しかし、ロシアとのINF条約に制約されなければ、米国は陸上長距離攻撃能力の保有を追求することができ、中国はより多くの資源を航空およびミサイル防衛に費やすことを余儀なくされる。


 大規模な一斉射撃は費用対効果が常に高いわけではないが、地上の航空機、ミサイル発射装置、大規模フォーメーション、港湾内の資本輸送船、重要なC4ISRノードなどの時間に敏感な標的を迅速に攻撃する大きな価値がある。

 以上の議論はあくまでも純軍事的な議論であり、実際に陸上攻撃作戦を実施するためには国際政治上の様々な考慮が必要であることは当然なことである。


海洋プレッシャー戦略に対する評価

・米中覇権争いの様相が濃くなり、米中のアジア太平洋における衝突の可能性が取り沙汰されている。

 中国が目論む台湾占領などの既成事実化を許さない海洋プレッシャー戦略は、米中紛争を抑止する戦略、日本の防衛をバックアップする戦略として評価したい。


・海洋プレッシャー戦略を成立させるためには、第1列島線を形成する日本をはじめとする諸国(台湾、フィリピン、インドネシアなど)と米国との密接な関係が不可欠である。


 国防省や国務省はその重要性を深く認識しているだろうが、唯一不安な存在は、アメリカ・ファーストを主張し世界中の米国同盟国や友好国に緊張をもたらしているドナルド・トランプ大統領だ。

 アメリカ・ファーストを貫くと、関係諸国との関係がより親密になるとは思えない。


・自由で開かれたアジア太平洋戦略や海洋プレッシャー戦略のためには米軍のさらなる前方展開が必要だが、米国内にはこれに抵抗するグループがいる。

 米中覇権争いにおいて、米国は本当に中国の脅威の増大に真剣に対処しようとしているのか否か、その本気度が試される。


・我が国は、この海洋プレッシャー戦略を前向きに評価しつつも、これに過度に頼ることなく、わが国独自に進めている南西防衛態勢の確立を粛々と推進すべきだ。

 いずれにしても、中国の増大する脅威に日本単独で対処することは難しい。常に日米同盟の強化、第1列島線を構成する諸国との連携を今後さらに推進すべきであろう。