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プラ製ストローが消えた夏、運動拡散の背景 。ありふれたストローが「好ましからざる物」になるまで

2018-08-08 19:07:05 | 環境・温暖化・エネルギー

プラ製ストローが消えた夏、運動拡散の背景

ありふれたストローが「好ましからざる物」になるまで

 米テレビタレントのキム・カーダシアンさんがインスタグラムの1億1500万人のフォロワーに向け、

わが家はプラスチック製ストローを使うのをやめたと宣言したとき、海洋環境に関する非営利団体(NPO)

「ロンリー・ホエール」の責任者は信じられない思いだった。

 

 「このカルチャーハックの発信源はわれわれなのか」。デューン・アイブズ事務局長はこう自問自答したと言う。

同NPOはソーシャルメディア(SNS)でプラスチック製の使い捨てストローの使用禁止を訴える運動

「#StopSucking」を展開している。


 今年は「プラ製ストロー禁止」の夏だ。米国の都市や企業、レストラン、さらにはスポーツの競技会場に至るまで、

瞬く間にストロー禁止が広まった。ここ数カ月、ニューヨークやサンフランシスコ、フロリダ州マイアミビーチ、

カリフォルニア州サンタバーバラ、オレゴン州ポートランドなどの市当局が相次ぎ、プラスチック製の使い捨て

ストローの禁止案を提出もしくは可決した。シアトルが先月、米国の主要都市で最初に禁止措置を施行した。


 また スターバックス をはじめ、 ハイアット・ホテルズ 、ウォルト・ディズニー、ニューヨーク市ブルックリン

地区のバークレイズ・センターなどが先月、プラスチック製の使い捨てストローを段階的に廃止すると発表した。


 プラスチック製ストローがどこにでもある日用品から「好ましからざる物」に転落した背景には、一種の心理が

働いたと思われるほか、ウミガメが偶然保護されたことや、SNSのパワーがあった。さらに、企業側の反発が

最小限にとどまったことも大きい。


 ウースター大学のスーザン・クレイトン教授(心理学・環境学)はこれを2014年に社会現象となった

チャリティー活動「アイス・バケツ・チャレンジ」になぞらえる。このときは人々が氷水を頭からかぶる

動画を投稿し、寄付を行った。

 

ストロー禁止に反対するのが、タピオカが入ったミルクティーを提供する店のオーナーたちだ。大粒のタピオカには幅の広いストローが必要だという

 

 ストローを使わないといった活動は、心理学者が「モラル・ライセンシング」と呼ぶものにつながると

クレイトン博士は指摘する。特定の行動を変えたことで自分自身に満足し、それ以上の行動を取らなくてもよいと

感じてしまうことだ。


 「このようなちょっとしたことをして、『もう私の役目は果たした。だからスタバには車で行く。徒歩でなくても

よいだろう』と思ったりはしないだろうか」と博士は問いかける。「あるいは『環境保護ってやつは結局、そんなに

大変なことじゃないんじゃないの』と考えたりはしていないだろうか」


 環境活動家は、このストロー禁止運動の主な起爆剤になったのは、SNSでの運動と2015年にユーチューブに

投稿されたウミガメの動画だと考えている。動画は異物が詰まって苦しそうなウミガメの鼻孔から血まみれの

ストローを引き抜く様子を写したもので、これまでに約3260万回再生された。


 この動画によって「使い捨てプラスチック製品に対するより大きな疑問が湧き上がった」。野生生物保護協会

(WCS)が進めるプラスチック汚染の啓もう活動「ギブ・ア・シップ」のディレクターを務めるジョン・カルベリ氏は

そう話す。


 さらに、米国でストローが1日5億本消費されるという、よく引用される統計データの影響を指摘する声もある。

米内務省国立公園局をはじめ、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)などメディアも取り上げるこの数字は、

2011年に当時9歳のバーモント州の少年とその母親が行った調査に由来している。


 環境活動家が怒りの対象としてきた使い捨て製品は、何もストローだけではない。だが食料品店に再利用可能な

袋を持参することや、繰り返し使えるマグカップを携行する運動などは、同様の盛り上がりは見せていない。

 

 「店でビニール袋を受け取らないために払わねばならない犠牲は、ストロー不使用による犠牲よりも大きい」。

ニューヨーク市立大学大学院センターのメリッサ・チェッカー教授(環境心理学)はこう話す。


 禁止運動の成功を後押ししたのは、組織化された反対が起きなかったことだ。ただ、飲料用ストローが必要な

身体障がい者の支援団体は明確に反対を主張。一部の都市ではストロー禁止案に例外規定が設けられた。

そのほか、バブルティー(タピオカの入ったミルクティー)を提供する店のオーナーなどが反対した。

大粒のタピオカを吸い上げるには幅の広いストローが必要だと主張している。


プラスチック製ストローを廃止する米企業例

  • アラスカ航空:プラスチック製のマドラーとシトラスピック(レモンなどを刺すようじ)をシラカバや竹などの素材に。ストローは要望に応じてプラスチック以外のものを提供。
  • アメリカン航空:マドラーは竹製のものにする。ラウンジでは「生分解可能で環境に優しい素材のストロー」を使用。
  • バークレイズ・センター:ストロー不要のフタを採用。要望があれば、堆肥にできる素材のストローを提供。。
  • ボナペティ・マネジメント:「身体障がいなどの理由でストローを必要とする利用客」には紙製ストローを提供。
  • ハイアット・ホテルズ:要望があればストローやピックを提供する。「入手可能な限り環境に優しい代替品」を使用。
  • マリオット・インターナショナル:要望に応じて代替のストローを提供。
  • ロイヤル・カリビアン・クルーズ:要望に応じて紙製ストローを提供する。コーヒーマドラーは木製、料理用ピックは竹製のものを使用する。
  • シーワールド・エンターテインメント:紙製ストローまたは再生可能なプラスチックのストローを使用。
  • スターバックス:ストロー不要のフタを採用。一部の飲料に関しては、あるいは要望に応じて、紙製または堆肥にできる素材のストローを使用する予定。
  • ウォルト・ディズニー:紙などの素材のストローを要望に応じて提供。