ノーベル物理学賞は米の3人に 日本人の受賞ならず
10月4日 22時19分 NHKニュース
ことしのノーベル物理学賞に、数学の「トポロジー」という概念を利用して物質で起きる特殊な状態を理論的に説明したアメリカの大学の3人の研究者が選ばれました。
スウェーデンのストックホルムにあるノーベル賞の選考委員会は日本時間の午後7時前に記者会見し、ことしのノーベル物理学賞を、いずれもイギリス出身で、アメリカのワシントン大学のデイビッド・サウレス氏、プリンストン大学のダンカン・ホールデン氏、それに、ブラウン大学のマイケル・コスタリッツ氏の3人に贈ると発表しました。
3人は1970年代、超電導や超流動など、物質に見られる特殊な物理現象がなぜ起きるのか明らかでなかったときに、数学の「トポロジー」という概念を利用して説明する理論的な基礎を築きました。
トポロジーは、すべての現象を「穴の数がいくつあるか」で整理するという数学の概念です。この概念を取り入れて、さまざまな現象をみると、例えば、通常は滑らかな曲線になる電気抵抗が平面の物質を超低温にまで冷やしたときには階段状で現れる現象を説明できるということです。
この理論によって、さまざまな物理現象を理解したり予測したりするための「道しるべ」が示され、ノーベル賞の選考委員会は授賞理由について、「彼らの研究成果は物理学の新たな分野を開き、新しい世代の電子工学の発展や、超電導体や量子コンピューターなどに活用されることが期待される」としています。
日本人の3年連続でのノーベル物理学賞の受賞はなりませんでした。
「トポロジー」注目の理由
ことしのノーベル物理学賞の受賞テーマとなった「トポロジー」とはいったい何なのか。そして、なぜ注目されるのか。物理学の研究情勢に詳しいJST=科学技術振興機構の調査役、古川雅士さんは「物質の新しい性質を引き出す可能性があり、今後、研究が進めば、コンピューターの記憶装置の大幅な省電力化を実現する可能性がある」と指摘しています。
「トポロジー」とは、物質を作る基本的な粒子である「原子」の周りのある限定的な空間を指します。原子の周りを飛び交う電子の中には、この限定的な空間、「トポロジー」だけを飛び交うものがあることが、1970年代に、今回、受賞が決まった人たちの研究によってわかってきました。
さらに研究が進むと、もともと「トポロジー」だけを飛び交うわけではない電子も、人間の操作によって「トポロジー」だけを飛び交うように変えることができることもわかってきました。つまり、「トポロジー」を利用して、物質の性質を人為的に変えられることがわかったのです。
「トポロジー」を利用して物質の性質を変える際、興味深いのは、電気を通すようにも電気を通さないようにも、どちらの性質にも変えられることです。こうしたことから、「トポロジー」の研究を推し進めていけば、将来の新材料の開発につながるのではないかと期待されています。
科学技術振興機構の古川雅士さんは「現在のパソコンなどに用いられている電子部品は情報を記憶するために多大な電力を必要としているが、『トポロジー』の研究を推し進めれば、ごくわずかな電力で記憶できるような記憶装置の省電力化を実現できる可能性があり、今、物理学の世界では、『トポロジー』に熱い視線が注がれている」と、この分野への期待を示しています。
そのうえで、古川さんは「実際に応用する技術の開発は容易ではなく、私たちの生活に身近な製品に応用されるまでには、あと数十年かかるのではないか」と指摘しています。
「新たな研究分野を示した偉大な基礎理論」
超低温での原子の動きや性質などを研究している東京大学大学院の上田正仁教授は「われわれ研究者にとって、現在は当たり前に使われている理論だが、およそ40年前に提唱されたときにはそれまでの考え方を大きく変え、その後の多くの研究者に新たな研究分野を示した偉大な基礎理論だ」と称賛しました。
そのうえで、ことしのノーベル医学・生理学賞に細胞が不要なたんぱく質などを分解する「オートファジー」という生命の基本的な仕組みを解明した東京工業大学栄誉教授の大隅良典さんが選ばれたことに触れ、「ことしのノーベル賞の選考委員会は、科学の考え方に大きな影響を与える基礎研究がいかに重要かと世界に呼びかけたかったのだと思う。なかなか成果の出ない長期的な研究になろうとも基礎研究にしっかりと取り組んで欲しいという世界中の研究者へのメッセージが込められていると感じた」と話していました。
おめでとうございます。
日本は残念でしたけど、トップバッターで受賞し、それも基礎研究への評価ですので大きな喜びです。
今回、韓国報道は一番じゃなかったです。日本の受賞の時はあんなに早かったのに。何なの、あの国。
いつもお読み頂きまして有難うございます。