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893国家中国の罠にはまる小国。【WSJ社説】中国「一帯一路」の被害者モルディブ / モルディブ元大統領「中国が急速に土地収奪」

2018-02-20 14:00:50 | 中共日本浸透工作・中共浸透工作・一帯一路・中国経済侵略

【社説】中国「一帯一路」の被害者モルディブ

モルディブのアブドゥラ・ヤミーン大統領(左)と中国の習近平国家主席(2017年12月) 
 

 インド洋の小さな島国モルディブにおける政治危機は、小さな出来事のように見えるかもしれない。しかし、この国の戦略的な

位置と、中国の影響力拡大を考えれば、司法を自ら支配して反対勢力を封じ込めようとするアブドゥラ・ヤミーン大統領の動きは、

もっと広く注目されるべきだ。


 モルディブ最高裁判所は今月に入り、モハメド・ナシード元大統領を含む野党政治家9人に対する過去の判決を覆して釈放を求め、

野党議員12人の復権も求めた。するとヤミーン大統領は即座に緊急事態を宣言し、最高裁の判事2人を拘束した。

また警察もヤミーン大統領の異母兄で、1978年から2008年まで独裁者として君臨したマウムーン・ガユーム元大統領を逮捕した。

 政権当局者は、政府転覆の企てを阻止したのだと述べている。だが、より説得力ある説明は、ヤミーン大統領の常軌を逸した

行動と中国との親密な関係が、支配層のなかで反発を引き起こしたということだ。年内に予定されている大統領選挙は、野党が

善戦すると予想されていた。


 習近平国家主席の「一帯一路」構想の一環として、中国政府はモルディブに借款を供与し、国営企業を派遣して港湾建設や

その他の公共工事に従事させてきた。国際通貨基金(IMF)の新たな報告書によると、これらプロジェクト推進の結果、モルディブの

対外債務は2021年に対国内総生産(GDP)比51.2%に達し、16年の34.7%から大きく膨らむとみられる。


 現在亡命中のナシード元大統領は、中国による少なくとも16の島々の「土地収奪」をモルディブ政府が容認したと非難しており、

3つのプロジェクト向けの中国借款が国家債務の80%近くを占めていると述べている。同氏は今月に入ってインド紙に寄稿し、

「モルディブにとって、こうしたプロジェクトのコストは途方もなく膨らんでおり、体制の取り巻きが私腹を肥やすのを許している。

一方、モルディブの将来の世代は、決して返済できないほどの莫大な債務を負わされている」と書いた。


 IMFは、対外債務の返済費用は今後4年間、年平均9200万ドルになると述べている。これに対し、政府の歳入はわずか約10億ドルだ。

これらプロジェクトからのリターンが不十分であれば、モルディブはスリランカと同じような境遇に陥る可能性がある。

スリランカは、中国の借款でハンバントタ港を建設したが、昨年12月、同港の運営権を中国国営企業に99年間のリースとして譲渡した。

デフォルト(債務不履行)を避けるためだった。パキスタンも同様に、グワダル港の40年間の運営権を中国に譲渡した。


 インドは当然ながら、中国がモルディブの港を使ってインド洋での軍事プレゼンスを拡大する可能性を懸念している。

昨年は中国海軍の艦船3隻がモルディブに寄港した。インドとモルディブの経済関係も弱まっている。ヤミーン政権は2012年、

モルディブの空港改修工事で中国企業を選び、インド企業との契約を破棄した。昨年、モルディブ政府は議会での議論もなしに

中国との貿易協定を押し進め、中国産品の95%を8年間にわたって無関税とした。


 中国政府はヤミーン大統領への支援を何らかの「条件付き」にしたようには見えないが、同大統領の権威主義化を全く気にも

していない。中国外務省は最近、モルディブの内政に対する外国の干渉に警告した。これはインドなどが緊急事態を終わらせ、

法の支配に戻るよう求めたのとは対照的だ。


 習近平氏の「一帯一路」構想は、中国の影響力拡大を何にも増して重視するものであり、モルディブはその巻き添え被害の一例だ。

レックス・ティラーソン米国務長官は中国の手法を「略奪的」と呼んだが、それは往々にして正しい指摘だと言える。


モルディブ元大統領「中国が急速に土地収奪」

2018年2月16日7時45分   読売新聞
 
ナシード元大統領
 

 【コロンボ】ヤミーン大統領の強権発動で政治混乱に陥っているインド洋の島嶼(とうしょ)国モルディブのナシード元大統領が

13日、滞在先のスリランカの最大都市コロンボ近郊で読売新聞の取材に応じた。


 ナシード氏は、ヤミーン政権下で政権の後ろ盾である中国による「土地収奪が急速に進んでいる」と指摘し、「この植民地化政策を

止めなければならない」と訴えた。


 ヤミーン政権はモルディブを巨大経済圏構想「一帯一路」の要衝と位置づける中国に協力。中国の支援を受けた社会資本整備や

住宅建設が各地で進む。


 ナシード氏によると、中国が開発する少なくとも16の島で、不透明な手続きを経て中国が50~99年間土地を賃借する契約が

結ばれているという。同氏は「中国の支援は10%以上の高金利融資で2020年には返済できなくなる。モルディブは借金のワナに

はまった。中国の手に渡る島はどんどん増える」と警鐘を鳴らし、「土地収奪の最大の推進力は(ヤミーン政権の)独裁だ」と

大統領を批判した。


 ナシード氏はさらに、こうした島々の軍事転用の可能性も指摘。中国軍の初の海外拠点となる基地が開設されたアフリカ北東部

ジブチを引き合いに、「各島で重厚な工事が進められており、目的変更も容易だろう」との見方を示した。


 ナシード氏は、政権による5日の非常事態宣言や最高裁判事逮捕後も反対勢力拘束が続いていると指摘。年内に予定される

大統領選が公正に行われるよう「国際社会が圧力を強めるべきだ」と訴えた。同氏は、野党統一候補として立候補の意向を示している。


 ナシード氏は国内の混乱に関し、インド洋での中国の存在感拡大を懸念するインドに対し、特使や軍派遣などの支援を求めている。

インドは介入に慎重姿勢を保ちつつも、「あらゆる選択肢を排除しない」(軍関係者)としている。


 一方、ヤミーン大統領は中国に特使を送り、非常事態宣言などの正当性を訴えた。中国は「モルディブの国内問題に干渉しない」

(王毅(ワンイー)外相)と、インドの動きをけん制している。

 

 

モルディブで非常事態宣言、元大統領逮捕 政治混迷深まる 。裏に中国のインフラ戦略による主権侵害。

モルディブ続報:中印、モルディブで攻防