「関税戦争」で隅に追いやられるWTO
中国の国家資本主義に対抗するには力不足
2018 年 3 月 29 日 13:55 JST THE WALL STREET JOURNAL
【ブリュッセル】ドナルド・トランプ米大統領は先週、新たな関税を一方的に課すことで、かねて批判の的にしてきた
世界貿易機関(WTO)に平手打ちを食らわせた。だが同盟国がトランプ氏に求めているのは164カ国・地域が加盟する同機関の
役割を修復することであり、隅に追いやることではない。
WTOの未来がとりわけ不透明な理由はトランプ政権の姿勢にある。WTOを敬遠しながら、同時にそれを頼みとしているからだ。
一方で同政権は先週、多くの同盟国やライバル国がWTOのルール違反だと主張する輸入関税を導入した。そしてWTOの枠外で直接、
各国と通商協定の交渉を進めている。トランプ氏はWTOを米国にとって「最悪」で「非常に不公平」だと断じてきた。
だが米国は同時に、同盟国に対し、WTOの改革を進め、中国をWTOに共同で提訴するよう働きかけている。
同盟国が期待するのは、後者のアプローチが主流になることだ。
世耕弘成経済産業相は23日、「WTOを主軸にした問題解決」を呼びかけた。ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、
欧州連合(EU)首脳が「協議の継続を望んでいるが、それはわれわれ全員が調印したWTOの枠組みで行うべきだ」と述べた。
鉄鋼に25%、アルミニウムに10%を課す米関税について、EUと他の6カ国(日本を除く)は一時的な適用除外を取りつけた。
除外の条件は、貿易に関する米政権の懸念に協力して対処することだ。これらの国が適用除外を延長するには、対処したことを
5月1日までに示し、米政権を満足させなければならない。既に2国間協議は始まっており、韓国との自由貿易協定(FTA)見直し交渉は
今週合意に達した。
(29日、大筋合意を発表したばかりの米韓自由貿易協定(FTA)について
「北朝鮮との合意まで(最終決定を)保留するかもしれない」と述べてます)
2国間協定という手段を取る背景には、WTOに対する幻滅がある。1948年発足のGATT(関税及び貿易に関する一般協定)の
後継機関として1995年に設立されたのがWTOだ。中国が加盟した2001年、新たな多角的貿易交渉(ラウンド)が始まったが、
妥結を見ないまま約10年前に頓挫した。