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新型コロナで医薬品供給に不安、原料の中国依存が裏目に /  医薬品供給脅かす新型コロナ、材料輸出国は中国。 製薬工場再開はいつになるのか

2020-03-08 08:24:23 | 医療・疾病・疫病・パンデミック・新型コロナウイルス

新型コロナで医薬品供給に不安、原料の中国依存が裏目に

中国が供給している医薬品原料には、もはや米国内で製造されていないものもある

2020 年 2 月 29 日 03:03 JST     WSJ      By Denise Roland and Jared S. Hopkins

 

 新型コロナウイルスの感染拡大によって中国全土で相次ぎ工場が稼働を停止したことで、

医療分野で憂うべき現実が浮き彫りになっている。多くの医薬品が中国製の原料に

依存しているのだ。米食品医薬品局(FDA)は27日、ウイルス流行の影響が及んだ

地域から原料を調達できず、不足している医薬品が出ていると明らかにした。

その医薬品の具体名やメーカー名は公表していない。

 

 FDAは数週間前から、180社余りの製薬会社に対し、供給が不足すると予想される

薬品について報告するよう求めている。FDAは中国で作られる有効成分を含む約20の

医薬品を特定し、それらのメーカーにも報告を求めている。

 

 とりわけ影響が大きいのは、米国人が服用する薬のおよそ9割を占めるジェネリック

医薬品(後発薬)だ。ブランド薬(先発薬)は中国以外にも供給ルートを持っている

ものが多い。

 

 医薬品の種類によっては、とりわけリスクにさらされているものもある。広く服用

されている血圧の薬や、ドキシサイクリンやペニシリンなど古くからある抗生物質の

原料は、もはや米国では生産されていない。

 

 昔ながらのセファロスポリン系の抗生物質は肺炎などさまざまな細菌感染症の治療に

使われるが、その有効成分を作っているのはやはり中国だけだと専門家はみている。

 

 アイオワ大学ヘルスケア病院の感染症部門ディレクター、ダン・ディーケマ市氏は]

「抗生物質のサプライチェーン(供給網)は一段ともろくなっている。生産の拠点が

世界的な感染流行の中心でなかったとしてもだ」と指摘した。

「複数の抗生物質が一度に不足するような大規模な混乱が起これば、われわれの

対応能力は試練にさらされる」

 

 調査会社サンフォード・C・バーンスタインによると、後発薬メーカー数社で医薬品

原料の価格が最大50%上昇した。コレステロールを下げるスタチンなど一般的な製品の

原料も値上がりしているという。

 

 業界専門家や企業関係者によると、製薬会社は新たなサプライヤーの開拓や値上げで

対応している。

 

 一部の中国企業はインドのメーカー向けの出荷を停止した。オンライン薬局を手掛ける

米バリシュアのデービッド・ライト最高経営責任者(CEO)が明らかにした。

同社はインドのアドバイザーと協力している。FDAによると、インドの後発薬業界は

米国の後発薬の4割を供給してるが、有効成分の多くを中国から調達している。

 

 中国で多数の製造工場や企業がコロナウイルスの感染封じ込めを目指して操業を

停止する中、製薬業界の供給網はさらなる圧力にさらされている。だが、米国向け

医薬品供給ルートの詳細な情報は限られており、品不足に陥る恐れがある医薬品を

当局が予想するのは難しい。

 

 中国は世界最大の医薬品の有効成分供給国とみられており、一段とシェアを高めている。

調査会社 IHSマークイット によると、米国が2017年に中国から輸入した医薬品原料は

39億ドル(約4200億円)相当に上り、前年比25%近く増加した。

 

 米業界にはある程度の予備がある。中国では春節(旧正月)の休暇にたいてい2週間ほど

工場が止まるため、製薬会社は事前に在庫を増やすことが多い。また、業界関係者に

よると、各社は原料を一括で仕入れ、約6カ月分の在庫を維持している。

 

 ヘルスケア事業ストラテジストのリタ・ヌメロフ氏は、「問題は、こうした備蓄が

いつまでもつか、また不可欠な製品の生産を現在のように外国に頼り続けていいのか

ということだ」と指摘した。

 

 

 医薬品供給脅かす新型コロナ、材料輸出国は中国

製薬工場再開はいつになるのか

2020 年 3 月 6 日 10:42 JST  WSJ By Nathaniel Taplin and Charley Grant

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

中国の工場閉鎖が晩春まで続けば、製薬会社は広範な製品について深刻な問題に直面し始める可能性がある

 

 米国人の自宅にある薬の多くは、中国製の材料を使用してインドで加工されている。

新型コロナウイルスのせいで中国の多くの業界が依然、休止状態にあるが、製薬業界に

対するその影響が今、明確になりつつある。

 

 米国の後発医薬品の約4割を供給するインドが今週、26種類の医薬品成分とそれらを

使用した医薬品の輸出を禁止すると発表した。それには一般的な抗生物質薬のほか

解熱鎮痛剤「タイレノール」の有効成分なども含まれる。これに先んじて、

米食品医薬品局(FDA)は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で既に医薬品に不足が

生じていると警告した。具体的にどの医薬品が不足しているかは言及しなかったが、

代替品はあると述べた。

 

 コロナウイルスの世界的大流行の可能性に備える米消費者や企業にとって、これは

懸念すべき新展開だ。米労働者の健康は今や、稼働停止中の中国の製薬工場がいかに

迅速に操業再開できるかに一部かかっているということだ。

世界の医薬品サプライチェーン(供給網)は非常に複雑で、大手メーカーでさえも

使用する全原材料の原産地を必ずしもたどれないと認めるほどだ。

したがって、実際どの程度の影響があるのかを推測するのは難しい。ただ、さまざまな

証拠を照らし合わせると、中国の工場の閉鎖が晩春まで続けば、製薬会社は幅広い

製品について深刻な問題に直面し始める可能性がある。

 一部の医薬品については既に問題が顕在化している。バーンスタイン・リサーチに

よると、一部製薬会社では、コレステロール値の抑制に使用されるスタチンなどの

薬剤の材料の価格が40%以上上昇している。英紙フィナンシャル・タイムズが先月

報じたところによると、インドの製薬会社はアセトアミノフェンに必要な基礎原材料の

調達に苦労している。アセトアミノフェンはタイレノールの有効成分で、今週発表された

禁輸対象品に含まれている。

 

 抗生物質薬はとりわけ供給不足にさらされかねない分野だ。国連のデータによると、

中国は2018年の基礎抗生物質の出荷額が34億ドル(約3600億円)相当と、断トツで

世界最大の輸出国となっている。インドの同年の抗生物質輸入額は14億ドルと世界最大で、

8割近くを中国から購入している。インドはその多くを医薬品化し、小売り向けに輸出

している。2018年の輸出額は15億ドル相当と、イタリア、スイス、ベルギーなどの

その他の主要輸出国とほぼ同水準だ。

 

 朗報は、世界的な大手製薬会社は相当な在庫を確保している場合が多いことだ。

中国の混乱が向こう2カ月で緩和すれば、深刻な供給不足は回避できる可能性が高い。

バーンスタイン・リサーチが2月下旬に業界に詳しい関係者にインタビューしたところ、

在庫はおおむね数カ月は持つと述べたという。また、4-6月期終盤か7-9月期初めごろ

までは大幅な不足には陥らない可能性が高いという。

 

 世界的な公衆衛生危機に際した供給不足の恐れでさえも、グローバル化のイメージを

悪くする。今回の場合、恐らくそれは妥当だろう。

 


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