北の先端兵器実験に韓国大統領府・統一部「挑発ではない」
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が新型先端兵器実験の現地指導を行った
ことについて、韓国政府と韓国軍は16日「挑発とみなすのは適切ではない」「対外向けに武力を誇示する
意図はないようだ」などとコメントし、韓国にとって脅威ではないことを強調しようとした。
しかし野党などからは「北朝鮮は米国を狙った兵器の実験は自制しているが、韓国を狙った戦術兵器は
増強している。今回の実験はこの点を誇示したものだ」とした上で「反対の立場を明確にするべき政府が
沈黙するのはおかしい」などと反発している。
韓国国防部(省に相当、以下同じ)のある関係者はこの日の会見で「(北朝鮮の国営メディアが報じた)
先端という言葉は国内向けで、要するに北朝鮮住民に対して常に軍事強国を目指していることのアピールだ」
「つまり戦術兵器は国外向けではない」などの見方を示した。
さらに「(新型兵器は)まだ開発の初期段階であり、これを挑発とみなすのは適切ではない」とも主張した。
韓国統一部は「金正恩氏が公に軍事関連の活動をする様子はこれまでも何度か伝えられたし、
今年だけでも計8回行われている」とコメントした。
金正恩氏による今回の先端兵器実験の指導を「特別なことではない」と強調する意図があるようだ。
しかし南北と米朝が非核化に向けた対話を行ってきたこの1年間、金正恩氏は兵器関連の視察などは
行わなかった。
韓国大統領府は公式の立場を表明していないが、大統領府の関係者は「(金正恩氏が)戦略兵器ではない
戦術兵器の実験を視察したのをみると、(新型兵器は)攻撃用ではなく防御用だろう」
「米朝交渉の枠組みまで否定する考えはなさそうだ」などとコメントした。
先日米ニューヨーク・タイムズ紙が報じた「サッカンモル」と呼ばれる北朝鮮の非公開ミサイル基地、
さらに北朝鮮の平安北道宣川郡で行われた新型放射砲の射撃訓練など、最近になって北朝鮮の軍事的な
動きが相次いで報じられているが、韓国政府の対応は常に同じパターンの繰り返しとなっている。
しかし一連の報道は北朝鮮で韓国を攻撃するための軍事的な動きあるいは準備が今も行われていることを
示すものだ。北朝鮮は今月13日、平安北道宣川郡で砲撃訓練を行ったが、その際新型の122ミリ放射砲
50門以上が使われたという。この新型放射砲はその射程距離が従来の2倍に達しており、主に韓国の
ソウルなど首都圏に直接ねらいを定めている。
一方の韓国軍では防衛力増強計画が中断され、すでに保有している兵器まで削減しようとしている。
そのため最近の北朝鮮の動きについては「韓国軍とは対照的」との指摘が相次いでいる。
今年に入って韓国政府は北朝鮮の弾道ミサイル迎撃用の長距離地対空ミサイル(L-SAM)の発射実験を
2回延期した。さらに9月の南北軍事合意に基づき非武装地帯(DMZ)周辺での偵察飛行も禁止され、
韓国軍が優位にあるはずの無人機による偵察活動もできなくなった。
そのため国防部などでは「韓国型3軸体制の構築にも影響する可能性が高い」だとか
「有事の際、北朝鮮首脳部の除去を目指す大量反撃報復(KMPR)の場合、関連する来年度予算は
当初の計画よりも削減された」など懸念の声が相次いでる。