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今後のビジョン・ファンドに潜在的なリスク-アナリスト
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孫氏、シリコンバレーで冷遇される可能性も-キングストン教授
15日の東京株式市場でソフトバンクグループ株価が急落した。サウジアラビア出身のジャーナリストが
トルコのサウジ総領事館に入った後に行方不明となった問題が長期化しており、市場ではサウジとの
関係が深いビジョン・ファンドの先行き不透明感を懸念する声も出ている。
前営業日比1%安で始まった後も売りが先行し、一時8.1%安の9164円まで下落した。
終値は7.3%安。売買額は東京市場全体でトップの約1651億円で、2位のファーストリテイリングの
倍以上の規模に膨らんだ。
ソフトバンクの孫正義会長兼社長が推進しているビジョン・ファンドはサウジの政府系ファンドから
450億ドル(約5兆円)の投資を受けている。同国のムハンマド皇太子は今月上旬のブルームバーグとの
インタビューで、孫氏が構想する第2のビジョン・ファンドにも新たに450億ドルを出資する方針を
明らかにしており、サウジ頼みのビジョン・ファンドが、今回の問題によってリスクとなることが
懸念されている。
孫氏とムハンマド皇太子
ソフトバンク広報はコメントを控えた。サウジのムハンマド皇太子は同国出身のジャーナリスト、
ジャマル・カショギ氏が何事もなく総領事館を後にしたと述べたものの、この主張を裏付ける証拠は
示していない。
英サンフォード・C・バーンスタインのアナリスト、クリス・レーン氏は「もしサウジが記者の
殺害に関与していたとすれば、多くの投資家たちはサウジからの資金を受けることは望まないだろう」と指摘。
ビジョン・ファンドの今後の投資が前に進まなくなり、孫氏が計画する第2のビジョン・ファンドに
とっても潜在的なリスクになるとの見方を示した。
調査会社コンステレーション・リサーチの創業者、レイ・ウォン氏は「情報の開示と解決策が必要」
とし、「テック企業やその従業員の間には、社会的な道義心として、この新しい枠組みに誰が資金を
出すのかという点についての意識が高まっている」と話した。
テンプル大学日本校のジェフ・キングストン教授は孫氏が今後「シリコンバレーで冷遇されることになる」
と指摘。「シリコンバレーの若きベンチャーキャピタリストたちは世界をよりよい場所にしたいという
精神があり、サウジが関わっているという暗いビジョンは受け入れられるものではない」と述べた。
トランプ米大統領は、カショギ氏失踪への関与を否定しているサウジの主張は受け入れがたいとの
立場を固めており、同国への制裁を検討している。
また、サウジ政府は、懲罰的措置を受けた場合には、自国の影響力を行使して報復することを示唆している。
:SoftBank’s Son, Saudi’s Prince and a $22 Billion Test of Values(抜粋)
ソフトバンクG株が反落、サウジ記者不明問題で売り圧力
[東京 15日 ロイター] - ソフトバンクグループ(9984.T)が反落。サウジアラビアの反政府記者ジャマル・カショギ氏が今月2日にイスタンブールのサウジ領事館訪問後に行方不明となっている問題が売り材料となっているという。サウジアラビアのムハンマド皇太子は「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」に追加で450億ドル出資する方針を明らかにしたと今月5日に一部で報じられていた。「(記者の行方不明問題について)サウジ政府の関与の疑惑が出ており、株価もネガティブに反応している」(国内証券)との声が出ていた。