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アメリカ新核戦略の功罪:露中との溝、鮮明に / 米国の新たな核戦略に対する各国の反応

2018-02-10 05:39:56 | 核(軍事)・原発・非核化・制裁

識者に聞く、アメリカ新核戦略の功罪:露中との溝、鮮明に

2018年02月06日 23:16 アップデート 2018年02月23日 02:24    SPUTNIK
 
米軍核爆弾B61-12
 

日本時間3日に米国防省が発表した新しい核戦略の指針、「核体制の見直し(NPR: Nuclear Posture Review)」が大きな議論を

呼んでいる。日本政府は外務大臣談話を発表し、「米国と安全保障認識を共有し、NPRを高く評価する」と表明した。

新核戦略の中では、威力を抑えた核兵器の開発や、通常兵器での攻撃に対しても核での報復を辞さないという方針が打ち出されている。

 

平和・安全保障研究所の西原正(にしはら・まさし)理事長は、「北朝鮮への抑止効果を考えれば、NPRは地域の安定に寄与するだろう」

と話す。


西原氏「米国は大型核爆弾を保有していますが、北朝鮮は『米国があんな大規模な核兵器を使うはずがない』と想定し、

米国を軽く見ています。その状況を変えたいというのが米国の目的でしょう。北朝鮮が核または通常兵器でもって、

米国や周辺国に攻撃をするかもしれないという状況の中、米国が小型核爆弾を作り、それを使うというメッセージを北朝鮮に

与えることは、抑止力になると思います。反面、『米国が核使用の準備をするなら、我々も』と考える国が出てきて、一種の

軍備競争を促すのでは、という懸念もあります」

 

日本国際問題研究所 軍縮・不拡散促進センターの戸崎洋史(とさき・ひろふみ)主任研究員は、今回のNPRを

「これ以上核の役割を減らすことはない」という米国の意思表示だと見ている。


戸崎氏「オバマ政権時のNPRでは、核兵器の役割と数を減らしていく、とはっきり表明していましたが、

今回は『核の役割や数を減らす10年にわたる米国の努力にもかかわらず、他の保有国は安保政策における核の優位性を増してきた』

と述べています。米国はこの文言によって、これ以上自分たちの核の役割を減らすことはないと示唆しているのでしょう。

いっぽう、核の先制不使用に関しては、オバマ政権時のNPRにおいても述べられていませんでした。表現こそ違えど、核の先制使用を

否定しないという意味では、政策的には継続されています」


新NPRでは、ロシアや中国の核戦力の増強、北朝鮮による核開発により、世界の脅威が増していると指摘されている。

 

戸崎氏「米国はこれまで、冷戦が終わったということを強調する意味で、ロシアに対する核戦略というものをあくまで表には

出してきませんでした。しかしオバマ政権末期には、安全保障環境の変化の中で、ロシアに対して、よりはっきりした核戦略を

出さなければいけないという認識が強まっていました。それが今回のNPRに出てきたのでしょう。世界における米国の力が

相対的に落ちてきている中、日本を含む西側諸国では『ロシアや中国が、自分達にとって都合のよい世界秩序を力によって

模索している』という危機感が強まっています。ロシアや中国がリスクのある国として挙げられているのは、そうした危機感の

現れだと思います」


リスクの大きい国として名指しされた中国は、「米国の新核戦略には根拠がない」として批判を展開している。

中国・西南大学イラン研究センター長代理の陳俊華(Chen Junhua)氏は言う。

 

陳氏「米国の小型核弾頭の開発は現実的な核使用の敷居を下げることになり、軍拡競争の可能性を高めるでしょう。

これはもともと核武装を強化したいと思っている国にとっての口実となり、結果的に彼らの核ポテンシャルを高めてしまいます。

NPRの中で中国の核の脅威が挙げられているのは、全く根拠のないことです。米国はいつも、強力なライバルの存在に対して

戦略を描き、それに根拠を持たせてきました。中国の絶え間ない発展を背景に、『中国の脅威』というフレーズを広めながら、

米国は自国の核技術発展を正当化しているのです」


ロシアもまた、「NPRは反ロシア的であり、核武装競争のスパイラルを展開する」と批判している。ロシア高等経済学院総合

ヨーロッパ・国際研究センター研究員で軍事評論家のワシーリー・カーシン氏は、「冷戦時代を彷彿とさせる」として次のように

話している。

 

カーシン氏「NPRの中では何の論拠もなしに、ロシア軍がNATO加盟国に侵入→米軍の対抗措置を受ける→ロシア軍が核攻撃する→

そして米軍も核で対抗する、というストーリーが想定されています。

東ヨーロッパのNATO加盟国にとって、『ロシアの軍事的脅威』というのは米国のプロパガンダの産物です。その目的はただ一つ、

米国とEUを反ロシアで固め、対ロシア制裁を継続させることです。NATO加盟国に直接攻撃を加えるなどということは、

ソ連時代でさえ想像できないことでした。ましてや、現代のロシアにそんなことができるはずがありません。米国はそのことを

よくわかった上で、根拠のないシナリオを描いているのです」


スペインの国際政治学者ハビエル・ウガルテ(Javier Ugarte)氏は、不安定化する世界情勢に懸念を示し、核保有国に自重を

呼びかけている。


ウガルテ氏「米国の目的が、単に『脅かす』ことだとわかっていても、今回のNPRは不安を呼び起こすものです。

重要なのは冷静な頭で行動すること。世界の全ての国が、軍拡競争をしないように自分を抑え、交渉によって新しい合意を

達成することがとても大事です。NPRの中で脅威として名指しされた国は、一致団結して一つの大きい勢力になるべきでは

ないでしょうか。そうすれば米国も無視できず、対話のテーブルにつくことになるでしょう」

 

NUCLEAR POSTURE REVIEW2018


U.S. Department of Defense  米国防省

 

 

中国、米「核体制の見直し」を痛烈批判

2018年02月04日 22:00   SPUTNIK

米国は新たな核戦略指針「核体制の見直し」で中国の核戦力の脅威を誇張したとして、中国が同指針を批判した。

 

中国版ツイッターとも呼ばれるSNS「微信(WeChat)」の公式アカウントで中国国防省は「米国防総省は、中国の発展計画に

関する馬鹿げた憶測が出され、中国の核戦力の脅威が誇張された同国の核指針を発表した。我々はこれに対して強く反論する」と

投稿した。


「中国は発展の平和的な道筋と国家政策の防衛的性格を堅守し、原則実施の際の義務を厳格に遵守し、何があっても核の先制攻撃を

行うことも、核戦力を有さない国家や核兵器のない地域に核兵器を用いることも、核兵器使用によって脅すことをすることも

決してない」と強調されている。


米国防総省は2日、ロシアの核戦力発展に多くの注意を払った米国の新たな核戦略指針を公表した。

同省は、他の潜在的脅威として朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)やイラン、中国を挙げ、威力の小さな核弾頭の開発に努力を

傾けるとしている。

さらに同戦略指針では、核戦力の近代化と「戦略核の三本柱(潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を装備した潜水艦(SSBN)、

陸上配備型大陸間弾道ミサイル(ICBM)、無誘導爆弾および空中発射式巡航ミサイル (ALCM)を運搬する戦略爆撃機)」の

発展に米国は資金を投じ続けると述べられている。

米国は、全体としては核兵器削減に賛成であるとしつつも、国連で提案された「核兵器禁止条約」については、現在の課題に

対応するものではないと痛烈に批判している。


日本の河野外相は3日、前日に米国が発表した新たな核戦略指針について、日本政府は高く評価するとの談話を発表し、

日米同盟の枠内で抑止力を強化する方針を示した。

 

 

米国の新たな核戦略に対する各国の反応

2018年02月07日 02:01   SPUTNIK

 

米国は、新たな核ドクトリンを発表した。この米国の新たな核兵器開発戦略は、同国の核のトライアド(3本柱)の徹底的な

近代化を意味している。米国の新たな核戦略に、各国はどのような反応を示したのだろうか?


新戦略では、核兵器は米国の安全保障を確保するための主要な軍事的手段であるため、早急な近代化を必要としていると

強調されている。これは核の三本柱を構成する原子力潜水艦、戦略爆撃機、大陸間弾道ミサイルすべてに当てはまる。

 

さらに米国防総省は、戦略核攻撃ではなく、局地戦争時の戦術核攻撃に使用できる低出力の核弾頭を新たに開発する計画。


米国は、必要な場合には通常兵器による攻撃に対しても核攻撃で対抗する可能性を示している。これは、世界的な核戦争には

つながらないとしても、戦いに参加するあらゆる国にとって恐ろしい結果となる可能性があることを意味している。


なおロシアの複数の軍事アナリストらは、米国の新戦略があまりにもあやふやな表現を有していることを特に警戒している。

例えば新戦略では、敵によるインフラ、指揮拠点、通信手段への戦略的な非核攻撃に対しても核兵器での報復が許されている。

しかも米国だけでなく同盟国に対する攻撃も含まれている。


ロシア、中国、日本

ロシア外務省は米国の核戦略について、懸念と失望を呼んでいると発表した。ロシア上院(連邦会議)国際問題委員会の

コサチョフ委員長は、核政策の外観は「米国独自の高まる攻撃性や、核潜在力の近代化に大規模投資する米国の方針を、

あらゆる側からの米国へのある種の脅威によって正当化する試みのように見える」との考えを表した。


中国は米国に対し、冷戦時代の思考を捨てるよう呼びかけ、新戦略では「中国の開発計画に関する憶測が挙げられており、

また中国の核の脅威を主張する誇張が存在している」と発表した。


なお日本は、米国の新たな核戦略を支持した。河野外相は、米国の同盟国に対する拡大抑止へのコミットメントを明確にして

いるとして、「高く評価する」と発表した。一方、被爆者たちからは反発の声が上がった。被爆者らは、核弾頭の威力を

抑えることは「核の敷居」を下げることにつながり、米国の新戦略は核兵器を使用した戦争の危険性を高めると考えている。

 

ドイツとイラン

ドイツのガブリエル外相は「新型核兵器の成り行きを懸念を持って注視するべきである」と指摘した。

また同氏は「新たな戦術核兵器に関する米政府の決定は、新たな核兵器開発競争のスパイラルが回り始めたことを示している。

冷戦時代のように、これは我々欧州にとって特別な脅威である。だからこそ我々は今まさに兵器に対する管理分野と軍縮に関する

新たなイニシアチブを促進しなければならない」と述べた。


米国の新戦略を最も否定的に評価したのは恐らくイランだろう。イランのザリフ外相はツイッターで「米国の核ドクトリンは、

核拡散防止条約に反して核兵器への大きな依存を示しており、これは人類を絶滅へ近づける。

『終末時計』の針が、1953年以来の最も危険な状態にあるのも驚くことではない」と批判した。

なおザリフ外相が述べたのは、米誌ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツの表紙絵として誕生した象徴的な

時計のこと。1月、時計の針は30秒進められて23時58分となり、世界は冷戦ピーク時の1953年と同じ残り2分となり、

最も「核の」0時(人類滅亡)まで近づいた。



米国の「核態勢の見直し(NPR)」の公表について(外務大臣談話)

平成30年2月3日  外務省

1 2月2日(米国東部時間,日本時間3日未明),米国防省は,「核態勢の見直し(NPR: Nuclear Posture Review)」を公表しました。


2 今回のNPRは,前回のNPRが公表された2010年以降,北朝鮮による核・ミサイル開発の進展等,安全保障環境が急速に

悪化していることを受け,米国による抑止力の実効性の確保と我が国を含む同盟国に対する拡大抑止へのコミットメントを

明確にしています。我が国は,このような厳しい安全保障認識を共有するとともに,米国のこのような方針を示した今回のNPRを

高く評価します。

 

3 我が国としては,今後とも,日米拡大抑止協議等を通じ,核抑止を含む拡大抑止について緊密に協議を行い,日米同盟の抑止力を

強化していく考えです。

 

4 また,今回のNPRにおいて,米国は,核・生物・化学兵器の究極的廃絶に向けた自らの取組に継続的にコミットすることに

言及するとともに,核兵器不拡散条約(NPT)体制の強化及び核兵器の更なる削減を可能とする安全保障環境を追求することを

表明しています。核廃絶を主導すべき我が国としては,現実の安全保障上の脅威に適切に対処しながら,現実的かつ具体的な

核軍縮の推進に向けて,引き続き,米国と緊密に協力していく考えです。