「ゲノム編集の子」渦中の研究者、複数のベンチャー設立
2018年11月28日21時02分
ゲノム編集の国際会議で発表する中国・南方科技大の賀建奎副教授=2018年11月28日、香港大
ゲノム編集技術で受精卵の遺伝子を改変し、HIV(エイズウイルス)にかかりにくい体質の双子を
誕生させたと主張する中国・南方科技大の賀建奎副教授が28日、香港で開かれているゲノム編集の
国際会議で研究内容を説明した。会議には、真偽を確かめようと200人を超える記者らが詰めかけた。
渦中の存在となった賀氏とは、どんな人物なのか。
所属する南方科技大や中国メディアの報道によると、賀氏は中国の大学を卒業後、2010年に
米ライス大学で生物物理学の博士号を取得。その後も米スタンフォード大で研究を続けた後、
中国に帰国した。
南方科技大では生物学部に所属する一方、複数のゲノム関連のベンチャー企業を設立。校外活動が忙しく、
大学で授業をする時間がないとして、給料の返上を大学側に申請して認められた。
現在も大学に籍は残っているが、21年1月までに辞職する予定だという。
賀氏の研究が明らかになった後、中国当局が調査に乗り出したが、賀氏は雲隠れせず、28日のゲノムの
国際会議では約1時間、ステージに立って発表。質疑応答の際、「自分の子供にも同じ実験をするか」
と問われると場内はざわついたが、賀氏は淡々と「真っ先にしただろう」と語った。
賀氏をめぐっては、中国政府の科学技術省の徐南平次官が27日、朝日新聞などの一部の海外メディアに
対し、賀氏の研究について事実であれば違法だとの認識を示したうえで、法律や規定に基づいて処分する
可能性を示唆した。
https://digital.asahi.com/articles/ASLCX6SJ8LCXUHBI024.html
「ゲノム編集の子」研究者、意義を強調 検証求める声も
2018年11月28日21時06分
登壇した中国・南方科技大の賀建奎副教授は「HIVの感染の広がりを防ぐために必要だ」とゲノム編集を
用いる意義を強調した。
ゲノム編集を行った対象は、HIVに感染した男性と、感染していないパートナーの女性の受精卵。
女性に戻したところ妊娠し、双子の女児が生まれたと説明した。健康影響がないか今後18年間は調査する。
研究のリスクを説明したうえで対象者の同意をもらうインフォームド・コンセントについては、
カップルに文書を示して質問を受けるなどし、相手は十分に理解していたと説明した。
質疑で、ゲノム編集した受精卵で妊娠した例が他にもあるかを問われ、もう一例あると明らかにした。
倫理面については、米国のスタンフォード大やハーバード大の倫理の専門家と事前に協議したと説明した。
一方、医療施設の倫理委員会の審査を受けたかどうかは明言しなかった。
HIVは父親が感染者でも子どもへの感染を防ぐ方法はある。ゲノム編集は研究段階の技術で、
予期しない遺伝子改変によって健康被害が起きることも懸念されている。
会議に出席した国立成育医療研究センター研究所の阿久津英憲部長(生殖医学)は、説明を聞いても
真偽は分からなかったとしたうえで「研究データや参加したカップルの同意書などについて第三者の
確認が必要だ」と述べた。
https://www.asahi.com/articles/ASLCX5VX6LCXULBJ00Z.html?iref=pc_extlink