ファーウェイ業績見通し下方修正、「米制裁が予想以上に打撃」
[香港 17日 ロイター] - 中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]の
任正非最高経営責任者(CEO)は17日、米国による制裁が予想以上に効いていると認めた上で、
今年と来年の売上高見通しを約1000億ドルに下方修正した。
これまでは今年の売上高が1250億ー1300億ドルと約20%増加すると見込んでおり、
米制裁による売り上げへの影響が300億ドル相当に達すると判断した。昨年の実績は19.5%増の
約1040億ドル(7212億元)だった。
任氏は深センにある華為の本社で、米テクノロジー専門家のジョージ・ギルダー氏とニコラス・
ネグロポンテ氏と共にイベントに出席。
「米制裁がこれほど多岐にわたり打撃になるとは想定していなかった」とした上で「部品供給を受ける
こともできなければ、多数の国際機関にも参加できず、数多くの大学の協力も得られない。
米国製部品を一切使うことができず、米国製部品を使う通信網とも関係を築けない」と語った。
同時に2021年には事業回復を見込んでいるとしたほか、研究開発費は同社の財務状況を
悪化させると予想されるものの、削減する予定はないと述べた。
ファーウェイ痛みじわり、「スマホで頂点」の夢に暗雲
米国政府による中国・華為技術(ファーウェイ)への制裁措置は、主に通信機器事業が標的と
なっているが、世界トップの座をうかがうスマートフォン事業にも暗い影を落としている。
スマホに欠かせない中核部品やソフトウエアへのアクセスが脅かされているためだ。
ファーウェイは米国からの部品調達が制限されたことを受け、新型ノートパソコン(PC)の発売を
取りやめるとともに、PC事業の生産を一時停止。足元で制裁による影響が顕在化し始めている。
また悲願であるスマホメーカー世界トップの目標も延期した。11日に上海で開催された
テクノロジー関連会議で、幹部が明らかにした。1-3月期(第1四半期)の世界スマホ販売台数で、
ファーウェイはアップルを抜き、サムスン電子に次ぐ2位に浮上。首位の座まであと一歩に迫っていた。
世界スマホ出荷台数(四半期ベース)
多くの欧州市場で、ファーウェイはスマホ販売シェアでトップに立つ。顧客にとっては手頃な
価格や洗練されたデザインに加え、独ライカカメラ社との提携で得た高性能カメラ技術が魅力だ。
ファーウェイ製品のラインアップは幅広いが、総じてサムスンやアップルよりも安い。
ファーウェイ製スマホも一部の中核部品やソフトを米企業に依存しており、今回の禁輸措置は、
ファーウェイが既存スマホの更新や新型モデルの開発を行う能力を著しく制限しそうだ。
例えばファーウェイが今後発売するスマホには、フェイスブックのアプリを標準搭載できなくなる。
これには傘下の写真共有アプリ「インスタグラム」、対話アプリ「ワッツアップ」も含まれる。
新型のファーウェイ製スマホは、グーグルのモバイル端末向け基本ソフト(OS)「アンドロイド」
も使えなくなる見通しで、日本や欧州の通信大手の間では同社の新型スマホの発売計画を撤回する
動きが出ている。中国政府は米ハイテク大手に対し、トランプ政権の取引制限措置に積極的に
従わないよう圧力をかけているようだ。
ファーウェイはこれまで、部品調達の乱れを乗り切るだけの在庫を確保していると説明。
また自社開発のOS(商標「Hongmeng」)を投入し、最終的にはアンドロイドに取って代わることを
目指しているが、新たなOSを使用するよう消費者を説得することは簡単ではない。
ファーウェイにとって、スマホを含めた消費者向けデバイス部門は最大の稼ぎ頭で、昨年の売上高は
500億ドル(約5兆4200億円)以上だったとしている。だが、米国の技術から締め出されたまま
顧客を失う事態となれば、スマホ事業の長期的な成功は危ういとアナリストらは分析している。
JPモルガン・チェースは今年のファーウェイの国外スマホ販売台数見通しを30%減の9000万台に
下方修正した。アンドロイドへのアクセスが制限されることが要因としている。
イタリア・ミラノ在住のマッシミリアーノ・レッジさんは2年前、「iPhone(アイフォーン)5」
から ファーウェイ製スマホに買い替えた。200ユーロ(約2万4000円)未満という低価格が
購入の決め手だったという。 調査会社カナリスによると、1-3月期のスマホ平均販売価格はフ
ァーウェイの276ドルに対し、サムスンは426ドル、アップルは777ドルとなっている。
レッジさんは「iPhoneに戻りたいとは思わないし、スマホに大枚をはたくことは考えられない」
と語る。
価格競争は激しさを増している。シンガポールではサムスンが先月、ファーウェイ製スマホから
「ギャラクシー」端末への買い替えに対する値下げ幅を拡大した。
ファーウェイのウェブサイトによると、同社にとって中東最大の市場であるサウジアラビアで、
昨年発売した「メイト20プロ(Mate 20 Pro)」を18%値下げした。
ファーウェイは常に、一流スマホメーカーだった訳ではない。アンドロイド対応スマホを2009年に
発売して以降、ファーウェイは何年も格安スマホの代名詞だった。だが時間とともに高額機種にも
参入し、ライバル勢より安い価格で提供している。
ファーウェイは販促の一環として、スカーレット・ヨハンソンやガル・ガドットなど有名ハリウッド
女優を起用して大々的な広告キャンペーンを展開。2016年にはライカ社との長期提携により、
スマホ写真撮影技術のリーダーとしてのイメージも固めた。
ファーウェイのスマホ事業は、市場全体が低迷する逆境の中でも伸びている。
インターナショナル・データ・コーポレーション(IDC)によると、1-3月期の世界スマホ出荷台数は
前年同期比6.7%減となったものの、ファーウェイ製品は50%急増した。
中国ではすでにグーグル製品が総じて禁止されているため、ファーウェイ製スマホの利用者に
とっては、アンドロイドが使えなくなっても目立った影響はない見通しだ。だが、中国国外では
非常にマイナス面が大きいだろう。
IHSマークイットのスマホ担当アナリスト、ウェイン・ラム氏は、グーグルの新しいソフトやサービスが
利用できなくなれば、欧州では市場シェアのおよそ半分を失う恐れがあると指摘している。
https://jp.wsj.com/articles/SB12477430832337553339404585363511112346680