注:
- 1 特別協定による負担のうち、訓練移転費は、在日米軍駐留経費負担に含まれるものとSACO関係経費及び米軍再編関係経費に含まれるものがある。
- 2 SACO関係経費とは、沖縄県民の負担を軽減するためにSACO最終報告の内容を実施するための経費、米軍再編関係経費とは、米軍再編事業のうち地元の負担軽減に資する措置に係る経費である。他方、在日米軍駐留経費負担については、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を確保していくことは極めて重要との観点から我が国が自主的な努力を払ってきたものであり、その性格が異なるため区別して整理している。
- 3 在日米軍の駐留に関連する経費には、防衛省関係予算のほか、防衛省以外の他省庁分(基地交付金等:388億円、27年度予算)、提供普通財産借上試算(1,658億円、27年度試算)がある。
- 4 四捨五入のため、合計値があわないことがある。
在日米軍駐留経費負担の推移(平成22~28)
米軍駐留費の分担
2016・11/20 現代ビジネス抜粋
100%なら1兆217億円
トランプ氏は米大統領選で「日本は米軍の駐留費を全額負担せよ」と繰り返し主張した。たとえ暴論であろうと、来年1月には正式に大統領になるのだから無視するわけにはいかない。
「これまでも相当な金額を負担しているのに何だ」と理不尽ぶりに怒るか、言うとおりに全額を負担するのか、あるいは加重な負担に耐えきれず、日本は自主防衛の道を歩むのだろうか。
まずは日本の負担額についてみてみよう。
米国防総省が公表した「共同防衛に関する同盟国の貢献度報告」(2004年版=これでも最新版)によると、02年度に日本が負担した米軍駐留経費負担額は44億1,134万ドル(5382億円、1ドル=当時の122円で計算)とされ、同盟国27ヵ国中でダントツの1位だ。続くドイツと比べ2.8倍、韓国と比べて5.2倍もの巨費を投じている。負担割合でみると、74.5%で、こちらも堂々のトップだ。
負担額は私有地の借料、従業員の労務費、光熱水料、施設整備費、周辺対策費などの「直接支援」と公有地の借料、各種免税措置などの「間接支援」に分かれ、それぞれ32億2,843万ドル(3,939億円)、11億8,292万ドル(1,443億円)となっている。
日米で計算方式が違うのか、02年度の日本の防衛費でこれらにピタリと当てはまる数字は見当たらないが、当時、在日米軍を担当していた防衛施設庁の予算をみると5,588億円で、米国防総省の示した総額とさほど変わりない。
現在の負担額をみると、16年度の日本の防衛費のうち在日米軍関係経費は施設の借料、従業員の労務費、光熱水料、施設整備費、周辺対策などの駐留関連経費が3,772億円、沖縄の負担軽減を目的とする訓練移転費などのSACO関係経費が28億円、在沖縄海兵隊のグアム移転費、沖縄における再編事業などの米軍再編関係経費が1,766億円で、これらの総額は5,566億円だ。
これに他省庁分(基地交付金など388億円、27年度予算)、提供普通財産借上試算(1,658億円、27年度試算)を合わせると総額7,612億円となる。
これらが日本側の負担割合の74.5%にあたると仮定すれば、100 %の負担は1兆217億円なので、追加すべき負担は2,605億円となる。
米軍を「日本の傭兵」にする
決して少ない金額ではないが、第二次安倍晋三政権になって以降、過去10年間連続して減り続けた防衛費は増額に転じている。4年続けて増えた中には、1,000億円以上の増額となった年度もある。2,600億円程度の追加負担であれば、日本政府は支払いに応じるのではないだろうか。
その理由は簡単だ。政府は在日米軍を日本防衛に不可欠な抑止力と位置づけ、日本が他国から侵略される事態では在日米軍のみならず、米本国からの来援を前提に日本の安全保障体制を説明してきたからである。抑止力の中には、もちろん米国が差し出す「核の傘」も含まれる。
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在日米軍の駐留経費は日本が負担すべきか?
2016年12月21日 WEDGE Infinity
ドナルド・トランプ氏(トランプ次期米国大統領、以下同様)が、在日駐留軍の経費を日本に負担させる、と選挙活動中に述べていたことから、日本がこれを負担させられるのか、といったことが話題にのぼっています。筆者は軍事や外交には詳しくないのですが、頭の体操としては良い教材ですので、学生のディスカッション材料として使っています。今回は、その内容を御紹介しましょう。
駐留経費の追加負担は、せいぜい防衛費の1割
米国の予算によれば、在日米軍への支出は55億ドル(6000億円程度)となっています。これは、日本の予算に見る防衛費5兆円と比べると、1割強に相当します。これを日本が肩代わりするか、ということが問題とされているわけです。トランプ氏としては、「日本がこれを払わないなら、米軍は日本から撤退する」と言っているようです。選挙中の発言なので、本気か否かわかりませんが。
日本にとっては、「米国が日本から出て行った場合、防衛費を6000億円増額して自主防衛する」という選択肢がありますが、「6000億円払って米軍に残ってもらう」選択肢と比べれば、明らかに防衛力が低下します。米軍の穴を埋めるためには、何兆円も防衛費を増額する必要があるのです。つまり、米軍が撤退するか否かと比べたら、6000億円などという金額は、極めて少額で、誤差の範囲だと言っても過言ではありません。
誤解のないように記しておきますが、6000億円という金額が絶対額として少額だとは決して思っておりませんが、日本の国家予算、日本の防衛費、日米関係を維持することのメリットと維持できなかった場合のデメリットの大きさとの対比で比べれば、無視できるほど小さい、と記しているのです。言い方を変えれば、6000億円をケチって米国と喧嘩別れするような愚かな選択はすべきでない、ということになります。
つまり、日本としては、「払えと言われれば払う」と決めても何の問題もない程度の話なのです。しかし、払わずに済むならば、払わない方が良いに決まっています。そこで、米国との交渉が必要となるわけです。
日米同盟は双方に利益
日米同盟は、日米双方に多大な利益になっているはずです。日本は、米軍基地の存在によって、安全保障が格段に改善しています。一方で、米国にとっても、日本に基地があることで、米軍がアジア各地に機動的に展開できるわけで、非常に大きなメリットがあるわけです。従って、55億ドルの予算を使っても日本に基地を維持しておきたいわけです。実は、米軍は他国にも基地を持っているのですが、日本のケースとは異なり、費用のほとんどを米国が負担しているようです。日本の基地も、従来はそうでした。55億ドル以上払っても、日本に基地を置いておく価値があると米国は考えていたのです。
余談ですが、ある時から日本政府が「思いやり予算」ということで、条約上は負担しなくても良い費用の一部を負担するようになったのです。もちろん、本当の思いやりではなく、日米貿易摩擦の緩和、といった本音ベースでの意図はあったはずですが。
つまり、日本にとっても米国にとっても、「今より多くを負担しても、基地を置いておきたい」ということなのです。
「会社からタクシーで2000円の所に住んでいるA氏と、会社とA氏の家の真ん中に住んでいるB氏がタクシーに同乗したとすると、タクシー代の2000円をどのように分担すべきか」という問題と似ているわけです。A氏は2000円払っても良い、B氏は1000円払っても良いと考えているわけですから、A氏の支払額は1000円と2000円の間に決まるはずであって、あとは交渉力の問題なのです。
トランプ氏はブラフ戦術が得意かも
双方に大きなメリットがある場合でも、「君が僕の条件を飲まなければ、契約を破棄する」と言って相手を脅かす戦略は、一つの選択肢です。上記のタクシーの例で言えば、B氏はA氏に対し、「自分は1円払うから、A氏は残りの1999円を払ってくれ」と言うわけです。A氏は、断れば2000円払う必要が出てきますから、受諾する選択肢もあるでしょう。
もっとも、B氏も、契約が成立しなければ1000円負担することになるのですから、A氏としては、B氏の提案を蹴ることも要検討です。B氏としては、本当に契約が成立しないリスクを考えて、今少し譲歩した新しい提案をしてくるでしょう。結局、契約が不成立になった時に両者の痛手が等しくなる所で契約が成立するのかも知れません。どちらかの痛手が大きい場合、「契約を破棄すれば、僕も痛手を被るが、君の被る痛手の方が大きいのだから、僕の条件を飲むべきだ」という交渉が成立するからです。
トランプ氏は不動産王ですから、交渉事は上手なはずです。ブラフ戦略(はったり戦略)も場合によっては使って来るかもしれません。トランプ氏は既に、「日本が費用を払わないなら、米軍は撤退する」と発言しています。これがブラフなのか本気なのか。
それに対して、日本としては、動揺せずに、「どうぞ御自由に」と答えてみるのはいかがでしょうか。「日本から撤退したら、米国はアジア地域に兵力を展開できなくなり、南シナ海での中国の横暴を阻止できなくなるが、それでも良いのか?」と言ってみるのです。米国としては、「米軍が撤退した後の日本の防衛は大丈夫か?」と聞いてくるでしょう。それに対しては、二つの答え方があります。
一つは、「いかなる手段を用いても、日本の国土は自分で守る決意である」と答えることです。実際には日本が自分で国土を守ることは困難ですが、核軍備の可能性をほのめかすだけでも、米国がビビッて折れて来るかも知れません。もっとも、米国側に「日本が自主防衛など出来るはずがない」と読み切られて敗退する可能性の方が遥かに高いので、これは賢い戦略とは言い難いでしょう。
今一つは、「米軍が撤退しても、日本は米国の核の傘の下にいるから大丈夫だ。どこかの国が日本に攻めてきたら、米国の核ミサイルが当該国を成敗してくれるからだ」というものです。「日本は、米国の忠実な子分である。その日本が敵国に攻撃された際に米国がこれを守らなければ、他の同盟国が米国を信頼しなくなり、米国から離れていくだろう。そんな事態に米国が耐えられるはずがない」と言うのです。こちらの方が勝算はありそうです。
以上、色々と頭の体操をしてきましたが、決定的に重要なのは、トランプ氏が米国を「世界の警察官」と位置付けるのか、「孤立主義」を採用してアジアや中東等々への興味を失うのか、ということでしょう。それが見えた時に、こうした議論が現実味を帯びて来るのでしょう。その時のために、様々なシナリオを用意して対応策を検討しておくべきなのでしょうね。