中国、頓挫するインフラプロジェクト 資金枯渇で中断
請負業者を苦しめ、経済の重荷に
2016 年 8 月 1 日 18:20 The Wall Street Journal
【長塘(中国)】当地で建設中の高速道路は計画から4年の遅れが出ている。しかも、当初予算を大幅にオーバーしている。中国はイン
フラ整備を推進しているが、このケースは、それが経済を刺激する上でますます非効率的な手段になりつつあることを物語っている。
2008年に当初予算8億8000万ドル(約925億円)で常安高速道路の建設が始まった際、このプロジェクトはうまくいくように見えた。
提携する民間企 業は向こう数十年間、徴収する通行料金から利益が得られる。長い渋滞が慢性化している59マイル(約95キロ)の
道路は現在、通行に4時間を要するが、高 速道路を利用すれば3時間短縮されることになり、経済・環境面で恩恵が大きい。
だが、湖南省の中部で進められているこのプロジェクトは これまで、財務上の問題や住民からの反発、汚職捜査などにずっと悩まさ
れてきた。中国全土の数百におよぶプロジェクトも同じような問題に悩まされている。 こうしたつまずきは経済成長の鈍化を食い止め
ようとする中国の努力を台無しにしている。
インフラプロジェクトの完成から得られる恩恵も減りつつある。この15年間、中国は膨大な数の道路や空港、橋、建物を建設してき
た。これ以上、追加的なインフラプロジェクトを行ったとしても、経済的な利点が小さくなるのは明白だ。
これまでの刺激策の結果として地方政府が背負っている重い債務は、インフラ整備向けの支出で経済を刺激しようとする中国当局
の取り組みにとっ て、さらなる障害になりつつある。
新規融資のうち、既存融資の返済費用に充てられる割合が増えているほか、多くのプロジェクトが赤字に陥り、債務も一段と 膨らんで
いるのだ。
その結果、2010年と15年を比較した場合、同じ単位の経済成長を遂げるためには15年には10年に比べ2倍の投資が必要になっ
ていることが、公式データに示されている。
だからといって、中国がインフラ整備のための支出拡大をやめたわけではない。輸出や製造業をはじめとする経済成長のけん引役が
失速しているためだ。中国政 府は向こう3年間に交通整備プロジェクトに7490億ドル(約77兆円)を投じる。昨年は1710億ドル相当
の資産が建設された。
モンゴルと広東省を結ぶ総距離1650マイル(2655キロ)の高速道路の最終部分あたる常安高速が抱える財務問題と債務は尾を引
いている。
下請け業者のリー・シフアさんは「私たち家族は大きな打撃を受けている」と話す。「家も店も車もすべて担保になっている。押しつぶさ
れている」
2008年にこの高速道路プロジェクトを請け負ったのは不動産・織物・建築資材・投資運用業を手がける企業だった。登記簿による
と、この企業は建設工事の 経験がほとんどない。中国の法律では、大規模なインフラプロジェクトの場合、3社以上による入札が義務
づけられている。常安高速に関してはそうした手続き がとられたことを示す公的な記録がない。
湖南省の交通当局からはコメントが得られていない。
この企業は投資会社と、取締役や株主を共有する建設業者をプロジェクトに 引き入れた。同社に雇われた18社の下請け業者の一
部によると、財務上の問題は早くから兆候が表れていたという。例えば、高速道路の建設予定地に暮らして いた農民たちへの一部支
払いが滞っていたのだ。ある下請け業者によると、年老いた一人の農民は「3年の間、(抗議のために)何度も建設機材の前に体を横
た えた」という。
だが当時は景気刺激のための資金が潤沢に注ぎ込まれていたため、大半の関係者は心配しなかった。別の下請け業者は「この先、
大きなトラブルが待っていると思っていた人はほとんどいなかった」と話す。
2012年終盤になると資金は枯渇した。下請け業者たちは工事の中断は一時的なものだと告げられた。だが、それは3年続き、仕事
はなくなり、負債を抱える羽目に陥った。
下請け業者の一部は今年に入り、高速道路の主要請負業者3社のうちの1社を契約違反で訴えた。総計で9000万ドルの支払いが
滞っているという。当局によると、裁判所はこの訴えを取り上げるかどうか検討中だ。
主要3社からはコメントが得られていない。連絡がとれなかった企業もある。
高速道路の建設が新たな請負業者のもとで、ようやく再開されたのは昨年終盤のことだ。建設は現在も続いている。
ある下請け業者の一人は「誰も勝者がいない。このすべてが巨大な悲劇だ」と話す。
「法と秩序が統治する国ではこんなことは起こらないはずだ」
領土、領海問題で南シナ海、東シナ海で軍事力を派手に誇示し、関係諸国を脅している中国。そこには法と秩序など存在しない。
>「法と秩序が統治する国ではこんなことは起こらないはずだ」
国内で法と秩序を守らなくてはいけないのは人民だけであり、苦しむのは人民だ。国家が主導するインフラプロジェクトが停滞するの
は、中国経済が低迷してることも原因だが、不透明な契約から蔓延る詐取と賄賂も大きな原因になっている、
軍事力の誇示と人民の理不尽さを強いられる苦しみ。この差は中国をどんどん蝕んでいくのではないか。
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