イスラエル首相、イランを痛烈非難 「無人機の残骸」掲げ
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【2月19日 AFP】イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は18日、ドイツのミュンヘン安全保障会議
(Munich Security Conference)で行った演説でイランを名指しし、イランとシリア内に居る「代理人ら」による攻撃を痛烈に
非難した。
ネタニヤフ首相は壇上で長方形の金属片を振りかざし、「ここにイランの無人機の一片、と言うよりはその残骸がある。わが国が
撃ち落した」と見せた。
その上で同首相はイランに対し、「われわれの首にテロの絞縄をかける」のは許さないと述べ、「われわれはイスラエルを守るためなら躊躇なくイラン自体にも行動をとる。その決意を試すな」とけん制した。
イスラエルは今月、シリアから飛来した無人機を撃墜。イスラエル側はこれをイランの無人機と断定し、これが引き金となって
シリア政府軍を巻き込んだ衝突に発展した。これを受けて、もともと敵対し合っているイスラエルとイラン間の緊張はさらに高まって
いる。
ネタニヤフ氏は、同会議で後に演説したイランのモハンマドジャバド・ザリフ(Mohammad Javad Zarif)外相の名を挙げ、
「ザリフ氏がシリアへの関与を臆面もなく否定するのは間違いない」と言い切り、「ザリフ氏、これが分かりますか。分かって当然だ、
あなた方のものなのだから」と述べた。さらに、ザリフ氏は「雄弁にうそをつく」と言い足した。
これに対しザリフ外相は、ネタニヤフ氏の演説を「漫画のような道化芝居」と評し、「真摯(しんし)な回答に値しない」と
取り合わなかった。
イスラエルとサウジがイランに警告、「勢力拡張に立ち向かう」
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イランの拡張はわれわれの世界への最大の脅威だとイスラエル首相
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サウジ外相:イランは侵略的行動の対価を支払う必要ある
イスラエル、サウジアラビア両国は18日のミュンヘン安全保障会議で、中東におけるイランの勢力拡張に立ち向かうべき時が来たと
述べ、イランに警告を発した。
イスラエルのネタニヤフ首相は同会議の講演で、イランの拡張は「われわれの世界への最大の脅威」だとした上で、イスラエルは
それに抵抗すると表明。
一方、サウジのジュベイル外相も、イランは「侵略的行動」の対価を支払う必要があると指摘した。
イスラエルとサウジは外交関係を持たないものの、中東を不安定化させ、戦闘拡大のリスクを高めているシリア内戦に直面し、
イランに共通の敵が存在すると認識している。
イスラエル空軍が宿敵イランと直接対決 米不在の中東、迫る次の危機
2018.2.20 10:00 産経新聞
その瞬間は今月10日早朝、やってきた。中東最強を誇るイスラエル空軍が歴史上初めて、宿敵イランと直接対決した。
まずイスラエル空軍のトマー・バー司令官の説明を聞こう。
「イランの無人機が暗闇に紛れてわが国の領空を侵犯したため、1分半後に攻撃ヘリでたたいた。無人機の操縦拠点はシリア軍
基地にあり、空軍は即時に出撃した。その際、数十発の地対空ミサイルで反撃された」。イスラエル軍の戦闘機1機が被弾し、
領内に戻ったところで墜落した。
問題の基地は、イスラエルとの境界から北東約300キロのパルミラ近郊にある。イスラエル紙ハアレツによれば、イラン革命
防衛隊はそこに無人機の移動式操縦拠点を設けていた。イスラエルの攻撃は、シリアの防空網のほぼ半分を壊滅させる大規模な
ものだったという。無人機の領空侵犯から、わずか1時間後の急襲だった。
イスラエルの北東に広がるシリア南部では近年、レバノン拠点のイスラム教シーア派組織ヒズボラが不穏な動きを見せていた。
ヒズボラは革命防衛隊の「別動隊」としてシリア内戦に出兵し、アサド政権を支えた。イスラエル軍は「ヒズボラはイランから
シリア経由でミサイルを入手している」と非難し、昨年来、小規模なヒズボラ攻撃を繰り返した。イスラエルとヒズボラは2006年、
レバノンを戦場に約1カ月間交戦しており、戦闘再燃が懸念されていた。
イスラエル対ヒズボラの戦争でも重大事なのに、イランが前面に出る可能性も浮上して、緊張は一気に高まった。
さらに大きな心配もある。元イスラエル軍情報部のヨシ・キュペルバッサー元准将は電話インタビューで「今回の攻撃はイランだけ
でなく、ロシアへのメッセージでもある」と語った。ヒズボラ、イランの背後にはさらに、ロシアのプーチン政権の中東戦略があると
いうのだ。
イスラエルとロシアの関係は悪くない。ネタニヤフ首相は1月末にモスクワでプーチン大統領と会談した。
ネタニヤフ氏はこのとき、プーチン氏に「ロシアがイランを止めないなら、われわれが自力で止める」と警告し、その12日後に
攻撃は起きた。キュペルバッサー元准将は「イランの増長を放置すれば、ロシアもツケを払うことになるという警告だ。
ロシアはイランを止める力があるのに、イランを放置してきた」と言う。
アサド政権を支援するロシアは、シリアにS400地対空ミサイルを配備し、制空権を握った。そんなロシアがイランの
無人機投入を知らなかったとは考えにくい。少なくとも、イスラエルはそうみている。
ロシアの最大のライバルである米国のトランプ政権は、シリア内戦を筆頭に最近の中東国際政治からすっかり身を引いている。
米国不在の中、イランとイスラエルの対立に中東の火種がくすぶる。燃え広がれば、シリアや周辺アラブ諸国に影響が及ぶのは
明らかだ。
対立の緊迫度は18日、ミュンヘン安全保障会議で示された。ネタニヤフ氏は無人機の「残骸」を振りかざし、「必要ならイラン
攻撃も辞さない」と明言。イランのザリフ外相は戦闘機撃墜で「イスラエルの無敵神話は崩れた」と応じた。
イスラエルの戦争はいつも電撃で始まる。06年の対ヒズボラ戦争は小泉純一郎首相(当時)の同国訪問さなかに勃発した。
国際社会は新たな危機を看過してはならない。