【社説】脅迫を再開した北朝鮮、核放棄の意志は最初からなかった
北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官は15日、平壌で外信各社を招いた緊急の記者会見を行い
「我々は米国の要求に対し、いかなる形であれ譲歩する意志はない」「米国との非核化交渉を中断することも考えている」
などと述べた。ロシアのタス通信が報じた。
崔次官は、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が北朝鮮としての今後の行動計画を近く公式声明の形で
発表することも明らかにした。
崔次官の発言は、言い換えれば「すでに50年過ぎた寧辺の老朽化した核施設以外、何も差し出す考えはない」
という意味だ。寧辺のプルトニウム施設とウラン施設はもはや北朝鮮の核開発において主要な役割を果たしておらず、
単なる交渉用のカードに過ぎない。そのためそれを差し出すことで制裁の全面的な解除を要求することは、
今後も核を保有し続けることの意思表明に他ならない。もしトランプ大統領がハノイで金正恩氏の一連の提案を
受け入れていれば、世界中の識者が「米国は北朝鮮の核保有を認めた」と解釈したはずだ。
金正恩氏が本当に核を放棄する決断を下したのであれば、極秘のウラン濃縮施設や核弾頭といった核心的な
問題をめぐって再び米国との対話に乗り出しているはずだ。ところが今回改めて脅迫を始めたことから考えると、
北朝鮮は最初から核を放棄する意志などなく、「非核化ショー」によって核保有を確かなものとする戦略を
持っていたことがわかる。
金正恩氏は文在寅(ムン・ジェイン)大統領やトランプ大統領、さらに韓国の特使団や米国の関係者らに
「トランプ大統領の任期中に完全な非核化を行う」「何のために核を持ち続けて苦労するのか」
「私の子供たちまで核を持たせたままにしたくない」などと語っていたが、これらは全て心にもないうそだったのだ。
米情報当局の複数のトップは全員がこの詐欺について把握していたし、今やトランプ大統領も知っている。
韓国政府も最初からわかっていたはずだ。ただ知らないふりをして国民をだまそうとしていたのだ。
うそが通用せず相手をだますことができないとなれば、テーブルをひっくり返して脅迫を始めるのが過去25年に
わたり北朝鮮が繰り返してきた手口だ。北朝鮮としてはすでに水素爆弾クラスの核兵器を手にしているため、
もはや核実験は必要ないし、逆に核実験を続ければ苦労して生産した核物質を浪費するだけだ。
ただし米国が嫌う大陸間弾道ミサイル(ICBM)については、今後も発射をちらつかせることで米国を刺激するだろう。
場合によっては実際に発射に踏み切り、相手を動揺させ有利な立場で交渉の再開に応じるかもしれない。
北朝鮮のこの見え透いた手口にこれ以上だまされてはならない。北朝鮮は一線を越えることも、また最後の
一線を越えることも絶対にできない。なぜならそれによって金正恩氏が失うものがあまりにも多いからだ。
今後も北朝鮮に対する監視を一切緩めることなく、制裁を徹底して続けていかねばならない。
制裁の効果は少しずつ目に見え始めているし、また今後さらに拡大するだろう。北核廃棄は我々の忍耐に
かかっているのだ。