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ファーウェイ通信網で「世界征服」狂気に満ちた中国の妄想

2018-12-11 10:21:01 | 中共日本浸透工作・中共浸透工作・一帯一路・中国経済侵略

ファーウェイ通信網で「世界征服」狂気に満ちた中国の妄想

 2018/12/11   田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 
 中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟副会長兼最高財務責任者(CFO)が、

米当局の要請によってカナダで逮捕された。それ以来、米中貿易戦争の激化を懸念して、事件発覚後から

週明けまでの東京株式市場は大きく株価を下げた。
 

 米中貿易戦争の核心は単なる経済問題ではなく、両国の安全保障にかかわる問題であることが明瞭に

なっている。もちろん、安全保障の問題になれば、同盟国である日本やカナダ、欧州、オーストラリア

といった国々にも、その影響は波及する。
 

 ファーウェイは年間の売上高が10兆円に迫る巨大企業で、スマートフォンや携帯などの

通信インフラでは世界でダントツのシェアを誇る。また、スマホ単体でも、出荷台数で米アップルを抜き、

世界一の韓国サムスン電子に迫る勢いである。
 
 
筆者も渋谷の繁華街を歩いたときに、「HUAWEI」と大きく打ち出されたスマホのポスターを頻繁に

目にした。それだけ勢いのある企業である。だが同時に、以前から中国人民解放軍や中国共産党との

密接な関係を疑われていた。
 

 それは、同社の通信機器に「余計なもの」、つまり中国政府や軍などに情報を抜かれる恐れのある

何らかのチップが入っていると懸念されていることが原因である。あまりに露骨なやり口ともいえる。

米国ではいち早く、これらの懸念があるファーウェイや中興通訊(ZTE)の製品を、政府機関や

関連企業が利用することを禁止する法案が可決された。これは米国の国防予算やその権限を定める

国防権限法の一環であった。
 

 米国が始めた流れに、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、英国などが追随、日本もそれに

倣う方針を固めた。日本でも、実質的にはファーウェイなど中国通信企業の締め出しが既に行われていた

ようだが、政府調達から締め出す構えを公式に認めた。
 
2018年12月6日、北京にある華為技術(ファーウェイ)の店舗で、同社のコンピューターに映し出された最高財務責任者、孟晩舟容疑者の画像
 
 

 中国政府は、日本に対して強烈な抗議を行ったという。また、米国とカナダに対し、拘束されている

孟氏の釈放も要求している。孟氏が逮捕された理由は、取引を禁止されているイランとの交易や詐欺などの

理由だという。
 

 通常、政府が個々の経済犯罪について、身柄を釈放するように抗議することはしない。

例えば、ルノーの大株主であるフランス政府でさえも、日本に対して、同社会長のカルロス・ゴーン容疑者の

釈放を訴えるようなバカなことはしていない。言い換えると、それだけこのファーウェイ関連の問題が、

中国政府ぐるみのものであることを明らかにしているといえよう。
 
 
中国政府のやり口は、米国に代わって世界的な覇権を目指し、その政治的・経済的な権力を中国共産党の

もとに統一するという「一大妄想」に基づいている。経済的な権力の手段としては、次世代の

通信インフラの支配や、巨大経済圏構想「一帯一路」などがあるだろう。

両方とも、アジアやアフリカ諸国を中心にして、その成果はかなり上がっていた。
 

 通信インフラも一帯一路によるインフラ整備も、ともに国際的な公共財のネットワークを構築する

ことにある。通常、この種の国際的公共財のネットワークは、各国の国民に恩恵をもたらすものなのだが、

中国中心の国際公共財供給は、もっぱら「ネットワークの負の外部性」をもたらすと断言していい。

簡単に言うと、自由で民主的な社会が中国によって危機に直面してしまうのだ。
 

 「ネットワークの外部性」とは、ある財やサービスを利用するときに得る個人の利益が、他の人たちも

利用すればするほど増えるというものだ。一例として、英語の国際的利用が挙げられる。
 

 英語を使う人が増えれば増えるほど、一人ひとりが英語を使う効用が増加していく。英語さえ学べば、

いろんな国でビジネスや観光がしやすくなるという効果だ。これは特に個々人にもたらす便益を社会全体の

便益が上回っているので「正の外部性」という。
 

 ところが、通信インフラのようにこの種のネットワークの外部性が大きいと、特定の企業だけが

市場のシェアを奪うことが頻繁に起きやすくなる。ファーウェイもその教科書通りの展開で、

このネットワークの外部性に伴う独占力の奪取を実現してきた。
 

 しかし、ここで大きな問題が出てくる。経済学者の早稲田大の藪下史郎名誉教授は、以下のように

指摘している。
 

 情報通信技術におけるネットワーク外部性が、参加するすべての人に便益をもたらす反面、

その市場に独占的地位を生み出す可能性があると論じたが、同様にネットワーク外部性はある

思想や理論が支配的になると同時に、それらに独占的地位を与えてしまう可能性もある。

『スティグリッツの経済学 「見えざる手」など存在しない』東洋経済新報社
 
 今回のケースでいえば、ファーウェイなどによる通信インフラ構築を通じて、「中国の覇権」という

イデオロギーを世界に流布することだろう。中国政府が国内で行っている「監視社会化」や、

ウイグル自治区などで進める「集団的な洗脳」を見れば、それがいかに自由で民主的な社会の脅威で

あるかは明らかである。
 
2018年12月、北京にある華為技術(ファーウェイ)の店舗で、スマートフォンを操作する客



 
 しかも、詳細は明らかではないが、ファーウェイの通信機器にある「余計なもの」を通じて、われわれの

私的情報が効率的に集められてしまう可能性もある。そうなれば、中国共産党による世界市民の支配に

つながってしまう。「世界征服」など妄想にすぎないと思うが、それを真顔で進めていく国の狂気は、

いつの時代も世界の脅威となるのである。