北朝鮮との戦争なら多大な犠牲者=米太平洋軍司令官
「目的は金正恩を正気に戻すことだ」とも証言
【ワシントン】米太平洋軍のハリス司令官(海軍大将)は26日、北朝鮮とのエスカレートする対立は外交的に解決する
必要があると強調する一方、朝鮮半島で戦争が勃発すれば、悲惨な結末になるとの予想を示した。下院軍事委員会の
公聴会で述べた。
同司令官は、北朝鮮の金正恩委員長と対峙しているなかで米国が目標としているのは戦争ではないと述べ、米軍は
圧倒的な軍事力を持っているとはいえ、戦闘になれば多大な犠牲者が出ることになり、世界の他の大国をそうした戦闘
に巻き込む恐れがあるとも語った。
ハリス司令官は「われわれが望んでいるのは、金正恩を正気に戻すことであって、屈服させることではない」と述べ、
「わたしが考えているのは、(外交の担い手である)国務省が主要な役割を果たすことだ」と強調した。
さらに米国は北朝鮮での軍事行動のための多数の選択肢を持っており、必要ならば先制的な軍事行動の選択肢もあ
ると指摘。それらの軍事行動は北朝鮮の体制に破壊的な結末をもたらすだろうと述べた。しかし同時に、軍事行動をと
れば、北朝鮮は境界線近くに駐屯している韓国軍と米軍ならびに、人口の密集した韓国の首都ソウルに対し、大規模な
通常型攻撃を加える公算が大きいと述べた。
同司令官は、北朝鮮の指導者(金正恩委員長)のレトリック(言い回し)は現時点でおおむね空威張りだが、いずれはこ
うした脅迫を実行に移せるようになるだろうと述べ、その場合は戦争になる公算が一段と大きくなると語った。
同司令官は「彼(金委員長)の戦略的な戦争能力はまだ米国の生存を脅かす脅威になっていないが、歯止めをかけな
ければ、彼は自らのレトリックに見合う能力を確保するだろう」と指摘。「その時われわれは全く新しい世界に目覚めるこ
とになるだろう」と語った。
下院軍事委員会の民主党筆頭理事のアダム・スミス議員(ワシントン州)は、金正恩氏は他の諸国に対する武力攻撃
も辞さない姿勢をみせていることについて、金氏が実際に全面戦争を仕掛ける公算が大きいとは思わないと述べた。こ
れに対し、ハリス司令官は同調するのを避けた。
同司令官は「北朝鮮がいったん能力を持った時、韓国、日本、米国を攻撃しないだろうとするあなた(スミス議員)の確
信をわたしは共有しない」と述べた。その上で「彼ら(北朝鮮)が攻撃するだろうとわたしは言わないが、彼らが攻撃しな
いだろうとするあなたの確信を共有しない」と語った。
同司令官の証言の数時間後には、トランプ大統領が上院議員全員(100人)をホワイトハウスに集め、国防総省と国務
省のトップや軍事・情報当局トップが非公開のブリーフィングを行った。
ハリス司令官も午前の公聴会の後、下院軍事委員会メンバー向けに非公開ブリーフィングを行った。
また国務省は26日、外交上の解決案を提示した。国務省のトナー報道官は同日、米国は平壌を一層孤立化させる一
案として、他の国連加盟国に対して北朝鮮の在外公館を閉鎖するよう促すことを検討していると述べた。
トナー報道官は「幾つかの選択肢がある。そのうちの一つが制裁措置だが、圧力をかける他の手法もある。外交上の
孤立化はそのうちの一つだ」と述べた。孤立化の手段としては、北朝鮮を加盟国際組織から追放すること、あるいは北
朝鮮の在外公館を閉鎖するよう他の諸国に要請することが含まれるという。
ティラーソン国務長官は28日、国連安保理事会の北朝鮮問題に関する会合で議長を務める予定だ。