白人至上主義者の男、実験的な致死薬注射で死刑執行される 米フロリダで
2017年08月25日 BBC
白人至上主義者のマーク・エイセイ死刑囚は1件の殺人を認めたが、もう1件は否定した
米フロリダ州で30年前に起きた人種が動機の2件の殺人事件をめぐって、有罪判決を受けていた白人至上主義者の男に対して
24日、新たな致死薬注射の方法で死刑が執行された。
米NPO「死刑情報センター」によると、黒人を殺害した白人に死刑が執行されるのはマーク・エイセイ死刑囚(53)がフロリダ州で
初めてだという。
エイセイ死刑囚は1987年に同州ジャクソンビルで起こった2件の殺人について、有罪判決を受けていた。死刑は現地時間24日
午後6時22分(日本時間25日午前7時22分)に執行された。
今回初めて新しい混合薬が死刑に使用された。
エイセイ死刑囚は人種差別的な発言をした後、黒人男性のロバート・リー・ブッカーさんとヒスパニック系白人男性のロバート・マクダウ
ルさん(当時26歳)を同じ日の夜に銃殺した、と陪審団は評決を下した。
検察は、死刑囚が女性に変装していたマクダウルさんに買春をしようとしたが、マクダウルさんの性別が分かった後で銃殺したと
述べた。
死刑情報センターによると、フロリダ州が1976年に死刑制度を再導入して以来、白人を殺害した罪で20人の黒人男性が死刑を
受けている。
死刑囚に対しては、米国の死刑執行で今まで使用されたことがなかった麻酔薬エトミデートが投与され死刑が執行された。
不必要な苦しみを引き起こすとの恐れがあったため使用が中止された薬ミダゾラムに代わり、今後エトミデートが投与される。
複数の死刑囚が激しく苦しみながら死亡した様子だったことを受けて、懸念が上がっていた。同州は最終的に今年1月、死刑執行に
おけるミダゾラムの使用を中止した。
エトミデートは他の2種類の薬、ロクロニウム臭化物と酢酸カリウムと合わせて死刑囚に投与された。
しかし反対した1人の裁判官は、実証されていない混合薬の使用を許可することは憲法の下での死刑囚の基本的権利を脅かし、
死刑囚を典型的な実験台として扱っていると警告した。
死刑囚は地元テレビ局「ニュース・フォー・ジャックス」とのインタビューで、人生の残りの期間を刑務所で過ごしたくないと話した。
白人至上主義のタトゥーがあるエイセイ死刑囚は、マクダウルさんの殺害は認めたが、もう1件の殺害は否定した。
死刑囚は「ニュース・フォー・ジャックス」に対し、「お祈りをして、『刑務所はもう十分だ」と言っている。だから、前の扉からでも
後ろの扉からでも何とかして刑務所から出たい」と話した。
米国ではここ数年、複数の死刑がずさんな方法で執行され、弁護士たちが、致死薬注射による死刑執行で執行中に痛みをきちんと
妨ぐことができていないと主張していた。
今回はフロリダで1年半以上ぶりに死刑が執行されただけでなく、米連邦最高裁が同州の判決方法を違憲だと判断して以来、
初めての死刑執行だった。
最高裁は、同州の裁判官たちが死刑宣告の判決をめぐり影響力を持ちすぎていると判断を下していた。
それ以来、同州議会は規則を変え、陪審団が死刑の評決を法廷に提出するためには、全会一致の評決を下さなければならないと
した。
ただ新たな法律は、エイセイ死刑囚などの過去の事件には適用されない。
米国の死刑は現在薬殺です。死刑囚に苦痛を与えないというのが理由ですが、毎年、激しい苦痛を伴って死亡したという報告がされており
問題になっています。
また、薬の使用期限が迫っているという理由で短期間に8人を執行計画したという報告もあります。(下記記事)
製薬会社も死刑執行に自社の薬を使われるのを嫌がっている現状もあり、調達できる何種類かの薬を調剤して使う為、計算したように効かないで
死刑囚に苦痛を与えてしまうことになっているようです。
死刑囚も執行時には体が極度の緊張状態にあるため、致死量を注入しても薬がなかなか効かないという事態が生じるようです。
州により薬の種類が違うようなので、連邦政府主導で研究し、安楽死できる薬を統一できないのでしょうかね。
一番新しい報告が2017年6月ごろにあったと思うのですが(二人の死刑囚の一人が死亡するまで物凄く苦しんだので他の一人の死刑執行が中止に
なった)記事が見つからなかったので2017年4月の記事を掲載します。
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「ぞっとする」最期 死刑囚の弁護士が調査要求 米アーカンソー州
2017年04月29日 19:25 AFP
【4月29日 AFP】米アーカンソー(Arkansas)州で性急な死刑執行計画をめぐる激しい法廷闘争の末、最後の1人となるケネス・ウィリアム
ズ(Kenneth Williams)死刑囚(38)に対する刑が27日夜に執行されたことを受け、同死刑囚の弁護士は28日、ガタガタとけいれんし続け
ていたとする様子を伝え、最期は「ぞっとする」ものだったと述べた。
ウィリアムズ死刑囚は、1週間余りで相次いで死刑が執行された4人の最後の1人だった。同州で死刑が執行されたのは2005年以来初めて。
弁護士のショーン・ノーラン(Shawn Nolan)氏は声明で、「報道によれば、私たちの依頼人は死刑執行から3分以内にせき込んでけいれん
し始め、ガタガタいう音はマイクの電源を切っても聞こえるほどだった」「立ち会った人々の証言からは、刑が執行される間、ウィリアムズ氏が苦
しんだことが分かる」と主張している。
エーサ・ハチンソン(Asa Hutchinson)州知事の広報担当者は、死刑囚の体が動いたのは使用された薬剤に対する「筋肉の不随意運動」
だとコメントしているが、ノーラン氏はこれを「言い逃れ」だと一蹴。同氏と米国自由人権協会(ACLU)の同州支部は、過度の苦痛をもたらす死
刑執行ではなかったか、調査を求めている。
今回の集中的な死刑執行は、薬物注射に使用される薬物の一つ、催眠鎮静剤のミダゾラムの使用期限、4月30日に間に合わせるよう
計画されたもので、同州は11日間に8人の死刑囚に対する刑の執行計画を明らかにしていた。
国連(UN)や欧州連合(EU)も抗議の声を上げ、計画に含まれていた死刑囚4人は執行差し止めを勝ち取っていたが、同州は8日間で
最後の4人目となるウィリアムズ死刑囚に対する刑を執行した。