北へのビラ散布禁止法 再考促す国連報告者に「遺憾」=韓国政府
2020/12/17 15:39 朝鮮日報
【ソウル聯合ニュース】韓国統一部は17日、北朝鮮の人権問題を担当する国連のキンタナ特別報告者が、
北朝鮮に向けた体制批判のビラ散布の禁止を盛り込んだ「南北関係発展に関する法律」の改正案施行を
前に再考を促したことに対し、遺憾の意を表明した。
統一部の当局者はこの日報道陣に配布した資料で、南北関係発展に関する法律について
「民意の代表機関である国会で、憲法と法律が定める手続きにのっとり民主的議論と審議を通じて
法律を改正した」と説明。キンタナ氏がこれに対して「民主的機関による適切な再検討が必要だ」と
言及したことは遺憾だとした。
韓国政府が、国連の責任ある立場の人物に対して遺憾の意を表明するのは異例。
キンタナ氏は16日、米政府系放送局のラジオ自由アジア(RFA)に寄せた論評で、
同改正法について「多方面から北朝鮮住民に関与しようとする脱北者と市民団体の活動を厳しく制限する」
として、「法施行前に関連する民主的な機関が適切な手続きによって改正案を再考することを勧告する」
と表明した。
また、韓国の一部メディアとのインタビューや寄稿でもこうした主張を繰り返し示した。
統一部の当局者は、同法が南北境界地域に住む多数の国民の生命・安全を保護しながら表現の自由も
守るため、制限を最小限の範囲にとどめたという点をキンタナ氏はバランスよく見るべきだと指摘。
立法府がこれまでの判例などを踏まえて検討したと強調した。
韓国の対北ビラ禁止法を巡り米議会が聴聞会を推進
2020/12/19 09:03 朝鮮日報
米国連邦議会傘下の超党派機関「トム・ラントス人権委員会(Tom Lantos Human Rights Commission)」
が、韓国の対北ビラ散布禁止法などに関する聴聞会を開催する予定だという。
ラジオ放送「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」が17日(現地時間)に報じた。
ジョー・バイデン大統領当選者の側近に挙げられるクリス・クーンズ民主党上院議員や、
クリス・スミス共和党下院議員など米議員らが、今回の法律に対し「表現の自由」侵害と
「北朝鮮の人権」悪化の懸念を相次いで表明する中、議会レベルの措置も初めて取られるのかどうか
注目が集まっている。外交関係者の間からは「ビラ禁止法が、人権を重視するバイデン政権発足前から
韓米関係の『雷管』として浮上した」という声が上がった。
VOAによると、トム・ラントス人権委員会の共和党側関係者は「今の会期はもう幾日も残って
いないので、次の会期が始まる来年1月初めに、韓国のビラ禁止法などを検討するための聴聞会の
具体的日程を決める」と語った。
議会のみならず米国当局も、外交チャンネルを通して今回の事案に関連して懸念の立場を伝えて
きたという。
ワシントンポスト紙は17日、消息筋の話を引用して「スティーブン・ビーガン国務副長官が8日から
11日にかけて訪韓し、対北ビラ活動を犯罪化する今回の法案への、米政権の懸念を非公式の形で伝えた」
と報じた。同紙は「今回の法律通過がワシントンの反発を触発する要因になっている」とし、
「米国の議員や各市民団体は、韓国政府が北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)をなだめる(appease)
ために表現の自由と人権を犠牲にしている、と懸念した」と伝えた。国連も最近、韓国はこの法律を
再考すべきだとする立場を表明した。
だが韓国政府および与党は「表現の自由は絶対的ではない」「接境住民の安全のため必要」だとして、
ビラ禁止法を擁護している。韓国外交部(省に相当)の崔鍾建(チェ・ジョンゴン)次官は、
ビラ風船が飛んで来るや北朝鮮が重火器の高射銃で攻撃に出た2014年の事件に言及して
「120万の接境住民のための最小限の法的措置」と主張した。
英国にまで飛び火した対北ビラ禁止法に韓国与党「内政干渉するな」
英議員「北朝鮮の人権を保護する仕組みが消えた」
2020/12/21 11:01 朝鮮日報
英国議会上院のデビッド・アルトン議員が英国政府に対し、「対北ビラ禁止法(南北関係発展法改正
案)」について韓国政府に再考を求めるよう促した。韓国政府が対北ビラ禁止法を強行採決・成立
させたことを受け、米国を中心に「人権と表現の自由を無視した」として批判が高まっているが、
その流れに英国も加わってきた形だ。これに対して韓国与党・共に民主党は「韓国への内政干渉の
度が過ぎている」と反発した。今回の波紋が文在寅(ムン・ジェイン)政権と米国を主軸とした
自由民主主義陣営全体の対決構図として拡大する兆しも見えてきた。
本紙の取材を総合すると、アルトン議員は20日(現地時間)、英国議会内の「北朝鮮問題に関する
超党派議員グループ(APPG NK)」を代表してラーブ外相に書簡を送り、対北ビラ禁止法への関心と共に、
これに対する立場を表明するよう求めた。アルトン議員は書簡の中でこの法案の内容について詳述し
「文在寅大統領がこの法律を承認すれば、韓半島において北朝鮮の人権を増進し、国連人権宣言が
保障する人間の尊厳を守るプラットフォームが消え去ってしまう」と指摘した。
さらに「韓国に定着した3万3000人以上の脱北民にも社会的・政治的に大きな不安を抱かせてしまう
だろう」と懸念を示した。
アルトン議員は英国政界では代表的な知韓派として知られており、20年近くにわたり北朝鮮の
人権問題改善に向けた活動に関与してきた。文在寅政権が昨年11月、脱北を目指した北朝鮮の
漁船乗組員2人を強制追放した際には、これを「ベルリンの壁の向こう側にある確実な死に送り出す行為だ」
と比喩を交えながら強く批判した。
アルトン議員は「英国は韓半島における平和と人権を増進するため長い間努力してきた。
女王は6・25の際、数万人の英国兵を派遣して犠牲を甘受した。これも同じ理由だ」とした上で
「韓国政府が今回の法案を再考できるよう、英国として努力するよう希望する」と訴えた。
これを受け英国政府も近く今回の法案を批判する声明を発表するとみられる。
今月14日の国会本会議で韓国与党・共に民主党を中心に対北ビラ禁止法案が可決してから1週間が
過ぎたが、米国をはじめとする国際社会からこの法案を非難する声が徐々に高まっている。
ロバート・キング元国務省北朝鮮人権特使はAPPG NKが先日主催した聴聞会において
「対北ビラ禁止法は米国で支持を得られていない」とした上で「韓国の文在寅大統領は法案への
署名拒否を検討すべきだ」と述べた。
オーストラリアで最高裁裁判官を務め、国連の「北朝鮮における人権に関する調査委員会(COI)」の
委員長だったマイケル・カービー氏は「米国人が強調し続けているのは、言論・出版・集会の自由を
保障した修正憲法第1条だ」として「ビラ禁止法のような措置は、米国のバイデン政権の政策と衝突を
起こしかねない」と懸念を示した。
これに対して民主党はこの日、報道官名義のブリーフィングで「対北ビラ散布規制は大韓民国国民の
生命と安全を守るための最低限の装置だ」「米国政界の一部から出ている偏狭な主張に対しては
深い遺憾を表明する」とコメントした。「南北関係の特殊性を全く理解できていない発言」
「同盟国に対する礼儀ではない」「米国の対北ビラ後援金が正しく使われているかをまずはチェックせよ」
などの反論も出た。今回の法案を巡って米国では「文在寅政権における民主主義」を根本から疑う声も
出始めていることから、民主党は神経質な反応を示しているのだ。これに先立ち韓国外交部
(省に相当)の康京和(カン・ギョンファ)長官も米CNNテレビの番組に出演した際
「表現の自由は絶対的なものではない」との考えを示した。
民主的な価値を外交の最優先原則とするバイデン政権の発足を前に、人権問題が韓米対立の雷管として
浮上した形だ。
米カトリック大学政治学科のアンドリュー・ヨ教授は米政府系ラジオ放送「ボイス・オブ・アメリカ
(VOA)」のインタビューに「米国、特に議会の反応を見たところ、本当に悪い状況に進んでいる」
と述べた。米国では今月11日、議会内超党派の「トム・ラントス人権委員会」で委員長を務める
クリス・スミス連邦下院議員(共和党)を皮切りに、マイケル・マコール議員(共和党)、
ジェラルド・コネリー議員(民主党)も法案の修正を要求するなど批判に加わった。
米ヘリテージ財団のオリビア・イノス研究員は米国の経済・経営専門誌フォーブスへの寄稿で
「米国の新政権は改正案に対する反対の意向を伝えるべきだ」と主張した。
このような中で米戦略国際問題研究所(CSIS)のビクター・チャ韓国部長は「ジェイク・サリバン
国家安保補佐官内定者がすでに言及したウイグルのイスラム教徒弾圧や香港問題に対し、韓国政府は
完璧に沈黙している」「バイデンが選択を強要した場合、韓国はD10(民主主義国家協議体)の
ような多国間連合体から疎外される可能性があり、これは韓国にとって損害だ」との見方を示した。
チャ氏は韓国が「クアッド(米国が主導する米国、日本、インド、オーストラリアによる
地域安保協力体)」や中国のIT企業を排除するクリーンネットワークへの立場を留保している
ことにも言及した。