G20首脳宣言、気候変動めぐり米が圧力か 仏大統領府筋が指摘
ドナルド・トランプ米大統領。大阪市で開かれている20か国・地域(G20)首脳会議(サミット)の会場にて(2019年6月28日撮影)。
【6月28日 AFP】フランス大統領府筋は28日、大阪市で開かれている20か国・地域(G20)首脳会議
(サミット)で採択される首脳宣言について、米政府が気候変動に関して強い文言を入れないよう
複数の国に圧力をかけていると指摘した。
仏大統領府筋は「宣言を骨抜きにするため、3~4か国が米国から圧力をかけられている」と説明。
国名を明らかにすることは避けたものの、ジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)政権下の
ブラジルと産油国サウジアラビアは気候変動に懐疑的とみられている。
気候変動はG20において最も各国の見解が分かれる問題の一つとなっており、欧州諸国は過去の
G20の宣言から後退することに強く反対している一方、米国は離脱を表明した地球温暖化対策の
国際枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」を支持していない。
仏大統領府筋によると、G20に合わせて28日に行われた会合で欧州各国首脳は「過去2度の
G20で決めたことを骨抜きにし、パリ協定を弱体化させる文言は受け入れられない」との
意見で一致したという。
フランスのエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領はパリ協定に言及しないことは
「越えてはならない一線」としており、言及がなければ署名しない考えをすでに示している。
気候変動問題:イタリアのコンテ首相会見(29日、大阪市)
イタリアのコンテ首相は29日、20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)閉幕後の記者会見で、
気候変動問題について「イタリアの決断は確固たる地位を築くことだ」と強調した。
2020年に同国が開催する気候変動に関するイベントでは英国とパートナーシップを組む考えも表明した。
コンテ氏は欧州連合(EU)がブラジルやアルゼンチンなど南米諸国が加盟する関税同盟、
南米南部共同市場(メルコスル)との自由貿易協定(FTA)に政治合意したことに触れ
「我々は20年間交渉してきた。国内での議論は必要だが、最終合意にたどり着けば(貿易に)
大きな可能性が生まれる」と期待を示した。
G20大阪サミットについて、コンテ氏は「交渉の場ではなかった。各国の大臣らと交流する良い
機会だった」と話した。
マクロン氏、環境問題強硬姿勢。G20首脳宣言、気候変動問題「後退防げた」(6/29 閉会後会見)
首脳宣言は米国がパリ協定から離脱すると改めて触れた一方、G20として協定を「不可逆的」と認め、
「完全な実施にコミットする」とした。前回G20サミットとほぼ同じ文言となった。
マクロン氏は「もっと(対策を)先に進めなければいけない。ただ欧州、カナダなども巻き込んで
取り組みの解体を防げた」と強調した。フランスによると、トルコ、ブラジルなどが気候変動対策に
消極的な姿勢を取る可能性があった。
マクロン氏はサミット開幕前から首脳宣言がパリ協定について言及しない場合、署名しないと
主張してきた。草稿段階の宣言がトランプ米政権に配慮して後退した内容になっていると報じられ、
日本にそうならないようクギを刺してきた。
5月の欧州議会選では独仏などで環境政党が議席を伸ばし、若い世代を中心に環境保護政策に関心が
高いことがはっきりした。マクロン氏も世論を意識しており、G20サミットを一定の成果として
有権者に訴えたい考えだ。
貿易などの首脳宣言の文言について、マクロン氏は「最悪の結果は防げた」と語った。米中の
貿易戦争の背景の一つである鉄鋼などの過剰生産問題で、秋までに新たな解決策を目指すなどと
宣言している。