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「回転寿司」の競争激化、増える破綻 漁獲量減少と人手不足のダブルパンチ

2018-08-22 13:49:13 | 産業・企業情報

「回転寿司」の競争激化、増える破綻 漁獲量減少と人手不足のダブルパンチ

2018.8.20 06:45   Sankei Biz

 

 子供からお年寄りまで幅広い年齢層に好まれる「回転寿司」。日本生まれのファストフードで、手軽な価格設定が

人を吸い寄せているが、業界の競争は年々激しさを増している。経営する会社の倒産も全国的に増加している。

(東京商工リサーチ特別レポート)


 2018年1-7月の「回転寿司店」を経営する会社の倒産件数は6件発生した。このペースで推移すると、

過去10年間で年間最多だった2016年(7件)を上回る可能性が高くなった。


 百円均一寿司などが受け、「デフレの勝ち組」の代表格として拡大をたどった「回転寿司店」だが、漁獲量の

減少による魚価高騰、人手不足、消費者の実質賃金の伸び悩みなどが重なり、地方を中心に経営環境は厳しさを

増している。

 

 2018年1-7月の「すし店」の倒産は、18件(前年同期比12.5%増、前年同期16件)と、全体の

倒産が低水準で推移するなか、前年同期を上回って推移している。


◆輸入が増え、円安もボディーブローに

 この要因には、多店舗展開の失敗などによる「回転寿司店」の倒産件数の押し上げがある。

2018年1-7月の「回転寿司店」を経営する会社の倒産が6件(前年同期1件)と急増しているからだ。


 「回転寿司店」の倒産増加の要因は、以下のことが挙げられる。

(1)他の飲食業に比べ、ベルトコンベヤーや注文用タッチパネルなど、多額の初期投資が必要な先行投資型産業で、

顧客の回転率を高めに維持しなければならない。だが、大手チェーンを含めて出店が相次ぎ、同業他社との競争が

激しくなっている。

 

(2)飲食業の中でも原価率が高いとされるビジネスモデルのため、最近の漁獲量減少による魚価高騰が響いてる。

さらに、アルバイトを含めた賃金も上昇しているが、コストアップを吸収する価格改定が難しい。


(3)食材は輸入品も多く、為替の影響を受けやすい。最近の円安基調がボディーブローのように企業体力を消耗

させている。


◆グルメ系として差別化を図った業者も頓挫

 主な「回転寿司店」経営会社の倒産事例は以下。


(1)エコー商事(横浜市、資本金3000万円、従業員100名)

 4月2日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。負債総額は15億3000万円。

 同社は、「ジャンボおしどり寿司」の店名で、神奈川県内を中心にピーク時には20店舗を展開していた。

一皿120円~760円の寿司を提供するグルメ系回転寿司として、100円均一の回転寿司店とは一線を画し、

ピーク時の売上高は30億5800万円を計上した。


 しかし、最近は大手同業チェーンの台頭により競争が激化して減収傾向が続いていた。

このため、スクラップ&ビルドにより、ここ数年は12店舗での営業だった。消費者の低価格志向の高まりや

積極的な出店展開による金融債務が重く支えきれなくなった。

ジャンボおしどり寿司(日野本店)


(2)プリーズ(福井市、資本金1000万円)

 4月25日、福井地裁に破産を申請した。負債総額は3億200万円。

 同社は、店名「まつりずし」の回転寿司店を福井県内を中心に多店舗展開し、その後は大手に対抗するため

タッチパネルを利用したオーダー形式の「ファミリー寿司割烹まる」を出店するなどで、ピーク時の売上高は

10億円を計上した。


 しかし、同業他社との競争が厳しく、既存店のリニューアルや、不採算店舗の閉鎖を進めたものの業績悪化に

歯止めがかからず、債務超過状態から行き詰まった。

 

◆百貨店の物産展に参加もむなしく…

(3)エスワイケイ(富山県高岡市、資本金5000万円、従業員20名)

 2月5日、富山地裁高岡支部に破産を申請した。負債総額は2億3900万円。

 同社は、当初は焼き鳥店だったが、地場の回転寿司のFC店に加盟した。県内に支店展開し、ピーク時には

約5億円の売上を計上した。しかし同業他社との競合激化で採算が悪化、業績の立て直しが図られないことから、

今年1月末で店舗を閉鎖した。


(4)ビックマウス(北海道釧路市、資本金3375万円)

 7月6日、釧路地裁から破産開始決定を受けた。負債総額は1億9500万円。

 同社は、1989年10月に釧路市では先駆けとなる回転寿司店「ビックマウス芦野店」をオープンした。

次々に支店展開を進めてピーク時には4億5100万円の売上を計上した。

 

 しかし、同業他社との競争激化から店舗閉鎖を余儀なくされた。最近は新たな店舗形式の「鮨茶寮四季彩」を

運営するほか、百貨店が開催する北海道物産展にも出店していたが、売上減少に歯止めがかからず事業継続を断念した。


◆関係者は「業界再編さらに進む」

(5)仁々(三重県鈴鹿市、資本金300万円)

 7月4日、津地裁から破産開始決定を受けた。負債総額は3100万円。

 同社は、回転寿司店「かいおう三重鈴鹿店」を経営していた。しかし、2016年8月にFC本部だった

海王コーポレーション(富山県)が破産するアクシデントに巻き込まれた。


 その後は「回転寿司みえ丸」に店名を変えて営業を続けていたが、集客が落ち込み経営が悪化。先行きの見通しが

立たないことから6月27日に閉店して事業継続を断念した。


 外食産業全体の業績が伸び悩む中で、「回転寿司」業界は右肩上がりの成長を続けてきた。

市場拡大を牽引したのは大手チェーン店の出店攻勢で、大手の寡占化も拡大している。


 関係者は、「業界再編がさらに進む可能性がある」と指摘しているが、魚価高騰や人手不足などの経営課題の

解消メドが立たず、地方や中小の回転寿司店の今後の動向には目が離せない。


 
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