北朝鮮ミサイル発射、韓国「6分で反撃せよ」 実戦では迎撃時間と的中確率が訓練に劣るとの指摘も

北朝鮮ミサイル発射、韓国「6分で反撃せよ」

実戦では迎撃時間と的中確率が訓練に劣るとの指摘も

2017 年 12 月 1 日 05:00 JST 　THE WALL STREET JOURNAL

 

　【ソウル】まだ暗闇が広がる午前3時17分、ボーイング737を改造した韓国の早期警戒機が北朝鮮による約2カ月ぶりの

ミサイル発射を探知した。

　その6分後、韓国陸軍の地上発射装置と海軍のイージス駆逐艦、空軍のF16戦闘機から、朝鮮半島東部の海域に向けミサイルが

連射された。紛争への万全な備えと反撃能力を誇示する意図だ。

　それはおおむね成功とみられたが、安全保障の専門家は、実戦になれば韓国はそれほど迅速かつ正確には反応できないかも

しれないとみている。

　北朝鮮は29日早朝、米首都ワシントンも射程に収まると専門家がみる最新型の大陸間弾道ミサイル（ICBM）を、

平壌の約20マイル（約32キロメートル）北に位置する平城（ピョンソン）から発射した。

北朝鮮ミサイルの射程

専門家は北朝鮮が11月29日発射したミサイルが米全土を射程内に収めると見ている

 

 

 

　韓国国防省が30日に公表した詳細によると、同国陸軍が狙った海域は北朝鮮の発射台までの距離に等しく、その気になれば

発射地点を攻撃できることを示している。文在寅（ムン・ジェイン）大統領はすでに報告を受けていた。

　だが、ミサイル発射実験の探知は未完の科学で、当たり外れがある。韓国国防安保フォーラムのヤン・ウク上席国防研究員は、

衝突が起これば北朝鮮はおとりの発射台を設置するなど、軍事行動を隠すさらなる手を打つ可能性が高いとみる。

　ヤン氏はさらに、そうした状況では、日米韓が正確な発射地点を突き止める確率が低下すると指摘。それでも今回のミサイル

発射実験に対する韓国の対応については、反撃までの時間の短さを考慮すれば成功と言えるとの見方を示した。

　米国を中心とする国連軍の報道官によると、米軍など他国軍は韓国の行動に加わらなかった。

　ヤン氏は「われわれが29日に目にしたのは、北朝鮮のミサイル発射に対する積極的対応で、韓国軍が『キルチェーン』システムと

呼ぶものだ」と説明した。キルチェーンとは、核攻撃が発生した場合に北朝鮮ミサイルシステムに先制攻撃を仕掛けるため構築された

包括的な防衛システムの一環だ。

　韓国は今年、中短距離ミサイルを打ち落とせる米の地上配備型ミサイル迎撃システム（THAAD）にバッテリーを実装し、

地対空迎撃ミサイル「パトリオット（PAC-2）」システムを完成させた。新たなバッテリーで飛距離が伸びるが、韓国全土はカバー

できない。

　韓国のある退役軍人によると、有事には日米が衛星画像を韓国当局者と共有するものの、韓国には北朝鮮を監視する軍事衛星がない。

　

　専門家の話では、北朝鮮は管制塔へシグナルを送る装置をミサイルに取り付けている。韓国はそのシグナルを利用してミサイルを

追跡できる。

　だが、国立ソウル大学平和統一研究所のジョ・ドンジュー副所長は、韓国や日本、米国の都市を標的として実際にミサイルを

発射する際には、北朝鮮がこうした装置を取り付けない可能性があるとし、そうなれば韓国はミサイルを追跡する術がなくなると

指摘した。

　前出の退役軍人はまた、韓国が北朝鮮にスパイ網を持っていることに触れ、今週のミサイル発射が事前に韓国当局へ知らされた

可能性があると述べた。だが安全保障上の懸念を理由に、それ以上の詳細を語ることは控えた。

　韓国による北朝鮮でのスパイ活動を巡る詳細は明らかになっていないが、地元メディアはこのところ、韓国が北朝鮮内に

めぐらした人的ネットワークはここ何年かでほとんど失われたと報じている。