代替肉は「うまみ」のある新ビジネス? 大手も続々参入
【6月17日 AFP】植物性の「肉」は、もはや食品業界の異端ではない。スーパーでの売れ行きも良く、
ファストフード・チェーンや食品企業で注目商品となっているだけではなく、ウォール街の投資家らの
人気も集めている。
米金融大手JPモルガン・チェース(JPMorgan Chase)は、植物性肉の市場規模は15年以内に
優に1000億ドル(約11兆円)を超えると推計している。
また、英大手銀バークレイズ(Barclays)は、10年以内に世界で販売される肉全体の約10%、
最大1400億ドル(約15兆円)相当を「代替肉」が占めると試算している。
大手飲食店チェーンではバーガーキング(Burger King)が今年4月から、同社の看板商品である
ハンバーガー「ワッパー(Whopper)」のベジタリアン版を試験販売しており、
マクドナルド(McDonald's)もドイツで肉不使用のバーガーを投入した。
米ケンタッキーフライドチキン(KFC)は肉を使わないメニューを検討中だ。
もちろん代替肉自体は目新しいものではない。だが、食品業界のスタートアップ企業や成長中の
企業はより新しいテクノロジーを活用し、本物の肉の味や食感などを徹底的に再現しようとしている。
それと同時に、環境や動物保護の観点、あるいは健康上の理由から植物性肉の食品を選ぶ消費者も
いっそう増えている。
代替肉メーカーとしてよく知られているベンチャー企業、インポッシブル・フーズ
(Impossible Foods)やビヨンド・ミート(Beyond Meat)は、時に急増する需要に応えるのに
苦心するほどで、ウォール街の投資家らもその潜在性を有望視している。
インポッシブル・フーズのインポッシブル・バーガー(Impossible Burger)はすでに米国と
アジアの飲食店計7000軒で販売されている。評価額20億ドル(約2200億円)の同社は最近、
3億ドル(約320億円)を調達した。
■大手も続々参入
食品大手ではスイスのネスレ(Nestle)が4月、欧州で大豆、小麦、ビートルートなど植物の
抽出物を主原料とした「インクレディブル・バーガー(Incredible Burger)」の販売を開始した。
同社は今秋には米国で、エンドウマメを主原料としたベジタリアン向けバーガー「スイートアース
(Sweet Earth)」の発売を計画している。
欧州食品・日用品大手ユニリーバ(Unilever)も昨年、植物性肉専門ブランド
「ベジタリアンブッチャー(Vegetarian Butcher)」を立ち上げた。同社は「世界一の植物性肉
ブランド」を目指すとしている。
米食品大手ケロッグ(Kellogg)はベジタリアン食品部門「モーニングスターファーム
(MorningStar Farms)」を通じて、1970年代から代替肉市場で存在感を発揮している。
急成長する業界で積極的に事業展開している企業にはこの他、自国でベジタリアン・バーガーを
立ち上げたブラジル食品大手JBSや、ビヨンド・ミートに出資したことがあり、現在は自社で
植物性肉製品の販売を計画している米タイソン・フーズ(Tyson Foods)などがある。
動物性食品の代替製品を推進する「グッド・フード・インスティテュート(Good Food Institute)」
によると、2018年の代替肉の販売額は前年比23%増と急成長している。
だが、食肉市場全体ではまだ1%にすぎず、ミルク市場の13%を大豆やアーモンド、ココナツなどを
原料とした非乳製品が占めることに比べればまだまだ及ばない。
■投資家らが警告するリスク
代替肉市場は大きな潜在性を秘めているが、アナリストらは業界が直面している不確定要素を
見失ってはいけないと警告している。
「リスク要因はいくつかある。例えば、消費者の舌にアピールするために添加物を使用している
製品は結果的に、うたっているよりも健康的ではなかったりする」とバークレイは指摘している。
バークレイがもう一つ指摘しているのは、マーケティングに関して「規制による制約を受ける可能性」
だ。例えば、米国では畜産業団体が、「肉」という単語の使用を動物性食品に限定するよう
政治家らに働き掛けている。
また、JPモルガンは、新興企業には常にリコールによって混乱が生じるリスクがあると警告している。
より大きな企業、多様な企業がこぞって市場に参入し、存在感が増すことにより、そうした過誤が
起こった場合の影響が増幅される可能性があるという。