中国、肉の買いあさりに拍車 アフリカ豚コレラ代替で和牛の輸入最大に
中国がブラジルやニュージーランドなどから豚肉、牛肉、鶏肉、羊肉を買いあさっている。
既にマトン(成羊の肉)やラム(仔羊の肉)の世界最大の輸入国だったが、米農務省によると
牛肉輸入量も昨年、100万トンを大きく上回り、米国を抜き世界最大の市場になった。
アフリカ豚コレラ(ASF)感染拡大の影響で豚肉価格が高騰し、代替需要が拡大しているためだ。
「豚2億頭消える」
今年の中国の豚肉供給量はASFの影響で20~30%減少し、豚肉不足が予測されている。
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)の市場アナリスト、ティム・ライアン氏(シンガポール在勤)は
「10年とはいわないまでも、この先数年はASFは世界の食肉市場に何よりも大きな影響を与える。
ASFによる減少分を補うだけの肉を、世界が供給できるとは考えられない」と述べた。
中国の英字紙チャイナデイリーによると、中国農業農村省は、欧州連合(EU)、カナダ、
ブラジルからの中国への豚肉輸出量はそれぞれ2019年に前年比40%増の170万トンに、
20年に210万トンに達すると予測している。オランダの金融大手ラボバンクのアナリスト、
アドルフォ・フォンテ氏によると、ブラジルから中国への豚肉輸出は今年、61%増の25万トンに
達するとみている。
動物用医薬品・栄養剤メーカー、フィブロ・アニマル・ヘルス(米ニュージャージー州)の
ジャック・C・ベンドハイム会長兼最高経営責任者(CEO)は「ASFにより中国で2億頭を
超える豚がいなくなった。これによる世界のタンパク質市場への影響が明るみに出るのはこれからだ。
今年の中国の豚肉供給量は前年比30%以上、減少する」と語った。
高級な豪州産急増
豪州の畜産関連の業界団体会長などを務めるドン・マッケイ氏によると、中国では輸入豚肉や
鶏肉が地場豚肉の代用として好まれているという。ライアン氏は「豪州産高級牛肉の価格は
豚肉価格の5~6倍もするため、中国での消費には限りがある」とみている。
それでも豪州産牛肉の中国での売り上げは4月末までの4カ月で66%増の7万2460トンと
急増した。ブラジル産牛肉は14%増の9万5700トンだった。中国の牛肉総輸入量は09年以降、
平均で毎年90%近い増加が続いている。中産階級による需要が伸びたことに加え、昨年8月に
ASFの被害が報じられたことで需要に拍車がかかった。
中国政府当局によると、昨年の鶏肉の平均小売価格は、1キログラム当たり19.19元
(約300円)、豚肉は22.47元、羊肉は62.34元。これに対し牛肉は65.14元だった。
豪州南部サウスオーストラリア州で3050ヘクタールの牧場を営み、純血種和牛8500頭を
育てているスコット・デブルイン氏は5月、前年比で50%増の高級和牛の注文を受け付けた。
中でも中国からの注文が多いという。高級霜降り肉を注文する中国の顧客には、上海の旧市街、
浦西地区やパークハイアット北京のレストラン、ザ・ネストなどが含まれる。
筋肉内脂肪を非常に多く含むことで知られる和牛は日本の品種だが01年に狂牛病が確認されて以降、
中国は日本からの輸入を禁止している。これまで中国は豪州産牛肉でも低級部位の大量購入を行ってきた。
豪州ビクトリア州で和牛を生産し、世界の高級レストランに供給するデビット・ブラックモア氏は
「低級部位の価格を2倍にしたが、それでも需要に追いつけない。豪州の畜産供給量が直ちに
増えることはない」と話した。こうした要因で、豪州産牛肉価格の指標である東部地区若齢牛指標
(EYCI)を構成する価格は、3月につけた最低価格から20%以上、上昇した。
https://www.sankeibiz.jp/workstyle/news/190609/cpd1906090902001-n1.htm