金相場の上昇、気がかりなシグナルを発信
2019 年 6 月 21 日 09:22 JST WSJ By Lauren Silva Laughlin
――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
金相場が市場を先導している。安全資産とも言われるこの資産は、米連邦準備制度理事会(FRB)が
利下げをいとわない姿勢を示唆したことを受け、約6年ぶりの高値をつけた。金利の低下が続けば、
金相場の一段高に期待がかかる。だが今回の動きは幾つかの悪い知らせを予想させる。
金相場は、インフレと連動したり世界の金融ストレスに反応したりして上昇してきた。
しかし、最近は中央銀行が発するシグナルが材料に見える。このことは、さえないパフォーマンスが
長らく続いていた金相場がなぜ過去1カ月で約9%上昇したのかを説明するのに役立つ。
しかも、この間には株価も上昇している。
FRBが19日にハト派的なシグナルを発すると、翌日には10年物米国債の利回りがこの数年で最低の
2%未満に低下し、金相場は約3.5%上昇した。
金は、国債など安全とされる他資産のインフレ調整後リターンが低下した時に上昇する傾向がある。
ピムコは金相場と国債利回りの関係を追跡し、インフレ調整後の利回りが100ベーシスポイント(bp)
低下すると、金相場は約30%上昇するはずだと結論付けている。
それに比べ、最近の金相場上昇はかなり控えめに思える。ピムコによれば、インフレ調整後の
米10年債の利回りが10月末から約90bp低下したのに対し、金相場の上昇は13%程度にとどまっている。
ピムコは、利回りの動きを基にすれば金相場が20~30%上昇しているはずだと考えている。
もちろん、いま重要なのは利回りの先行きだ。今月、JPモルガン・チェースは年末時点の
米10年債利回りの予想を3月時点の2.9%から1.75%に下方修正した。
他の中銀も同じ方向に市場を押している。英国では、イングランド銀行(中央銀行)がさえない
景気見通しを発表した後、10年債の利回りが2016年終盤以来の水準近くに低下した。
一方、ドイツ連邦債の利回りは、欧州中央銀行(ECB)の追加緩和が近づくなかどっぷりマイナスに
浸っている。
投資家は金のポジションを増やす以外のことも検討すべきだ。利回り低下の根底にあるのは、
米中貿易摩擦を一因とした世界的な成長見通しの悪化だ。金は何らかのプロテクションを提供する
かもしれない。もっと気がかりなのは、投資家が何から自分を守ろうとしているかだ。