北朝鮮の豊渓里核施設が査察へ 専門家らが目にするものは?
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の豊渓里(プンゲリ)核実験施設をウォッチングしていた韓国の
国家情報院が、外国人査察官受け入れに向けた準備を確認した。
この情報を同国の韓国民主党のカン・ミンギ書記が明らかにした。
北朝鮮が豊渓里への外国人査察団の受け入れの構えを示したことは、ポンペオ米国務長官は10月8日、
朝鮮労働党の金正恩委員長との会談後、すぐに明らかにしていた。
外国人専門家らの豊渓里査察はおそらく成立するだろう。現在の米朝関係からは、この合意が破棄または
延期される要因は見当たらない。
2018年5月24日、豊渓里核実験場では外国人記者らが見守る中、3本の地下坑道と数軒の建物が
爆破された。この爆破の後、核の専門家ではない記者らには、実際に核施設が廃棄されたことを確認する
能力はないとする批判があげられたものの、公開された写真は坑道への入り口が実際に爆破されたことを
裏付けた。
外国人専門家らの豊渓里査察が仮に今、成立したとして、核施設が閉鎖されたことを確認するために
彼らが目にしなければならないものは何だろうか?
まず爆破された坑道を視察し、爆破によって埋もれた場所が掘り起こされた跡がないかどうかを確認する。
5月24日に撮影された写真の分析からは、爆破で破壊されたのは坑道の入り口だけではないかという
憶測もある。坑道は1.5キロから2キロと深く掘られており、極めて硬い灰色の花崗岩でできているため、
内部は無傷で残った。これを再利用するには瓦礫を除去せねばならない。だから瓦礫が崩れたままの状態で
あれば、坑道の復元作業は行われなかったことになる。
次に、実験場の周辺域を視察し、近隣で新たな坑道の掘進といった新たな準備作業が行われてないかを
確認する。実験場が使われていないことを確信するにはこの確認作業で十分だ。これはソ連の核実験の
歴史を基にはっきり断定できる。
地下核実験用の坑道というのは、実は時間も労力も多く要するかなり複雑な作業であり、これを隠蔽するのは
極めて難しいというか、ほぼ不可能な話だ。坑道の建設は機材を運び入れ、労働力を投入する広い面積を
必要とする。坑道を作るとき、そのそばには必ず大きな鉱滓(こうさい)堆積場ができる。これらすべては
人工衛星からの詳細な映像にくっきりと映し出されてしまう。こうした宇宙からの映像をもとに米国の
諜報機関は、核実験の準備ついて、実施のかなり前の段階ですでに把握してきた。
ソ連時代の1949年から1991年まで使用されたセミパラチンスク核施設の経験から、ケーブルの敷設、
制御計測器の設置は核実験の実行予定日の数日前に行われる。公表されたセミパラチンスクの実験資料からは
設備の組立作業は時に文字通り爆発の行われる1時間から1時間半前にようやく終了していたことがわかる。
使われる核爆弾も実験場にはぎりぎりの段階で運び込まれ、実験場に保管されるわけではない。このため
豊渓里の坑道の準備が整っていなければ、設備に関する作業も一切行われるはずがない。
このように査察団は施設を一通り視察しただけで、これが使用されたか、否かを見極めることができる。
視察のほかにツールを使用した調査も行われるかもしれない。例えば地中レーダー探査を使って坑道内に
続く瓦礫がどれほどの長さになっているかを調べたり、核実験が行われた坑道の北側付近で独自の
放射能測定を行うことなどが考えられるが、放射能レベルの調査は北朝鮮及び周辺諸国の住民にとっては
豊渓里の安全性を確認するために非常に重要なものだ。
ただし忘れてはならないのは、査察でわかるのは核実験場の現在の状態にすぎないということ。
米朝関係が悪化すれば、豊渓里はかなりの高スピードで実験ができる状態に戻ることが可能だ
(このためにかかる時間は数週間から数か月と見られている)。加えて、北朝鮮が地理的に適した条件の
別の場所で核実験の坑道を作ろうとしても、それを阻害するものは何もない。だからこそ、核実験が
繰り返されないという実際の保証は良好な関係と北朝鮮指導部の善意の発露にかかっている。