世界の高評価企業ランキング 今年は「信頼の危機」が各社の試練に
2018/03/20 12:30 Forbes
波乱に満ちたこの数年間、世界レベルで活躍するリーダーたちが学んだことがあったとすれば、それは「評判」というものが
いかに崩れやすいかだろう。
英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)の是非を問う国民投票や米大統領選挙をめぐる国民の分断、またフェイクニュース
や#MeToo運動の台頭といった一連の出来事は、この問題を如実に示した。そして今、大企業もまさにこの教訓を学んでいる。
「評判バブルははじけた」と語るのは、米コンサルティング会社レピュテーション・インスティテュート(RI)のスティーブン・
ハーングリフィス最高研究責任者(CRO)だ。RIは2006年以来、世界で評判の高い企業100社を集めたランキング「グローバル・
レプトラック100」を発表してきた。今年のランキングでは、100社の評判スコアの平均が前年から1.4ポイント低下。
これは、世界金融危機以後で初めての顕著な後退だ。
「信頼の危機が起きている」とハーングリフィスは言う。「ここ1年半の間で、私たちは戦略上重要な転換点に到達した。人々は今、
『本当に企業を信用していいのか』と疑問を抱いている。そして3分の2の人々にとっては、まだ結論は出ていない」
ランキングは、RIが2018年1~2月に15か国23万人以上を対象に実施した調査に基づき作成された。対象となった企業は主に、
500億ドル(約5兆円)以上の収益があり、調査対象国の人口40%以上に認知されている会社だ。
企業の評判が低下傾向にあることは懸念すべき問題だが、イメージダウンは単なる始まりにすぎない。「バブルの本当の影響は、
企業が利害関係者の信頼を得るのがかつてなく大変になることだ」とハーングリフィスは指摘する。調査では、企業が正しいことを
行っていると信じる人はたったの38.5%だった。
ただし、明るい結果もある。51%が今も企業に対しオープンな考えを持っているという結果だ。
「人々は『私を納得させてほしい』と言っている」とハーングリフィス。「世界をより良い場所にするという自社のナラティブを
うまく体現できる企業が、ランキング上位に入る企業だ
例えば、サムスン電子の順位は前年から44位上昇し、26位となった。2017年に頻発したギャラクシー・ノート7の発火事故や、
李在鎔(イ・ジェヨン)副会長の贈賄スキャンダルにより、サムスンの評判は回復不能なほどに傷ついたと思われていた。
しかし同社は、議論を避けるのではなく、真正面から危機と向き合い、公の場で繰り返し謝罪。自社のナラティブを書き換え、
今年の平昌冬季五輪では「できないことをしよう(Do What You Can’t)」というメッセージを世界に発信した。かつて苦境に
追い込まれた同社は、義足(とサムスン製「Gear VR」のちょっとした助け)で歩く練習をする女性が登場する感動的なCMで、
失った以上の信頼を勝ち取ったのだ。
「サムスンは、調査対象企業の中で最も早く順位を上げた」とハーングリフィスは言う。「サムスンがうまくやっていることを、
アップルはまるでうまくできていない」
倫理的な行動、公正さ、製品価値、透明性は、企業の評判を決定づける上で非常に重要だ。そのため、アップルが今年の
ランキングで順位を38位落とし58位となったのも当然のことだ。iPhoneのロック解除をめぐる米連邦捜査局(FBI)との対立、
租税逃れ、iPhone Xの売り上げ不調、長くうわさされていたiPhone速度低下問題が原因と言えるだろう。
アップルは、収益面では勝利を果たしたが、これにより自社の評判は回復できないだろう。「高い利益を上げていると
みなされることは、企業の社会的責任(CSR)の面で否定的に受け取られがちだ」とハーングリフィスは言う。
「アップルは世論という裁きの場で重い罰を受けている」
アップルのような企業が挑戦しなければならないのは、目的意識の高い企業だと世界にアピールすることだ。
サムスンは、自社製品と人間的な体験をつなげることで、このハードルをクリアした。
しかし、方法はそれだけではない。上層部の信念が、会社の評判を大きく向上させることもある。
その良い例が、マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)だ。移民問題などの社会問題に対するナデラの確固たる
姿勢は、マイクロソフトがランキング10位に入った理由の一つだ。
インド生まれのナデラは、子供の頃に不法入国した移民(通称「ドリーマー」)の強制送還を猶予する制度(DACA)の
支持者であり、トランプ政権が同制度の撤廃方針を表明した後には、リンクトインへの投稿で次のように綴った。
「私はCEOとして、世界中から集まった才能ある社員が私たちの会社、顧客、そしてより広い経済にもたらしてくれる直接的な
貢献を日々目の当たりにしている。私たちはマイクロソフトで働くドリーマーたちを深く気にかけ、完全に支援する」
今年のランキングの1位は、3年連続となるロレックスだった。ハーングリフィスは、人気テニス選手のロジャー・フェデラーを
起用したキャンペーンを挙げ、「勝利を再定義することにあらゆる努力を費やしてきた企業だ」と同社を評価している。
それでもなお、ロレックスのスコアは前年から低下して79.3ポイントとなり、RIが優秀企業の基準とする80ポイントにかろうじて
届かなかった。このスコアは時代の変化を示すものだ。
確かに、評判バブルは既にはじけてしまった。しかしハーングリフィスは、このバブル崩壊は実は、これまでCSRの面であまり
知られてこなかった金融サービスや運輸などの分野の企業にとってチャンスになると強調する。「この競争に勝ち、適切な評判を
賢明に裏付けし、リスクを効果的に管理できる企業は、迫りくる荒波を上手く乗り越えていけるだろう。
評判ゲームは終わったわけではない。これは始まりにすぎない」
以下は、RIが発表した今年の世界企業評価ランキングのトップ10。
1位 ロレックス
2位 レゴ
3位 グーグル
4位 キヤノン
5位 ウォルト・ディズニー
6位 ソニー
7位 アディダス
8位 ボッシュ
9位 BMW
10位 マイクロソフト
https://www.reputationinstitute.com/resources/pdf/2018-global-reptrak
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