米議会で証言した劉暁波支援団体から衝撃の事実と悲痛な訴え
米議会公聴会で証言したワシントンの人権団体が、劉暁波氏の葬儀と海葬に関する当局の恐るべき虚偽報道をメールで知らせてき
た。また劉氏の妻、劉霞さん等の救出を呼び掛けてきたので、その一部をご紹介する。
葬儀に列席した劉暁波氏の「友人」は「私服警官」
15日、ノーベル平和賞受賞者の劉暁波氏が入院していた遼寧省瀋陽市が、記者会見を行い、その日の早朝に近親者や友人が参列
する中、葬儀が行われたと発表した。しかし、劉暁波の友人で、劉暁波にノーベル平和賞を授与すべく運動したワシントンにいる人権
派弁護士などの支援団体は、当局が「友人」と称する者の中に、友人は一人もいないと知らせてきた。
事実、別の「本当の友人」をフランスのRFI (Radio France Internationale)が取材したが、「当局が示した葬儀に列席した友人の
中には、ただの一人も顔見知りの人がいない」と言っている。
メールでは、ここにいるのは「友人」ではなく、友人を装った「私服警官」で、家族が何を話すかを監視するためにいたにすぎないと、激
しい憤りを訴えてきた。
また「本当の友人」は、列席を強く希望したが、すべて当局に拒絶されたとのこと。
劉暁波氏は、筆者と同郷で、吉林省長春市生まれだが、長春にいる親戚も大連にいる友人も、誰一人、劉暁波の死去さえ知らされて
おらず、葬儀が終わった後に知らされたという。
劉霞さんは海葬を望んでいなかった
劉霞さんらの家族は、遺骨を置いた「劉暁波記念館」の建立を望んでおり、一時期は遺体の永久保存さえ希望していたという。
まして海に遺灰をばらまくということには強く反対したが、当局は「劉暁波のいかなる痕跡も残させない」という手段を取った。
そのために、あらゆる偽装工作を行なって遺族らに偽証を行なわせた。
西側からの非難を避けるために、劉暁波さんの兄の劉暁光氏に記者会見で当局への謝意を表明させたが、その席に妻の劉霞さんが
いなかったのは体調不良のためと言わせている。もちろん劉霞さんは倒れる寸前だが、記者会見に出席しなかったのは当局への謝辞
という偽証を行なわなければならないことが耐えられなかったからだという。
劉暁光氏は、「劉暁波は世界にも稀に見る(中国の)ハイレベルの治療を受け、社会主義国家の優越性と、党と政府の温かな思いやり
に感謝し、後事もすべて家族の望みどおりに当局が完璧なまでに処置をしてくれた」と中国の「党と政府」に対する感謝の意を述べさせ
られている。
米議会公聴会――沈黙は共謀だ
このことからも分かるように、劉霞さんたちがこのまま中国に居続ければ、どれだけの厳しい監視下で人権を蹂躙され続けるかは言を
俟(ま)たない。
米議会下院外交委員会の小委員会は7月14日、劉暁波氏に関する公聴会を開催し、劉暁波氏のために奔走してきたワシントンの人
権団体「公民力量」の創始者である楊建利氏に証言を求めた。
彼は証言の中で、次のように言っている。
――中国共産党指導下の政府が、劉暁波氏の死に対して全面的な責任を負わなければならないのは疑う余地がない。しかし西側諸
国が中国の人権問題に対して沈黙を保つのは劉暁波を緩慢に忙殺した中国当局の共犯者だということになる。もし西側諸国が中国の
自国の人民に対する人権侵犯に対して沈黙するならば、中国政府の人権迫害は強化されるばかりで、劉暁波の悲劇は繰り返されるだ
ろう。
つまり彼は「どうか、声を上げてほしい」と訴えているのである。
そのために米議会は公聴会まで開き、中国の人権問題を重視していることを世界にアピールした。
しかし「中国の顔色ばかり見ている国」もある。
このまま中国の顔色を窺うことばかりしていたら、中国は経済的にさらに繁栄して、さらなる独裁的な権力を強めていくだけだろう。中国
がどのような国であるか、今回の一連の出来事を通して、世界は十分に分かったはずだ。劉暁波はその死を通してまで、中国の実態
を世界に発信し続けている。それを見てみぬふりをすることはできない。
安否が懸念される妻。劉暁波の妻と弟の救出を!
劉暁波の妻、劉霞さんは、長年の軟禁と監視生活により厳しい抑うつ状態にあり、体力も限界にきて、命が危ない。その弟の劉暉氏
も、たび重なる投獄や迫害により治療を拒まれ命の危機が迫っている。
特に今は劉霞さんと連絡が取れない状態になり、安否が懸念されている。
この二人の国外脱出のために協力してほしいとワシントンからのメールは訴えている。
私たちに何ができるのか、日本政府が何か意思表示をしてくれるのか――。
筆者にできるのは、せめて、こういう形で発信することくらいである。
劉暁波氏の遺骨、海に 妻も参列・・・散骨は遺族の意向に沿ったもの。
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2017年07月17日 BBC
13日に肝臓がんのため死去したノーベル平和賞受賞者で中国の著名な人権活動家、劉暁波氏の告別式が15日、遼寧省瀋陽市の葬
祭場で行われ、遺骨は海に散骨された。記者会見した劉氏の兄が、遺族の意向に沿ったものだと説明した。劉氏は、国家政権転覆扇
動罪で懲役 11年の判決を受けて服役していた。国外での治療を認めなかった中国に対し、国際社会の批判が高まっている。
2010年以来、自宅軟禁状態に置かれている妻の劉霞氏も、葬儀と散骨に参列した。
瀋陽市新聞弁公室は15日の記者会見で、遺骨の散骨は「地元のならわしと遺族の希望に沿ったもの」だと説明した。葬儀では、モー
ツァルトの「レクイエム」が流れたと係官は話した。記者会見に同席した劉氏の兄の劉暁光氏は、散骨は家族で決めたと述べた。
当局が発表した写真では、白い菊に囲まれた劉氏の棺の横で、遺族たちが並んでいる様子が見える。
当局はさらに、船からの散骨の動画も公開。映像には、遺族が劉氏の骨壺を海に下し、劉霞氏たちが花を投げる様子が映っている。
劉氏の支持者たちは、遺骨を海に散骨したのは、墓所を作ればそこが追悼と民主化運動のシンボルになると当局が恐れたからだと指
摘する。
中国の著名活動家の胡佳氏は、香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストに対して、「中国政府が大急ぎで葬儀を手配したの
は、意図的なことだ。誰も遺体を前に追悼できないようにした。それこそ何より、色々な思い出が湧き上がってくるのに」と述べ、「ノーベ
ル賞受賞者に対して屈辱的な扱いだ」と批判した。
会見で、散骨は家族の意向だと述べた兄の劉暁光氏について、劉氏の友人たちは、暁光氏は弟の考えに以前から異を唱えていたと
話す。
市当局は記者会見で、劉霞氏は釈放されたはずだと述べたが、劉氏の弁護士ジャレッド・ゲンサー氏はこれに反論。夫の死去以来、
劉霞氏とは連絡がとれていないと明らかにした。
ゲンサー弁護士は声明で、「世界が動いて彼女を救出しなくてはならない。しかもただちに」と呼びかけた。劉氏の死去を受けて、ノル
ウェー・ノーベル委員会や複数の欧米政府は、中国に劉霞氏の解放を呼びかけている。
香港では数千人が劉氏の追悼集会を開き、「人民の英雄」と称賛。亡くなった劉氏の「真の自由」を要求した。
劉氏は中国の民主主義体制移行を訴えたことを理由に、2009年に国家政権転覆扇動罪で懲役 11年の判決を受けた。服役中の
2010年には、中国の人権尊重と民主化を求める非暴力運動を理由にノーベル平和賞を受賞したが、本人も家族も授賞式に出席でき
なかった。
(英語記事 Liu Xiaobo: Chinese dissident's ashes scattered at sea)