牛乳価格を押し上げる中国、数年ぶり高値
消費者の乳製品需要が増加、輸入への依存高まる
2019 年 11 月 6 日 14:10 JST WSJ By Lucy Craymer and Julie Wernau
世界中で牛乳の価格が上昇し、脱脂粉乳が数年ぶりの高値を付けている。中国の需要が予想外に
伸びていることが一因だ。経済成長は鈍化している同国だが、乳製品の消費は増えている。
中国の食習慣では乳製品は大きな割合を占めてこなかった。だが今の中国人は以前より牛乳を飲み、
クリームを使ったデザートを食べ、春巻きやもち米のおにぎりといった普段の食べ物にもチーズを
入れることが増えた。牛乳を使った焼き菓子のほか、クリームやチーズがトッピングされた紅茶などの
飲料も好まれている。
米国、欧州、オセアニアの脱脂粉乳の卸売価格はここ1年間で、それぞれ31%、39%、49%
上昇した。米国乳製品輸出協会によると、これら3地域における11月の平均価格は1トン=2683ドル
となり、2014年10月以来の高値となった。一方、全脂粉乳の卸売価格は前年同月比で14%上昇した。
脱脂粉乳はアイスクリームやチョコレート、ケーキ、パンの原料として使われている。
脱脂粉乳と全脂粉乳の価格が上昇したのは、天然の脂肪が多く使われた食品の需要が全世界で
高まっているためだ。両方とも大量に消費されている。全乳の脂肪組成に似せるため脱脂粉乳と食用油を
混ぜる食品メーカーもある。
乳製品の価格上昇は世界中の酪農家にとって朗報だ。これまで何年にもわたり利益の低迷に
苦しんできた。米国では2016年、価格下落を受け大量の余剰牛乳が廃棄された。
中国は国内需要の増加分のほとんどを輸入で賄っている。国内製の牛乳が汚染されていた事件を受け、
乳児用粉ミルクなどでは既に輸入大国となっている。中国税関当局のデータによると、1-8月の
輸入量は脱脂粉乳とクリームが前年同期比で30%超増加し、全脂粉乳が23%増加した。今年上半期の
国内生産量はおおむね横ばいだった。
一部アナリストは、こうした輸入の急増は予想外だと指摘する。以前は米中貿易摩擦や中国経済の
減速で乳製品の需要が減少すると予想していたためだ。
米国から中国への粉ミルクの輸出量は多くはない。それでも米国の酪農家は中国や他のアジア地域での
需要増加、および別の主要輸出地域での卸売価格上昇の恩恵を受けている。シカゴに拠点を置く商社で
コンサルティング業務も行うハイグラウンドデアリーのグローバル事業ディレクター、アリッサ・
バジャー氏によると、欧州の酪農家が来年生産する脱脂粉乳は減少する見込みで、米国の酪農家には
好機になるかもしれない。
今年はオーストラリアや北欧で雨量が少ないことが世界の牛乳生産に重荷になっている。飼料価格の
上昇も生産減につながっている。
世界最大の乳製品輸出企業であるニュージーランドの乳業大手 フォンテラ は、主要輸出先の中国に
よる輸入拡大で特に大きな恩恵を受けている。同社は10月下旬、欧米の同業他社よりも高い価格で
脱脂粉乳を販売していると明らかにし、全脂粉乳の販売量も増加するとの見通しを示した。