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EU離脱派勝利が示す国民投票の怖さとキャメロンの罪

2016-06-26 01:20:15 | ヨーロッパ・EU諸国

EU離脱派勝利が示す国民投票の怖さとキャメロンの罪

2016/6/24 Newsweek

欧州連合(EU)残留・離脱を問う英国の国民投票は衝撃的な「離脱」を選択した。離脱派の英国独立党(UKIP)のナイジェル・ファラー

ジ党首はいったん敗北を認めたが、6月24日未明、「夜が明けたら英国はEUから独立する」と宣言した。

 しかし離脱派のギゼラ・スチュアート労働党下院議員は驚きを隠せなかった。離脱派にとってもこれほどまでに完璧な勝利は予想して

いなかった。

離脱1741万742票(51.9%)、残留1614万1241票(48.1%)。126万9501票の大差がついた。


 移民の増加、規制だらけのEUに強い不満を抱きながら、英国は最後の最後に現実的な判断を下すと筆者は信じて疑わなかった。

政治家も、世論調査会社とブックメーカー(賭け屋)のアナリストも、市場も、最後は「残留」と読んでいたはずだ。

 しかし、英国民は経済的な打撃を覚悟の上で、EUを離脱して無制限に増える移民を規制する道を選んだ。

 清教徒革命でオリバー・クロムウェルの議会派が国王派を打ち破り、1649年に国王チャールズ1世を処刑。

しかし11年後、チャールズ2世が即位し、英 国は共和制から王政に戻った(王政復古)。

英国の政治をかじった人なら、口をそろえて「Revolution(革命)」ではなく「Evolution(進 化)」こそ英国の遺伝子(DNA)と解説する

だろう。

 それが、国民投票が実施されるまでの英国のかたちだった。

 1千年にわたって他国の侵略を許していない英国の強みは、国王の権力を制限する形で発達してきた議会政治による「政治の安定」

だった。

成熟した間接民主制と二大政党制が英国に秩序と安定をもたらしてきた。

 キャメロン辞任は当然

 がしかし、保守党内の不満をガス抜きしたいキャメロン首相のご都合主義で何一つ法的な裏付けのないまま直接民主制の国民投票

が行われた。

そして、まさかの坂を転げ落ちるようにEUからの離脱を選ぶとは...。まだ、悪夢を見ているようだ。

 不確実性の広がりとともに下落していた英通貨ポンドは24日、さらに急落した。

保守党が予想外の単独政権を樹立した直後の昨年6月には1ポンド=195 円を超えていたのに、投票日の154円から135円まで暴

落した。

まさに「暗黒の金曜日」である。余波で日経平均株価も1万5千円を割った。

  単一市場加入と欧州経済共同体(EEC)加盟の是非を問うた1975年の国民投票で欧州統合の道を選んだ41年後、英国は欧州と

の決別を決断し た。

これが英国の民意とは言え、馬鹿げていると言う他ない。

先の大戦の過ちを繰り返さないよう欧州の団結をいち早く唱えたのは英国のチャーチル首相(当 時)である。

「欧州という家族を再構築する第一歩は、フランスとドイツの友好でなければならない。名前が何であれ、欧州合衆国をつくるのなら今、

取り組まなくてはならない」(1946年)

 欧州の平和と繁栄に英国は欠かせない存在である。しかし英国の民意は欧州と袂を分かつ歴史的な選択を行ったのだ。

欧州統合のような複雑な問題を残留・離脱の二者択一で国民に選ばせたキャメロン首相の辞任は避けられないものだった。

 EUの機能は単一市場だけではない。

労働者の自由移動(移民)問題だけでなく、外交、安全保障、テロ対策、警察・司法協力と無数のプラグが複雑に絡み合っている。

歴史を積み重ねてきた英国とEUの間のプラグを一斉に抜くことになったら双方が混乱の淵に落ちていくだろう。

 EUへの輸出は全体の60%(2000年)から昨年47%まで減ったものの、輸入は依然として全体の54%。輸出にEUの対外関税がか

かると相当 大きな影響が出る。EUは改革しなければならない数多くの問題を抱えているが、離脱するより残留して中から改革するの

が賢明な選択肢だった。

国民投票は理性より感情で動く

 日本でも参院選で憲法改正派が非改選議席を含め3分の2以上の議席を占めれば、憲法改正のための国民投票が一気に現実味

を増す。

産経新聞の政治部 時代、憲法問題を担当した。当時、衆院憲法調査会長だった中山太郎氏が「憲法改正の国民投票で日本国民は

国民主権を自覚する。しかし国民投票とは怖いもの だ」と話していたのを思い出す。

 05年、フランスとオランダの国民投票で欧州憲法条約(その後リスボン条約として施行)の批准が否決された。

現地を調査した中山氏は、理性より感情に左右される国民投票の怖さに加え、改正の持つ意味を国民に浸透させる難しさを痛感した

という。

 筆者もこれまでにアイルランドのリスボン条約批准をめぐる国民投票やギリシャの支援策をめぐる国民投票などを取材した。

14年9月のスコットランド独立住民投票をめぐっては独立、残留をめぐる住民の亀裂は今も生々しく残る。

 二者択一の直接民主制は憎悪を伴う対立を引き起こし、今回のEU国民投票では、残留を呼びかけていた労働党女性下院議員

ジョー・コックスさん(41)が 極右思想を持つ男に殺害される悲劇が起きた。夫ブレンダンさんの「天国のジョーは楽観的でいることだろ

う」とツイートした。

 スコットランドの地元紙スコッツマンの元編集長イアン・マーティン氏は筆者に「スコットランド独立の是非を問う住民投票は毒に満ちた

ものだった。家族や住民を分断し、その毒は今も残っている」と語る。

 英国の民意は二分されたままだ。決して和解することはない。

英国のEU離脱は欧州だけでなく、国際社会に混乱をもたらすのは必至だ。

EUもイギリスが離脱すると打撃は大きい


日本でも昨年「大阪市特別区設置住民投票」で橋下氏が首をかけて実施されたが予想していた結果はでなかった。

 賛成      694,844              49.62%

 反対     705,585              50.38%

いずれ私たちも憲法改正の国民投票に直面するでしょう。

日本の安全保障に関わる問題に感情で動かぬように、日本国を守る方法を冷静に考えることを望みたい。

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