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中国、人民元SDR採用でも過大な期待は禁物

2016-10-01 13:25:55 | 中国・中国共産党・経済・民度・香港

中国、人民元SDR採用でも過大な期待は禁物

2016 年 9 月 30 日 16:53 JST THE WALL STREET JOURNAL

 中国人民元は10月1日、国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)構成通貨に正式に加わる。各紙の金融面は今後その興奮

に包まれるだろう。ドルを基軸通貨の座から引きずり下ろすという中国政府の野望は実現に向けて大きな弾みが付く。


 だがそうした中、この画期的な出来事の「立役者」が事実上、表舞台に姿を見せなくなっているのは気がかりだ。在任期間が14年近

くに及ぶ中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は職を追われてはいない。習近平国家主席が周総裁の移動や発言機会を制限して

いるというわけでもない。ただ、人民元の国際化によって生じるはずだった「改革ドミノ効果」の議論が消えてしまった。


 周総裁は人民元の国際化を通じて改革がドミノ倒しのように実現していく壮大な構想を当初から描いていた。周総裁は、トウ小平が

改革開放政策を推進した1970年代後半以降に改革派の最重要人物となった朱鎔基元首相に師事した。朱鎔基氏は首相を務めてい

た1998年〜2003年に、透明性や説明責任の向上に取り組んだほか、大規模な国有企業改革の一環で4000万人の労働者を解雇

した。朱鎔基氏は中国の世界貿易機関(WTO)加盟に尽力した。中国の対外開放を確実にするための「トロイの木馬」としてWTOを利

用したのだ。


 人民元をSDR構成通貨に採用させる取り組みは、この戦略に似ていた。SDRの枠組みに入れば、中国は金融システムの強化、過

剰な与信や債務への対処、透明性の向上、資本勘定の自由化に取り組まざるを得なくなる。IMFのラガルド専務理事が1月に述べた

ように、人民元のSDR採用は「これまでも、そしてこれからも改革が続くことをはっきり示している」。


 だが、IMFが最近、中国の債務水準について「直ちに対処する必要がある」と警告を発したことには、首をかしげずにはいられない。

国際決済銀行(BIS)も、中国の国内総生産(GDP)に対する総与信ギャップ(与信伸び率と長期トレンドとのかい離を示す指標)が、米

国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け融資)危機前やアジア通貨危機前の水準よりも悪いと警戒している。中国は「ミンス

キーの瞬間(投機的債務が蓄積し暴落相場を招く瞬間)」に差し掛かっていると民間エコノミストが懸念していることも不安材料だ。習主

席は「市場原理」の役割を高めると調子のいいことを言っているし、李克強首相は成長エンジンを投資からサービスに移行させると約

束しているが、いずれもその証拠は不明だ。これら全てを考え合わせると、人民元はまだ絶頂期を迎える備えができていないということ

になる。

 

 IMFが人民元をSDRに加えたことは間違いではなかったものの、視野を広く保つことが重要だ。中国の貿易規模は世界最大だが、

元建てでの取引はごくわずかでしかない。例えば、米中貿易のうち人民元で決済されている割合はわずか2.4%にとどまる。今後そう

した状況はいくらか変わるだろうが、中国政府は周総裁版の「トロイの木馬」を用意しつつある。


 重要なのは動機だ。人民元の国際化に中国政府を駆り立てた動機が何かについては議論の余地がある。人民元の国際化は、周総

裁にとっては中国を外部要因にさらし、習指導部に中国経済の基盤強化を促すことを意味する。習指導部にとっては、戦略地政学上

の影響力を指す。ジンバブエのムガベ大統領は昨年12月、習主席が同国を訪れた直後に人民元を法定通貨とした。「人民元外交」は

もう始まっている。

 

 とはいえ、こうした取り組みによって、中国共産党が経済改革を一段と迅速化したということはない。共産党機関の透明性が高まった

わけでも、国有企業が支配していた部門の民営化が進んだわけでも、中国本土の企業経営者が株主をより重視するようになったわけ

でもない。報道の自由化やインターネットの制限緩和、持続不可能な債務・与信の伸び抑制などが実現したという事実もない。中国が

6.5%という成長目標から距離を置き始めたということもない。それどころか、中国が資本勘定の自由化を進めても結果は裏目に出

て、習主席が「市場原理」にますます懐疑的になる恐れもある。


 2015年の株式相場急落は中国政府のトラウマになっている。トウ小平以来の最強の指導者として自らを位置づける習主席にとって

最も避けたいのは、中国が次の「リーマンショック」の震源になったと批判されることだ。習主席は「大胆な改革」や「より革新的な新しい

中国」といったリップサービスを続けているものの、中国政府は安定性や継続性というイメージを守るため、国有企業を合併させるなど

総じて守りを固めている。つまり、リスク回避的な中国政府が債務拡大を通じて成長を後押しするという大きな賭けに出る中、改革の実

現を目指した周総裁の夢は挫折した、ということでしかない。

 

 中国の脆弱(ぜいじゃく)性に伴うもう一つの問題は、中国の実態をどこまで把握できているかが分からない点にある。格付け会社

フィッチ・レーティングスは、中国本土の銀行が直面している不良債権問題の規模は、政府が認めている水準の10倍に達すると警告し

ている。これに関する救済費用として2兆ドル強が必要になると想定されるというが、それでもかなり控え目な数字に思える。最大のリ

スク要因は地方政府債務だ。足元の規模はドイツの年間GDPを軽くしのぐ。こうした状況を踏まえれば、中国政府がいかに改革よりも

成長を優先しているかが分かるというものだ。

 人民元の「覇権」があれこれ誇張される中で、本当につらい仕事はまだ始まったばかりだということを肝に銘じておくべきだし、本当に

それが始まっていると願うばかりだ。

「不透明な国家の通貨がSDRに加わったっていいのでしょうか」と思いますが、本日10月1日から人民元は基軸通貨として動きだします。

アジアの貿易で円はドルに押されぎみです。そこに元が絡んできますので、円は増々厳しくなります。

中国はまず、アジアでの貿易を元建決済で征服しようとしていますので、円は存在感がなくならないように頑張らなくてはなりません。

中国ですからね。どんなあくどい手を使うかわかりません。

日銀は決済システム「新日銀ネット」を全面稼働させました。稼働時間が午前8時半~午後9時に延長され、アジア全域と日本の間で

円建て資金の即日送金が可能になりました。これにより、資金や国債の国境をまたいだ迅速な決済が行われやすくなると考えられま

す。アジアの通貨戦争、今後注意深く見て必要があります。

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