ミサイル防衛強化「陸上型イージス」導入の方向
自民党の検討チームが3月に弾道ミサイル防衛強化を求める提言をまとめたことを受け、防衛省は若宮健嗣副大臣
をトップとする検討委員会で新装備導入に向けた議論を加速させており、夏までに結論を出す方針だ。実際の導入は数
年後とみられる。
現在のミサイル防衛態勢は、イージス艦に搭載された迎撃ミサイル「SM3」が最高高度約500キロの大気圏外で迎
撃し、撃ち漏らした場合は地対空誘導弾「PAC3」が地上十数キロで撃ち落とす二段構えだ。
イージスアショアは、イージス艦に備えられた、ミサイル防衛機能と戦闘機や巡航ミサイル攻撃にも対応可能な防空機
能に関する装備を、陸上に固定して設置するものだ。レーダーや迎撃ミサイルなどで構成する。イージス艦には
200~300人の乗員が必要とされるが、イージスアショアはその10分の1程度で運用できることもあり、24時間態勢で
の警戒が容易になる。
導入後には、海上のイージス艦と陸上のイージスアショア、PAC3が3段階で迎撃態勢を敷くことになり、迎撃の可能
性が高まる。
イージスアショアは1基あたり800億円。現在のSM3は射程が100キロ程度で防護範囲は狭いが、イージスアショア
で使用を予定している日米が共同開発中の「SM3ブロック2A」だと射程が1000キロ以上と飛躍的に伸びる。2017年
度中には開発が完了する予定で、SM3ブロック2Aならば2基で日本全土を防護できる。配備場所についても、すでに
複数の日本海側の自治体が興味を示しているという。
THAADは大気圏外や大気圏突入直後の上層部で迎撃し、SM3とPAC3の隙間をカバーする。1基あたり1250億
円と試算され、日本全土のカバーには6基必要なため、イージスアショアと比べると費用対効果で劣る。
また、THAADは強い電磁波を発するレーダーを首都圏に設置する必要があり、配備場所の選定が難しい。中国やロ
シアはTHAADのレーダーだと自国の軍事活動が監視されるとして、在韓米軍への配備に強く反対しており、日本が導
入すれば同様の反発は避けられない。防衛省内でイージスアショアが有力となったのは、こうした事情も考慮したとみら
れる。