気の向くままに junne

不本意な時代の流れに迎合せず、
都合に合わせて阿らない生き方を善しとし
その様な人生を追及しています

(‘75) 7月27日 平野 (石垣島北端) へ行く

2022年07月27日 | 日記・エッセイ・コラム
地図が招いた北端・平野
地図を見ていたら最北端の平久保灯台という地に目が止まっていた。
「何も無い所よ」
とは言われても、何故か気にかかる。最北端とはいえ、バスという交通機関は有る。民宿も在る様だ。「最北」という言葉も後押しした。ならば…という事で、今日の休みはここに決めた。

10:10~11:30
ターミナルから東周りのバスで1時間20分、やはり遠さを感じる。1時間を過ぎる頃、外窓には町から村へと移り変わった様子がはっきりと窺える。何処の村だったか道に面した郵便局の辺りで島の人が二人程降りた後は、私だけが乗っていた。
バスが止まった。フロントガラスの前の方に見えたのは、(恐らく30mぐらい先)行き止まりの光景。そしてバスが止まったのは目的地である民宿・平野荘の前。私が降りるとバスは少し進みバックしながら後部を左へ、そして右折前進で戻って来た。平野荘の少し前で暫く止まっていたけれど、やがてターミナルのある美崎町へと戻って行った。私はというと煙草を吸いながらその様子をみていた。そして平野荘に入った。
「こんにちは〜」
と二度3度声をかけたけれど誰も居ない様な気配。『どうしようかな…』と考えていると、ようやくおばちゃんが出て来た。部屋へ通され一服した後、周囲の散策に出掛けた。
道路を挟んだ反対側は緑の草原(理科…とりわけ植物に疎い私には雑草に見える)が広がっている。道沿いに柵が続いている。まるで西部劇映画でよく見る牧場の様に。少し奥からは登り坂になっていて、小高い山が道路に沿っている様に見える。反対側(民宿の裏側)には海があるので、ここの道路は小高い山の中腹を切り開いて作られたという事になる。
気が付くと牛が一頭私には近づいて来た。やはりここは牧場だったのか?!   やけに馴れ馴れしいので足元の草を引き抜き顔に近づけると、ためらいも無くその草を食べた。頭を撫でても怒ったり嫌がったりはしなかった。牛との触れ合いなんて初めての事なのでとても嬉しかった。暫くそんな事をしていると、もう一頭やって来て初めの牛を追い出す様に割り込んできた。兄貴分なのか群れの主なのか、上下関係を知らしめている様子。そしてまた二頭がやって来た。この子達(牛たち)は私をどの様に見ているのだろうか?   まさかここに来て牛たちに擦り寄られるとは、思いもしない出来事だ。こんな事が先行き何かの役に立つのかな?!

暫く牛たちと触れ合った後、気になっていた海へ行く事にした。その道はバスがUターンをした辺り、その先に左へ曲がる細い道を進む下り坂で、歩き難い道を行くと海が見え始めてくる。途中背の高い草で海は隠れたりするけれど、なんとか渚に辿り着くと、道の悪さなんか何とも思わなくなっていた。だって目の前には海が広がり渚は左の方へずっと続いて、しかも誰もいない。まるでプライベート・ビーチの様。
先ずは腰を下ろす場所を決め、一服しながら降り注ぐ陽光を楽しんだ。そしていざ平野の海へ。ここは竹富の様に珊瑚を楽しむ海とは言えない。疎らに点在する珊瑚には殆ど魚は見られない。透明度はまあまあといったところ。しかし南の海を十分に味わえる。
渚で横たわっていると、ふと完全に『無』になっている自分に気が付いた。
「アレ、この感覚って、初めから求めていたもの?それとも横道に逸れたの?でなければオマケみたいなもの?」
答えを出すのは宿題として、私は民宿に戻る事にした。鳥の鳴き声を聞いた。見上げるとカラスぐらいの大きさの鳥が飛んでいた。でもカラスじゃない。トピだろう、勝手にそう思った。

民宿に戻り部屋の中。暫くのほほんとしていたら、おばちゃんが食事だと言いにきた。後について行くと、そこは四畳半ぐらいの(いや、六畳か)小さな部屋でテーブルに食事が並んでいた。私の席の前にはオジサンがいて、既にお酒(泡盛)を飲み始めていた。挨拶を交わし薦められるままに私も飲み始めた。おかずをお酒の肴にする。話しの合間に気が付いた。泡盛はある。おかずはある。でも、ご飯が無い。つまりは泡盛の後にご飯が出てくるのか。困る、非常に困る。島の人相手に付き合える程飲めるわけもなし。だいたいその間におかずが減っていく。なんなんだ、このオジサンは〜     …という思いでおばちゃんに、
「あの〜、ご飯を…」
と、なんとも頼りなげな声で言った。そしてやっとご飯にありつける…と安堵感。が、しかし、確かにお茶碗!にご飯はある、けれど、それは見た事がないお米で、長細くやや臭いのするお米だった。『日本のお米かなぁ』などど考えながら食べた。やけに水気の無い米で、食べる程に喉が乾いていく様に思えた。同じ石垣島でも美崎町辺りとは全然異うのはなんでだろう?米の品種が異うのか。
『その地に染まる』というのが私の旅の在り方なので、これも旅の道、そういうものだ…という事で納
得した、いや、させた。
泊まり客は私一人。窓を開けると部屋の中には心地良い風が入って来る。昼間浴びた太陽の火照りを優しく冷ましてくれるかの様に。
ここは平野。石垣島の最北端。

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